不適切にもほどがある!を観たアラフォーの感想
※2話まで観ての感想です
ご多分にもれず「ふてほど」にハマっている。
ほとんどドラマを観ない私だが、評価の高さと設定テーマに興味を惹かれ気軽な気持ちで1話を観たところ、30分後にはリアルに声を出して笑っていた。
現時点でまだ2話までしかみていないのだが、次のエピソードが待ちきれないという体験は久々だ。
ご覧になってない方のためにも簡単に概要をご説明する。
「意識低い系タイムスリップコメディ」というキャッチコピーがついた本作は、その名の通り昭和と令和を行き来するいわゆるタイムスリップ物であり、昭和1986年に生きる主人公の小川が、ひょんなことから2024年に来てしまうことから主たるストーリーは始まる。
「なんだこのうすっぺらいツルツルしたものは…?」とスマホに衝撃を受けたり、「耳からうどんが出てるぞ!」とBluetoothイヤホンの存在に驚愕したりするいわゆるタイムスリップ系のあるあるは、定番だとわかっていても笑いを誘うし、また"うどん"と喩えるワーディングセンスの秀逸さは、さすがクドカン作品!とベタな評価を送らずにはいられない小気味の良さである。
ブラックか?ゆるブラックか?
家族愛であったり、恋愛?であったりも描かれる本作だが、作品の面白みの大きな要素はもちろん「意識が高まりすぎた世の中へのアンチテーゼ」である。
社会問題として描くと重たすぎる今テーマを、「意識低いおじさん」を使ってコミカルに描いたのは天才的としか言いようがない。
「頑張れ」と言ってはいけない。
「根性論」なんてもう通用しない。
「残業はするな早く帰れ」
パワハラ、セクハラ、マタハラ、アルハラ…無限に増え続けるなんとかハラスメント。
無論過去の社会の反省から生まれた用語やルール、空気であり、それこそ昭和世代の「不適切感」は自分自身痛いほど体験してきており、前提として良い時代になったよねとは思う。
一方で、ルール化を強めることの弊害も生まれた。
ここ数年よく聞くようになった「ゆるブラック」などはその代表だろう。
残業100時間、休みも取れない、パワハラがひどいなどの元祖ブラック企業に模してつけられた「ゆるブラック」は、職場の居心地が良すぎて成長実感を得られないなどの労働環境職場を指す。
確かにブラック企業ほど酷くはないが「ここにずっといたら自分はダメになってしまうのではないか」という不安をずっと纏いながらキャリアを形成することになり、それはそれで人によっては多大なるストレスになるだろう。
私は1984年産まれで、このドラマで描かれる時代よりは少し後の世代ではあるが、基本的に昭和のスポ根が自分のアイデンティティなので「ゆるブラック」環境ではどうやっても働けない。
アラフォー、アラフィフ、アラカンの苦悩
40代以上の世代には私と同じ感覚を抱く人は多いだろう。
そして重要ポジションや、職位につくことも多いこの世代は日々会社で「ハラスメント研修」やら「労働環境整備」などを学ばされ、自分たちの過去の否定とアンラーニングを強いられる。
分別のある大人であれば、そりゃそうだよね。昔は酷かったもの。と素直に受け入れ、部下への言葉遣いに注意し、労いの言葉をかける努力をする。
「俺たち/私たちの時代はな」なんて苦労話など、酒の席でも御法度だということを理解し、せいぜい自宅に帰って妻や夫に愚痴を吐く程度で溜飲を下げる。
配慮という名の鎖でがんじがらめにされた、令和を生きる中年はこの鎖の解き方などもはやわからないし、解こうとする気概さえ持てはしない。
いや、持ってはいけない。
なんだよ、もっと頑張れよ。死ぬ気でやれよ。
それくらいでストレスってなんだよそのキャパは。
心の中ではそんなセリフを幾度となく吐いたことがあるだろう。
無論、大きな声では言えないが私もその1人である。
そう「ふてほど」はそんな中年世代が心に秘めた本音を気持ちよく消化してくれるドラマなのだ。
自分が絶対に言えない、社会的に言ってはいけない一言を小川はズバズバと言う。
だって物理的「昭和の人」だから。
令和のマネジメント教育など受けてきていない、「意識低い系おじさん」だから。
彼を責める道理などどこにあろう。
緊縛系中年が、酒を飲みながら観るには最高に痛快だ。観終わった後には自然とその鎖が緩まり(決して外してはいけないが)また少し息ができるようになっている。
だよね、ダメなことはダメだけど
これ以上締めすぎると大事なものを失うよね
そんな風に自分の気持ちに折り合いをつける。
小川が叫ぶ「働き方ってガムシャラと馬車馬以外に何があんの?」には思わず、声を上げて爆笑した。
そうだよ、それだよ。
私だってずっとそう思って生きていたよ。
なんせスペインに旅行に行って、帰国した日曜の夜に成田から会社に向かって翌日の大阪出張の資料を、徹夜で作ってた私だよ。
残業なんて45時間超えてからが本番だろ、そんなふうにしか生きてこなかったアラフォーだよ。
昭和系宣言
時代は変わる。
昭和はとことん「不適切」だ。
時代はめちゃくちゃよくなったと思う。
「ツルッとした薄いの」も「うどん」ももはや無いと生きていけない。
カーボン紙に手書きで経費精算していたことや、書類はFAXでのやりとりだったことや、オフィスやタクシーでタバコが吸えていたことなんてもう思い出したくないし、絶対戻りたく無い。
本当に酷いハラスメントも多かったし、そんなの言語道断で撤廃しなくてはいけない。
だけど、私は昭和を誇って生きる。
スポ根上等である。
さぁ、今日も馬車馬のように働いてやる。
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