インド産業投資奨励措置の現状、ファイナンシャル・エクスプレス紙 ニュースと私の解説
20240326 ファイナンシャル・エクスプレス紙;PLI(生産連動奨励)投資は低迷か、製薬、食品加工は好調、自動車と太陽電池は低迷。
要約訳
企業は2023年12月迄の2年間で、14の生産連動型インセンティブ(PLI)制度のもと、1兆700億ルピー以上を投資しており、これは(予算の)公約額の3兆ルピーの約40%に相当します。
しかし、自動車、特殊鋼、(高性能)ACCバッテリーなどの分野への投資はかなり遅れています。
2022-23年度には、全てのPLIスキームにおいて、約290億ルピーの奨励金が支給されており、24年度にも同額が支給される可能性があります。
公式データによれば、40兆ルピーの生産、又は、販売増加目標のうち、2023年12月迄に達成されたのは、僅か17%との事です。14のスキームによる115万人の直接雇用の可能性のうち、43%が達成されている、との事です。
PLI適格企業による投資は、最大限のインセンティブを得るために最初の4年間に行われなければな利ません。大半の制度は2021年から22年にかけて導入さました。
インドが " Atmanirbhar(強靭)" になる、と言うビジョンを念頭に置き、インドの製造能力と輸出を強化するために、PLIスキームへ約2兆ルピーの支出が2021-22年度連邦予算で発表されています。
殆どの制度は、2021年に発表されましたが、エレクトロニクス(携帯電話)や医薬品を除く多くのセクターで実施時期が遅れています。
投資の大部分は医薬品製造であり、55社による1727.5億ルピーの投資(政府の予算枠)の149%に当たる2581.3億ルピーであった、との事です。
高効率太陽電池モジュールPLI適応企業は約2290.4億ルピーを投資していますが、これはまだ予算枠取り額1兆1,000億ルピーのコミットメントの21%に過ぎません。
インドの新興産業には、エコシステム(配慮)が欠如しており、メイド・イン・インディアの太陽電池モジュールは、中国メーカーに比べて割高になっている、と関係者は述べ、今後の課題が指摘されました。
携帯電話製造企業は、投資計画の66%にあたる約745.2億ルピーが投資されました。
大規模エレクトロニクス・スキーム下にある企業は、これ迄に発表されたPLI優遇措置の初期の受益者です。 自動車と自動車部品産業の投資額は1303.7億ルピーで、6769億ルピーの(予算割り当て枠)約11%に当たります。
しかし、自動車、特殊鋼、(高性能)ACCバッテリーと言った分野への投資はかなり遅れています。
2022-23年度には、全てのPLIスキームにおいて、約290億ルピーの奨励金が支給されており、24年度にも同額が支給される可能性があります。
多くの企業が25-30年度の間に、マイルストーン(将来目標)に基づく奨励金を請求できるようになるとは言え、メーカーが奨励金を受けるための条件を満たさなければならないため、請求総額は1兆5,000億ルピーを超えることはないだろう、と関係者は見ています。
一部の制度は順調に進捗していますが、その他の制度にも、条件付けが少なく、マイクロ・マネジメント(微細な監督項目)がなければ、好評を得る事が出来た筈、と別の関係者は語りました。
最近の大手格付け会社Crisil社の報告書によると、報奨金支払いの請求プロセスの際、請求書の承認が遅れるなどの問題が発生している、と言う事です。
携帯端末の様に、売上高に対するインセンティブ比率が高く、比較的支払いルールが簡単な業種は、2028年度迄に大半の支払いが行われる可能性がある、と報じています。
「とは言え、技術的なパラメーターに沿ったエコ・システムを確立する事は、罰則のないタイムリーなインセンティブ支払いを各部門に保証するために極めて重要である」とCrisil社(のレポート)は述べています。
又、6つのセクターについては、少なくとも56%の奨励金を支給するための資格基準は、比較的厳しいものである、と付け加えられています。
https://www.financialexpress.com/business/industry-pli-investments-falter-3436353/
私のコメント;これからのインドにおいて、革新的な技術が、より効果をもたらすためには、十分な助走期間が必要だ、と解釈します。急激な生産量効果、技術革新効果を狙うのは、ちょっと無謀な場合もある、と思います。しかし、一方、当初見込みが達成出来ない、イコール、即撤退と言う考えも好ましく無い、と思います。ただ、税の恩典原資は税金である、と言う点は、忘れる冪では無いと、思います。
又、半導体などの最先端技術分野のR&D、初期・立ち上げ・量産投資は見込めるのか、その際、他国との共同で行うのか、など、どの様な検討が行われているのか、興味があります。
奨励認可案件とは言え、独自のプロジェクト遂行と国によるチェック体制のあり方は、微妙にして、難しいものではないかと思いました。
又、一定の期間内にインセンティブの効果で成果を上げた企業は、その後、奨励期間を過ぎても、効率的に存続して行くのか、インセンティブ効果の得られない企業は企業として存続出来ないのかなど、よく見えません。