また吸いたいと思うその日まで
10年くらい、たばこを吸っていた。
初めて買ったのは、好きな人が吸っていた金色のマールボロだった。彼の影を追って。
そのくらいの気持ちで手を出し、
子どもが出来たことを機にやめた。
母体であるわたしが喫煙者だったから、
だからその子どもが喘息持ちなのかも、
アレルギーがあるのかも、
自閉症なのかも、
心臓病があるのかも。
と、自分を責め出すとキリがない。
どうしてそうなったかなんて一生解き明かせないのにどうしたって原因を考えてしまうから、身体に悪いとされてることは最初からしないに越したことはない。
結果としてそれでも同じことが起こっても、ここまで気をつけていたのにどうして?と思えたら、その方がずっと、この先を生きるのが楽だから。
おいしいの?って訊かれれば、
そりゃ、まずいと言えばまずいし、
臭いしお金もかかるし、いいことないけど、
お腹いっぱい食べて飲んだ冬の夜、
人気のない寒空の下で吸う一本のたばこは、
澄んだ冷たい空気も一緒に吸いこむその一本は、これはおいしいと言えるなぁって、今でも思い出せる。
死ぬ前にもう一度くらい、吸ってみたい。
吐息か煙かもわからないくらいの寒い夜に。もう、自分のために生きていいよって思えた、そんな日に。
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