【詩】電話線の明晰夢
なにかを間違えた少女たちは、
指先から風化したと、風の噂
だれかに、伝えたいことがあった所為で
必死に受話器に手を伸ばす、少女たち
保留音のあいだ、
少女のたちの眼は
たしかに、
光る、
瑠璃、
で
あった
電話は、いつだってつながらない、
誰もいない、通信先
連絡網は、迷宮入り
憐れむこころ、
それを憎めと、
拡声器
そのせいで、
聞こえなかった、
着信音
きっと通話を望んでいたのは、
少女たちの瞳孔そのもの
いつでも、
言葉を待つのは、
澄みつづける
無垢の消えた
大きいばかりの
瞳のつらなり
重たいばかりの、
通信速度は、
いつでも、
脈拍みたいに、
つながりを、
予感させる、
それなのに、
少女たち
を
拒み
少女たち
を
失望させる
夢でも現でも、
私は少女たちの
電話番号を知らない
きれいに並び、私を見ない、
そんな、少女たちがこの世に、
存在しているのかも、知らない
震える指で、
思うままの、
番号を押す日々
それを、
見ているだけ、私の視点
公衆電話の、
蜃気楼に向かって、
手を振る月日の重なり
それを、
見ているだけ、私の視点
プッシュ音に合わせて、
少女たちの心臓は動き出す
同時に、切り落とされた、電話線
ぷつりと、血管が切れて、青い心臓
が、床に落ちて
ノイズ混じりの
待ち望んだ声
蘇生した一人の少女、
名前を言わない少女、
誰も呼ばなかった少女、
声も知らない少女、
ゆくえふめい、
少女。
少女。
少女。
通話料は、右肩上がり
無言を続けて、耳を塞いで、
ただ、
見ているだけ
非通知、私の視点
【電話線の明晰夢】
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