【連作短編】はざまの街で #2 玉子スープ
庭の欅が若葉を芽吹く。若葉は午後の光を浴びて明るい緑色に輝く。
志郎は縁側でいつもの座椅子に寄りかかりながら、文庫本を片手にうたた寝をしていた。
そっと近づいた来栖が、その文庫本を取り上げて、角で志郎の頭をコツンと叩いた。
「いたっ。あ、来栖さん」
「おう。相変わらずジジクサいなぁ」
「来栖さんもたまには本でも読んだら?」
志郎が叩かれた頭を撫でながら言う。
「オレはもう、ありとあらゆる知識がここに詰まってるからいいの」
来栖はそう言って、自分の側頭部を人差し指でツ