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【映画感想】いつか読書する日
ひとりの男性を30年以上にわたって思い続ける女性の恋を描いたラブストーリー。朝は牛乳配達、昼はスーパーで働く50歳の独身女性・大葉美奈子。毎夜の読書を楽しみに、単調ながらも穏やかな毎日を過ごしている。一方、同じ街の市役所に勤める高梨槐多は、末期がんで余命わずかな妻・容子を自宅で看病している。実は美奈子と高梨は高校時代に交際していたが、ある事情から疎遠になったのだった。それから30年、ふたりは互いへの思いをずっと胸の奥に閉じ込めてきたが、ふとしたことで容子がその事実を知ってしまう。主人公・美奈子を田中裕子、高梨を岸部一徳、高梨の妻・容子を仁科亜季子がそれぞれ好演。監督は「独立少年合唱団」の緒方明。
(1312文字)
もう、20年くらい前の映画。
Amazonプライムで公開中。
簡単にまとめると、切なさを日常生活と少しの可笑しさで覆い隠そうとするけど隠せない、そんな映画。
映画.comにはラブストーリーと書かれているけど、ロマンチックな感じではない。でもそこが生々しい。
そしてこれはラブストーリーというより、自分の気持ちを殺して生きてきたふたりの話。
「気持ちを殺すって、周りの気持ちも殺すことなんだからね」
これは高梨の妻・容子のセリフ。
30年、同じ街に暮らしながら、お互い関わらずに生きてきた美奈子と高梨の人生も切ないけれど、死の間際にそれに気がついてしまった容子の気持ちを考えるとやるせない。
この切なさややるせなさは、若者の恋愛では描けないだろうな。どうしても時間の経過が必要。自分が50代になったからか、それが良くわかる。
最後は意外な結末に至るのだけど、それはハッピーエンドではないはずなのに、どこか清々しさを感じる不思議な終わり方。
それにしても田中裕子は、何面にもカットされた宝石のような女優さんだと思う。
優しく見えたり、冷たく見えたり、不気味に見えたり、可愛く見えたり。そして芯の強さと脆さも感じさせる。でもその奥底の部分は絶対に見えない。
特別に美人というわけでもないのに妙な魅力があって、さらにどこか可笑しさがある。
通勤で自転車に乗って少し速く走る。その姿がボクにはどこかユーモラスにも見える。
この可笑しさが俳優さんには大切だとボクは思う。
相手役の岸部一徳も飄々として何を考えているのだか分からない。
この人の場合はいつでもこのキャラクターだけどね。自分の気持ちを隠して生きてきたこの役は、まさに適役だったと思う。
その2人とは対照的に、高梨の妻・容子役の仁科亜季子の演技はクッキリしている。それが必要以上に悲しくさせないのかもしれない。
それにしても、前にも書いた、
「気持ちを殺すって、周りの気持ちも殺すことなんだからね」
という容子のセリフにはドキッとしてしまった。
「自分が我慢すれば良い」という映画やドラマだけではなく、現実世界でも聞くことがあるけど、必ず我慢しきれなくなる。
ボクもその傾向があるのでよくわかる。
それなら、我慢せずにぶつけるべきだと思うが、相手を傷つけたり関係が壊れてしまうのが怖いというは実は自分を守るためで、向き合えないからなんですよね。
そんなことを改めて考えさせられた。