そこそこの容姿で得したこと損したこと
これぞ人生最大の成功!最大の失敗!
なんていう大それたものを経験せず、そこそこ努力してそこそこ成功したり
なんとなくやってしまって、なんとなく失敗してしまったなんて軽微なものはまあ生きていればそんなもんはあるだろう。
それもこれも、そこそこの容姿だから神様もそこそこの成功や失敗を与えているのだろうかと意味不明な落としどころで納得していた。
美人薄明、才子多病なんて言葉もある。
美人は運命に恵まれず、とにかく不幸、短命で、才能ある人はとにかく体が弱く、病弱率が高いという意味だけど、そこそこの容姿だからそこそこ長生きして、そこそこ幸せ、才能もそれほどないからありがたいことに大きな病気もせず元気に生きてるんじゃないかと。
そりゃ、美人でかわいくて、才能あれば別の人生も歩めたかもしれないけど、
「笑うとバカっぽくてかわいい」
誉め言葉なのか?ということをいわれても、最後にかわいいといわれているからそれはそれでうれしいとポジティブに受け止めてきた。
そんな私になにもかもうまくいきすぎて笑いが止まらない!という1日では
なく、やることなすこと裏目にでて、面白いくらいうまくいかない1日があった。
あなたはそこそこよと早々に教えてくれた母
ネタにするしかない1日の話の前になぜ自分がそこそこの容姿と気づいたか。
最近は、SNSが普及し、いたるところで自撮りしてはアップ、
こないだはカフェにいる二人組が、おのおの自撮りし、おそらく加工作業後、「どうどう?」としているのを目撃した。
結婚式の前撮り写真が好評というニュースをみたときは、東京駅の前でパリコレモデルのようにポーズを決めたり、抱き上げたりする前撮り写真が人気なんてのをみて、
「恥ずかしすぎる~~~、無理~~~」
とビール片手にチャンネルを変えた。
昔に比べて、美男美女が増えたような気がするし、手足の長さは気のせいではすまされないほどだ。
まったくもってうらやましい限り。
昔から自分がかわいいかかわいくないかというのは気にならない子でダイエットも興味がなく、食べたいだけ食べて、やせすぎず太りすぎず、いや、ちょいデブだったかもしれないが女子として生まれたのにまったく女子らしく振舞ってはいなかった。
それでも夢は持つ。
地球儀をくるくる回して、いつか行ってみたいな~なんて昔から旅好きだった私。小学校5年生のときに念願の飛行機に乗せてもらえた。
といっても国内線だから、1時間くらいのフライトだったものの自分が飛んでいる感覚、客室乗務員の美しさにうっとりしたものだ。
客室乗務員になれば、仕事で世界中どこでも無料でいけるのでは?と考えた私は早速、隣に座る母親に
「私、あのお姉さんになる!」
と無邪気にいうと
「あら~、あなたは無理よ。だってキレイでスタイルよくないとなれないんだもん。」
と秒で娘の夢を壊した。
ただ、そのときに自分はさほど美人でもなくスタイルもよくないんだと自覚し、友達がアイドルに憧れていても
「私はそこそこだから無理~」
とアイドルに憧れる前に諦められる子になった。
中学校のときは、学年でも5本の指に入るんじゃないかというくらいのかわいこちゃんと親友になり、よくつるんでいたのだが、大人になってからアルバムを見返していた時に、現実を教えてくれる母が
「あの頃、あんたこの子の引き立て役になってんじゃないかと思ってたわよ」
とどんだけネガティブなんだよと突っ込みたくなることを思っていたそうだ。
ちなみに、現在、その子は子どもを産み、そのまま体重が戻らず立派なおばちゃんになり、その子の子どもに
「ゆきんこのほうがかわいい」
と言われている。よくわからない逆転現象。子どもの素直なコメントに喜びを隠しきれない。
そこそこの容姿ネタは他にも多々あるが、そんな感じで母が現実を教えてくれたおかげで過度な夢をもたずに淡々と過ごすことができていた。
母ちゃん、ありがとう。そこそこの見た目と早々に気づかせてくれて。
褒められるとうれしい、けなされると悔しいのは当たり前
悪夢の1日は起床から始まる。
数年に一度、自分が空を飛ぶ夢を見るのだが、これがものすごく疲れるのだ。空を飛ぶためには、腹と尻に力をいれて、上昇するときには相当のエネルギーを要する。
タケコプターをつけずに空を飛ぶというのはこんなに大変なのか?!と
