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ロンサーヌからランボーのほうへ


16世紀フランスの詩人ロンサーヌの「エレーヌへのソネット」の冒頭、

年老いて、晩方、私の詩の魅力に驚嘆し、夢見ながら鐘糸の上に頭を屈めて、あなたは言うだろう。「私の春はロンサーヌに称えられた」と。

老いては時すでに遅し、このいまの若い時に、愛し合いたいという求愛の詩だそう。なるほど、詩人からこんなふうに愛を求められたらうっとりしてしまうかもしれないが、私は(思い出せる限り)、確かランボーの「地獄の一季」の一節だと思ったが、

世界は進む。回りはしない。でもぼくたちは精霊に向かっていく。

という一行があって、人は年老いて朽ちてもなお、愛や理想を追求することがとても自然なことだと思っていた。「いま」がずっと「いつも」であったらいいなぁと。

身を屈め、眠気に襲われても、たぶん「春」はどこからともなく称えにやってくる。世界も時計も後戻りはしないからには。


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