『父が娘に語る 美しく、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』を読んで

 経済は門外漢なのですが、題名にもあるように娘に向けて書かれた体の本なので、わかりやすくて頑張らずに読むことができました。経済について知りたいけど、どの本も難しそうという方にはとってもおすすめです!

画像1


概要

 『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の著者であるヤニス・バルファキス氏はギリシャの財政危機の最中に財務大臣になり、債務の帳消しという大胆な主張をしていた人物です。

 娘の、世の中にはなぜ格差が存在するのかという疑問に答えるために、経済はそもそも何から生まれたのかという話から入ります。そして次第に、経済学のあり方や未来での社会のあるべき姿、幸せとは何かなどにも派生します。
 本当に娘に父親として伝えたいことがたくさん書かれているように感じました。温かい、経済についての本でした。

おすすめポイント① 読みやすい

 お勉強感が少ないので読み物としてどんどん読み進められます。なんとこの本専門用語が全然出てこないんです。全て平易な言葉で説明してくれています。数式も出てきません。これだけで、えっ読めるかもってなりませんか?専門用語がない代わりに、例え話も多く使われていて、味気なく感じがちな経済の話もすっと頭に入ってきます。
 途中で挫折せずに読み切れるって大事ですよね。苦手意識が生まれないから、今後の経済のトピックへのハードルも下がりますね。

おすすめポイント② 経済学がどうして大事かわかる

 経済についてちょっとかじってみて。で、実際の生活や社会を理解するのに経済の知識を使えるかと言われたら、ちょっとそれは無理かなって人いますよね。私がそれです。いや、かじったと言うか高校?中学?の授業で学んだきりですけど。

 本書では、「貧富の差」「機械化」「気候問題」など、お金の流れが絡む社会的な話題にも触れてくれています。宗教や文字のはじまりも、実は経済と密接に絡んでいるという話もあります。やっぱり世の中のことって繋がっているんだな~。
 経済学を通した社会の見方をたった本1冊でなんとなく体感できるというのは、バルファキスさんが経済学のエッセンスを上手に伝えてくれるからこそだと思いました。

おすすめしにくい人

 神話や映画などを用いた比喩が多いので、知らないと逆にわかりにくく感じる方もいるかもしれないです。とはいえ、どういう内容なのか説明してくれるので、特に問題ないと思います。

 あとは、経済を専門にしている方には物足りないかもしれません。(ネットで感想を調べると実際そういう意見がありました。)

その他感想

 自分の中で環境問題について最近特にホットなのでどうしても頭に残るのですが、炭素の排出量を経済に組み込んで管理しよう、という内容が載っています。性善説的に各々が環境に優しい選択をできるのが理想ではありますが、やはり効果的に環境負荷に対する行動を促すにはこのように経済に組み込むのが良いんだろうなと思いました。
 なんでも功利主義的になってしまうのは悲しいですが、頭で環境に優しい選択をすべきとわかっていても、実際その選択を取るには少し壁があるのはわかるので、理想論ばかり掲げてもしょうがないんでしょうね。

 大切な判断を他人任せ、専門家任せにしないために誰もが経済について意見を持つべき、そのために経済について難しい言葉は使わずに説明する。というのがこの本のあり方です。
 経済に関する話題を避けてしまう私にとって耳が痛かったのですが、少しずつ自分のペースで学んでいけたらと思いました。
 誰もが意見を持てるように簡単な言葉で説明すべきというのは、経済に限らず大切なことだと思います。私もこれから先、自分の専門分野を誰かに説明するときには絶対気を付けよう、とひとり改めて心に刻みました。

 もうひとつ。本書の最後の方に載っていた、「十分に長いテコと足場を我に与えよ。されば地球をも動かさん」というアルキメデスの言葉が印象的でした。遠くから俯瞰してみる視点を持っている限り、現実と関わり続けられる。社会の規範や決まりごとから一歩外に出て世界を見なさい。ということが書かれています。
 自分がどういう立場や環境にいるのか把握するということは、自由な意見を持つための第一歩なんだと思います。やはり、物事を知るという行為は大切ですね。

まとめ

 本書の魅力はなんども繰り返しますが、読みやすいことです。誰もが経済についての意見を言えるように、という筆者の願いがそのまま表れていました。
 訳の関美和さんのあとがきにも、GDPに占める教育支出が少なく、ひとり親家庭の貧困率が高い日本だからこそ、多くの人がもっと経済について自分の言葉で語れるようになるといい、という言葉があります。
 私自身この本を通して経済をより身近に感じられるようになったので、経済を学びたいという思いはあるけれど躊躇している他の方にも、ぜひ読んでみてほしいです。

 また、読んだ後にnoteを書いている中で、私が知りたかったのは経済じゃなくて、経済学を通して見える見方だったんだなぁって気付きました。うまくまとまりませんが、そんな訳で良い本でした。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。いい文章が書けるようになりたいな~。ゆるく投稿続けたいと思っているので、また読んでくださったら嬉しいです。

なっぱ

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?