作品は、技巧だけではないんだなあと思い知った出来事
かなり前の事ですが、テレビをダラダラ観ていたら、日本の色々な分野の有名ギタリストを特集した番組が目に止まり、観ていました。
クラッシック、ジャズ、ロック、ブルーズ、その他、色々な分野の、多少音楽に興味を持っている人なら誰でも知っていそうな有名人が沢山出ていて、最後には全員でセッションをし、順番にソロを取る構成になっており、皆さん素晴らしい創作性や技術を見せていました。
そのなかに、ひとり浮いた感じで「かまやつひろし」さんが出ていて、最後の方にエレキギターでソロを取ったのですが、それが他を圧する程の存在感があって凄く印象に残ったのです。
かまやつさんはフォーク系のヒット曲が有名ですが、実はロック系の人で、その括りで出演されていましたが、ギターの技術は高くはない方です。なのに…
超絶技巧やセンスのギタリストたちが散々ソロを取った後にも関わらず、かまやつさんの、ただロックギターの定番フレーズのシンプルなものを「ぐちゃぁ〜」と弾いた演奏が他を圧したのです。これは驚きでした。ロック分野では、かまやつさんよりもギターに関しては遥かに実績のあるギタリストが弾いた後ですら、そう感じたからです。
もちろん、その時のセッションの構成の流れや文脈からそう感じたのは分かっていますし、人によっては場を壊したと感じた人がいたとも思います。が、その番組のセッションにおいてはテクニカルなギタリストたちの演奏が私には猪口才に感じられてしまったのです。「俺は俺の音をストレートに音を出す!」と開き直ったような態度が私の胸に響いたのでしょうか、とにかく、あの場のかまやつさんのギターは良かった…
…という体験をし、シミジミと「ああ、場の雰囲気と文脈によっては技術やセンスは吹き飛ばされてしまう事もあるんだなあ…」と思った次第…
もちろん、一見、非技巧的に観えるものでも表現は技術の分しか出力されませんから、人々の胸を打つものであれば、それもまたひとつの技術なのですが…
ともかく「あー、これはスゴイものを観せてもらった、スゴイ学びになった!」という出来事でした。これがロックの根源だよなあと思ったのであります。