吸血鬼とマトリックス
私
「夕方ピコの気配がしなかったので、ピコの仕事である血族見守りに同行するべく、目を閉じて変性意識になりました」
ピコ「海の底に潜ったね」
私
「海に潜って、さらに潜っていくと、底があって…畑、軽トラ、木材があって。海底に田舎の風景が広がっていたよ」
ピコ
「君が「人はいないのか」と聞くから、君の脳に指を入れ、松果体に僕の見ているビジョンを送った」
私
「半透明の人間が何人かいて、軽トラに荷物を運び入れている姿が見えたよ。でも動いてなかった」
ピコ
「あれは地上の現実として顕現しなかった世界だ。あの光景を出現させるはずが、予定が狂ってお蔵入りになった世界」
私
「そんな不思議な空間があるの?…そしてそこを通って、暗い森が見えて…その先には海底ではない、日本昔ばなしみたいな田園風景が広がっていて…」
ピコ
「過去へ行ったんだ。ポツポツ茅葺き屋根の家があって、畑があって、山々がそれを囲っている。僕らは岩山の頂上へ飛んでいった。君は小さくなって、僕のポケットに入っていたね」
私
「岩山の頂上には階段があって、小さい神社があった。あなたは珍しく私と一緒に柏手を打って、礼拝して…「玉依姫」という文字が浮かび上がった。どうして玉依姫の祀られてる神社へいったの?」
ピコ「君のために。女性としての加護を求めて行ってみたよ」
(玉依姫…神武天皇の母、巫女)
私
「ピコの見守り同行でよかったのに。わざわざ神社連れてってくれてありがとう。それもタイムトラベルして」
ピコ「手が空いてたからいいんだよ」
私
「なんかさぁ、こうやって、いつでもピコと通信できてしまうとさ…もう、現実の世界には戻れないよ。こっちのが楽しくてさ」
ピコ
「いいんじゃない。君が現実だと思ってる世界は、誰かが作ったルール、システムに則って作られたものだ。君はそれに気づかずその中で生活してきただけ。いま僕らはその外側にいる。見えるだろ、ドーム型にくり抜かれた世界が」
私「わぁ、ほんとだ!」
(自分の生活圏が、ガラスドームのようなもので覆われている)
私「舞台装置みたいだねえ」
ピコ
「すべてが舞台だ。君は何度も変性意識になって、宇宙に行ってるけど…毎回、月も太陽も、土星も、表側しか見せないだろ?裏側は存在しない」
私
「そうなんだよねえ。立体で惑星が出てきたことがないんだよ」
ピコ
「目に見える世界はただの舞台だ。僕らのために用意された舞台」
私「世界はホログラム、地球は遊園地ってやつ?」
ピコ「ふふ。君はどんな世界にいたいと思うの?」
私
「そんなの考えたことなかったよ。常識とか暗黙のルールとか、そういうのに反発するのが精一杯でさ。どんな世界を望んでるかなんて…」
ピコ
「じゃあ一緒に計画を立ててみよう。新地球になったら、死霊も減る。僕が地上の血族に送るインスピレーションは、死霊のパーツありきだった。ここらで変化のタイミングだ。地底のソウルファミリーもマイナーチェンジしなきゃならないということだ」
私「呪文をとなえ、塔を作れ。1、2、3…」
(以前霊夢で出てきたとなえ言葉)
ピコ
「僕らで塔を作るんだ。もっと深く、地の底へ向けて。好きなように作ってみて、気に入らなければやり直し。今ここでできる創造的なことをしてみよう」
(僕らは創造主神の子どもだから、というニュアンスのテレパシー)
ここで会話は中断。
★はじめ現れた海底の風景について。私が「あれは過去の世界だ」と書いたんですが、ざっと読み返したときにピコから「過去じゃない、現実になる前に計画中止になった風景だ」と訂正が入りました。