意味不明なことを思いながら、それでも空を飛ぶという夢はなんとも楽しい。
ただ、朝起きたときの疲れが半端ない。なまりのように重い体を持ち上げると、どうやら寝違えたようで首も痛い。
何もしていないのにすでに一仕事終えたような疲労感。
そんなときでも腹はすくもんで、ささ、ご飯を食べようと思ったら炊飯器のタイマーを入れ忘れて、水浸しのまま。
おいおい、なんなんだよ~と冷蔵庫にあった柿でも食べようと得意の「かつらむき」をしていると、ちょっと固いところにあたり力をいれた瞬間、指をざっくりと切ってしまった。
ノ~~~~~~~ン。
血がぼたぼたと落ち、まずは吐血。
さほど切れてなかったため、ひとまず切り傷の万能薬「キズパワーパッド」があったのでくるりと巻き、仕事をすることにする。
今、かなり大きな仕事を抱えてて、数か月かけて取材から提案、テーマ提出
ようやっと1冊にまとめるところまでいき、50ページのドラフトを提出し、チェックバックが来る日だった。
いろんな不運が重なっていた
1.顧客が大企業
大企業の何が大変かって、上司に忖度しすぎて、きちんと完成したものじゃないとエスカレできないようで途中経過というのをみせないから、振り出しに戻されることが多々ある
2.関わる人たちが多すぎる
意思の疎通がいろんな人を介してされるため、私の意思が正しく伝わらない
3.対面で説明できない
コロナでオンラインが主流になってしまったため、意図をきちんと説明できない。いろんな人がアイデアベースでしゃべり収集がつかない
なんてことがあり、1回目はドラフトだから、ある程度まとめ、簡易でいいよという言葉に甘え、ページ構成重視で提出したところ、辛辣なメールがきた。
「頂いた成果物について、誤字脱字や趣旨のわかりづらい構成をはじめ、
ディスカッションするクオリティになっていない」
パソコンをあけて、一発目に読むメールがこれだとさすがにやる気がそがれる。誤字脱字は一人でやっているからという言い訳はあれどほんとすみませんとして、構成に関しては、一言モノ申したいということが多くあり、それを説明するための場を設けてほしいといったのに、勝手に解釈されて再度提出しろといわれてもね~とジンジンする指先を眺めて、がっくし。
が、褒められればうれしいけれど、調子にのって終わってしまう私は、
けなされて悔しい思いをしてこそ、本領発揮。
せっかく止まっていた血がまたにじみ出るほどキーボードを叩きつけて
再度作り直す。
が、こういう日というのは何も生み出せないのだ。
書き始めたいのに、書けない。
こういう日はパソコンから離れて、まったく別のことをして自分の力を信じ
アイデアが浮かぶのを待つのみ。
ということで気分転換に出かけることにした。
人生初の逮捕
朝からやることなすことうまくいかない割には、天気は快晴でとても気持ちがいい。平日は車も少なく快適ドライブ。
お気に入りのポッドキャストを聞きながら、30分ほど快調に運転をし、
鼻歌まで出始め、気分も上々になったそのとき、
ぴ~ろ~ぴ~ろ~ぴ~ろ~
お!事件か?救急車か?
と端に寄せ、スピードを落としゆっくりと進む。
するとなぜかずっとサイレンが鳴り続けている。
だんだん近づいてきてなにか言っているのが聞こえた
「前の車、側道で止まってください」
ふ~ん、前の車ってどの車け?とゆっくり進んでいくと
「前の車!止まりなさい!」
と命令口調になり、バックミラーをみると白バイがあおっているではないか。あれは完全にあおっているとしか思えない。
ええええええ!!!あたし???
誰かひいたか?シートベルト?ライトがついている??
とにかく大パニックのまま、止まり、おとなしく待つ。
「私は、●●機動隊の●●であります。免許証をもって外に出てください」
と丁寧だけど、有無をいわさない感じの口調。
警察のお世話になることなんてないから珍しく心臓がバックバック
「あのう、私はなんで呼び止められたんでしょ?」
「速度違反であります!」
速度違反????スピード出さなすぎて、いつも渋滞を巻き起こす私がスピード違反ってある?
確かにポッドキャスト聞きながら鼻歌歌っていたけど、どういうこと?
「あ、あのう、何キロ出てたんですか?」
「67キロであります」
なんなんだよ、いちいち「あります」って!
