見出し画像

ゾン内の掟~パロツェチュその2~

前回までのブータン旅行記はこちら

朝5時半出発、だから早めに寝よう!と思っても、楽しみにすれば楽しみにするほど興奮してきて眠れないのが人間というもの。早く起きなければいけないプレッシャーもあって、なかなか寝付けず、1時間おきくらいに起きて、スマホの時計をチェックする。

やっとうとうとしかけた4時半、セットしたアラームがブーブーと鳴った。デチェンがいる2階に目を向けると、まだ灯りはついていない。とはいえ、これ以上寝ても仕方ないと顔を洗い、日焼け止めを塗り、ものの5分で準備完了。今時の旅人であれば、ロングワンピースをひらひらさせながら、つばが大きい麦わら帽子を風で飛ばないように片手でおさえる後ろ姿写真を撮るために、毎日お召し替えをしなければいけないだろうが、
「荷物それだけ?」
が誉め言葉の生粋のバックパッカー。着るモノは毎日一緒なので、服を選ぶこともなければ、化粧もほぼしない。これに慣れると、日本での日常ルーティンに戻るのが大変になる。

準備万端だが、ドライバー(デチェン)がまだ起きてこない。おいおい、お寝坊か?と心配しつつ、2階にいくとデチェン母が起きてきた。

「あら、早いわね。お茶飲む?」

ちなみに、お茶とは砂糖たっぷりあまったるいミルクティーのことで、当初は知らずに、甘々を飲んでいたのだが、ノーシュガーと何回か言ってやっと甘くないミルクティーが出るようになった。バター茶は一生ノーサンキュー。理由はこちらにて。

暖炉のそばでミルクティーをすすっているとデチェンが部屋から出てきた。しかも、いつになく豪華絢爛のキラ(民族衣装)に、じゃらじゃらキラキラの装飾品。

「なんか今日はいつもより気合入ってるね!」

キラといっても仕事にいくとき、ゾンやラカン(寺)に入るときは、キラ(正装)を着るのが決まりだから、なんだかんだとかなりのお衣装もちのブータン人。しかし、今日は一段と輝きまくっている。

ゾンとは寺院と地方行政の中核としての機能をもつ建物で、尾根や小高い丘など見晴らしのよい場所にたつ。ツェチェが行われる広場があるのも特徴のひとつ。複合施設のようになったのは、もとはといえば、ブータン建国の父のシャプドゥンがドゥク派の布教の拠点とするために巨大な建造物にしたため、こういった行政機関も入ったのではなかろうかと思う。と誰かがいっていた。

「ツェチェのときはめいっぱいおしゃれをするのがブータン流なのよ」

とデチェン母が教えてくれた。ブータン最大のお祭りだもんね。わかる気がする。日本人もお祭りといえば、浴衣をきて美容院にいって、おしゃれするもんね。するとデチェンがいいこと思いついた!とばかりに部屋にいく。そキラを手に戻ってきた。

「これ、昔やせてた時に着てたキラなんだけど、もうお腹周りとか入らないし、古いからゆきんこにあげる。だからこれ着ていきなよ」

なんと!ブータン人さながらのキラをきて祭りに参加できるとはなんともうれしい提案。いただいたキラは本物の一枚ものではなく、上下わかれている簡易キラ。上着は羽織ってボタンで前を留めるだけ、下はロングの巻きスカートの端をホックにインするだけで、あっという間に正装完了。

今回はお祭りということで、スペシャルバージョンとして、肩にラチュという帯状の布を掛けるのだそうだ。

ラチュはあげられるものがないから、貸してあげる。ここから選んで!ということで、デチェンの衣裳部屋であれでもない、これでもないと選んでいるうちに、ものすごく楽しくなってきた。

いや、まて、こんなところで時間を食ってる場合ではない!時計を見ると、すでに5時40分!出遅れた!早く行こう!と、デチェンを車に引っ張っていった。

「これ、温かいお茶とお菓子。楽しんできてね」

とデチェン母が保温効果抜群のTIGERのポットが入ったカバンを手渡してくれた。母というものは万国共通の温かさがある。ありがたや、ありがたや。

果たして間に合うか?(←昨日と同じ〆になったことに気づく)

↓明らかに高価なお衣装のデチェンと首元が寂しく、色も地味な私。ツェチュにきている誰よりも地味だったのに、リュックが派手だったせいでめだっていたらしい。(←デチェン談)


いいなと思ったら応援しよう!

ゆきんこ
応援ありがとうございます!いただいたサポートは次回のブータン旅行時、キッズ僧侶たちへ日本のあめちゃんを大量に購入する費用にいたします。

この記事が参加している募集