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2023年映画「PERFECT DAYS」
いつものように運転しながら歌い、いつもと同じルートでとあるショッピングモールに向かい、比較的人が少ない平日の映画館に入る。隣に座る年配の女性がハンバーガーを食べきってコーヒーの香りを漂わせるとそれからぽりぽりと音を立てながらポップコーンを齧っている。ちょっと嫌だなって思いながら本編が始まるのを待った。
ひとりの男の変わらぬ日々が続いてゆき、ひとりの男の変わらぬ日々がこれからも続く。
映画館を出ると買い物客がいつものように買い物をしていて、ショッピングモールの床がいつものように人々を映すほど光っていて、あのショップはいつものように50%OFFのセールをしていて、野菜売り場はいつものように野菜が山盛りでいる。
いつものように運転しながら歌えずに、いつもと違うルートで自宅に帰る。いつもより少し急いで洗濯物を片付けて、テレビでお相撲を観て、いつものように夕飯を作って食べて片付けて、いつものようにお風呂に入ってベッドに入って小説を読んでいる。眠たくなったら眠るつもり。
ベッドライトに両手を翳してみる。影と影を重ねると影は濃くなるか確かめてみる。はっきりと確認できないけれどたぶん濃くなっているはず。だって濃くならないとおかしいから。ふふっと笑ってしまう。
私の変わらぬ日々が続いてゆき、私の変わらぬ日々がこれからも続く。さて変わらぬ日々ってなんだろうか、はたまた変わらぬ日々ってあるのだろうか。毎日の天候が違うように、日々季節が移りゆくように、しおりが挟まれた小説の中の物語が進んでゆくように、そして風が吹く木漏れ日のように、私の明日もいつものように完璧だ。