「え?法廷速度よりは確かにオーバーしてるけれども前の車と車間とって走っていたんですけど」
「ここの速度制限知ってますか?」
「60キロでしょうか」
「50キロであります。メーターみてました?」
なんと!いつもメーターみて走れと
「巡査さんは、いつもメーターみて走ってるんですか?いやいや、そもそも前の車との車間を一定に保って走っていたということは前の車も67キロ出ているということになり、逮捕しなくちゃいけないですよね。なぜ私だけなんでしょう」
「検知したのがあなたの車だからであります」
言い分がわかるようなわからないようなどうも納得はいってないものの、確かにオーバーしている。
もう逃げられないとすごすごと降り、免許証を渡す。
人生初の逮捕、道端で警察官に止められて、通行人たちは憐みの目で通り過ぎていく。
朝からいろんなことがありすぎて、さらにパンチをくらってぼ~っとしていると、何かまくし立てている。
「12000円を1週間以内で払え」と当たり前のように言われた瞬間、金にうるさい私のスイッチが入った。
「12000円の根拠ってなんですか?」
「15キロオーバーは12000円であります」
「どうやって計算したら、12000円という金額になるんですか?」
「・・・・・」
あります巡査が答えられなかった。
「12000円という金額が妥当かどうかというのは一般庶民に決定権はないのかもしれないですけれども、1週間以内って・・・
しかも、郵便局にわざわざいかなくちゃいけないですよね。1週間の根拠って・・・・いやいや、そもそも朝からいろんな悪いことが重なってメールではさんざん嫌なこと書かれて、すごく落ち込んで私って存在していてもいいのか?と思うくらいでそれでドライブしたら、今度は逮捕されて、これ以上何があるんでしょう?私ってそんなに悪い人なんですか?」
と、もはや巡査さんには関係のないことまで、独り言のようにしゃべり続けた。めんどくさいのを捕まえてしまったな~という顔をしながらも黙って聞いていた巡査。
朝からの不運を人に聞いてもらえて若干、すっきりした私はひとまず謝り、手書きの違反ペーパーを手に車に戻った。
時計をみると逮捕されてから1時間経過。
スピード違反で捕まると1時間もロスするのか。
いや、独り言が長すぎたか・・・
出かけるべきではなかったと後悔しながら、車を走らせる。
すると、すぐに60のマークがみえた!
え?同じ道路なのに50と60が混在しているのか!
あそこは恰好の逮捕スポットだったのだ。ちっ!
また腹が立ってきて、アクセルを踏み込みそうになる。
ダメだ。こういう日はおとなしくふて寝をしたほうがいい。
せっかくドライブに出かけて気分転換しようと思ったのに
いたずらに12000円払わせられてあえなく終了
巡査の呪い
こういう日は、事故を起こしかねない。
普段よりも、左右確認を行い、しかも、50キロ規制は49キロで走り、のろのろと運転して家路につく。
家につく直前が危ないというし、駐車するときもバックモニターあるのにわざわざ外にでて障害物や子どもがいないか確認。
車を止め、玄関にヤマト運輸の車を発見。
は!今日は荷物が届く日だった。
と小走りで家に入ろうとした瞬間、視界からヤマト運輸が消えた。
こけた。かわいいこけ方じゃない。
ジャンピングして思いっきりあごをぶつけ、膝を打ち、手のひらは
コンクリートで皮がべろりとむけた。
手のひらがずきずきする。
でも、あまりの不運の重なりでもう気力がない。
うつぶせにスーパーマン状態で突っ伏していると、一部始終をみていたであろうおばあちゃんが杖をつきながら近づいてきて
「お姉ちゃん、生きてるかい?」
と声をかけてきた。
身動きしない私を心配したのだろう。
よろよろと起き上がる。
「おやまあ、膝から血が流れているよ」
痛みはないのに、だらだらと血が流れていた。
流れる血をぼ~っと眺めているだけで垂れ流していると、タオルで吐血してくれた。
「お姉ちゃん、頭うったかね?私の声聞こえるかね?」
「はい・・・ありがとうございます」
「おお、よかった。血が止まらなかったら病院いきなさいね」
なかなか立ち上がれず、見ず知らずのおばあちゃんに今日あった一部始終を
しゃべり、私、なにか悪いことしたのかな?とか意味不明なことつぶやき
おばあちゃんが黙って聞いてくれていた。
「まあね、人生いろんなことがあるわね。でもまだ若いんだし、
明日とんでもなくいいことがあるかもしれないじゃない」
ばあちゃん、いいこという。
明日は明日の風が吹くだわね。
それにしても、最後のすっころびは巡査の呪いのように感じる。
最後、かなりうっとおしそうな眼でおじぎをしていたから、呪ったんじゃないかというくらい派手にこけた。
高校のときの部活以来じゃないかというくらいの大きな擦り傷をおった。
擦り傷というより膝は若干、肉っぽいのもめくれている気がする。
美人じゃなくても不運に見舞われるなら、やっぱり美人に生まれたかったなとキズパワーパッドを貼りながら思った。
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