小説「ムメイの花」 #1ムメイの花(目次有り)
空を見上げるとひときわ輝く星がある。
あなたが今、空を見上げて目に留まった明るい星だ。
その星に「ムメイ」という街が存在する。
ムメイは地球を行き来するロケットの発着場。
機械化が進んだ街かと思えば、
至ってアナログな街。
ムメイ人たちが目で見ている世界も色というものはなく、白黒だ。
そんなムメイには「独特な花」が生息している。
花に名前はない。
花の種類はたったの1種類。
花びらはどの花をみても5枚。
根も葉もなく単純なつくりをしている。
花は主にムメイ人たちが住む家の屋根を住処とし、規則正しく生きる。
花開くのは毎朝5時。
毎日17時になると花は灰と化し、散っていく。
灰には砂鉄のような輝きがあり、
思わず触ってしまいたくなるほど美しい。
でも、これだけは要注意。
一度手につくと洗っても
簡単には落ちないから気をつけて。
そして、この個性的な花は、
特有の香りを放ち生命を終える。
香りは一瞬ではあるものの、えぐみや苦み、青臭さを伴う。
文字のとおり、決して爽やかな香りとは言い難い。
ムメイに咲く花は
生きた爪痕をしっかりと残していく賢い生命なのだ。
さて。
この物語の主人公となるのは
ムメイ人 アルファ。
花には全く興味がないオトコ。
彼の家は数字好きな研究一家。
何といっても彼は伝説の祖父を持つ。
ムメイでロケットを発明した人物だ。
アルファは祖父が残した功績に恥じぬよう、
毎日数字に向かい合う日々を過ごしていた。
しかし、世の中が数字で成り立つことから、
感情を無くしてしまった。
彼のこころに唯一、引っかかっている言葉があった。
それは「あるオトコ」 が放ったひとことーー。
「ハナヲ ミヨ」
花の答えを探すためにアルファは四六時中、
花と生活することを決める。
毎朝、右手には「1本の花」を握り、
家の前に立つことから1日はスタートする。
感情豊かな生活は……?
あるオトコの正体は……?
花を見ることとは一体……?