メタバース×青空文庫~PD(著作権切れ)コンテンツの可能性~
1.メタバース×青空文庫
読書好きの方においては、みなお気に入りの読書スペースを持っているように思うが、そこに仮想空間が加わる可能性がでてきている。
こちらはバーチャル空間(VRChat内)で青空文庫を読むことができるシステムである。
そもそも青空文庫を知らない方のために簡単に説明しておくと、青空文庫とは既に著作権が切れた文学作品などを集めテキストデータ化し、無償・自由利用可能なものとして公開されているデジタル・アーカイブの一つである。
(青空文庫では現在1万6000冊以上の本を自由に読むことができる。)
この青空文庫をバーチャル空間内に、いわば自分の本棚として設置し、自由に好きな場所で読めるようにしたシステムが上記の「青空文庫システム」である。
その魅力につき制作者であるスズキさんは以下のインタビュー記事においてこう語っている。
あらためて言うまでもなく、読書においてはいかにその世界に没入できるかが重要な要素の一つであるが、この現実世界の多くの場所では、否が応でも無粋な光や音が入ってくる可能性がある。「いっそ本以外何もない空間で思う存分読書に没頭したい」読書好きの方ならこう思ったことは一度や二度ではないだろう。
その点においてメタバース(仮想空間)内というのは、これ以上うってつけの環境はない。上記インタビューでも語られているように、各自の理想の世界で思う存分読書を楽しむことが可能である。
2.メタバース×PD(パブリック・ドメイン)コンテンツの可能性
今後メタバースの可能性を探る上で、こうした著作権切れ(PD:パブリック・ドメインなどと呼ばれる)作品は極めて重要になってくるだろう。
まさに上の読書の例などは、パブリックドメイン作品を集めた青空文庫というデータベースが既に自由利用可能なものとして存在していたおかげで、作者や出版社といった権利者に許可をとるコストも不要で素早く活用でき、最高の読書環境がメタバース(仮想空間)内にできる可能性をいち早く示すことができた。
本来メタバース内で何らかのコンテンツ(映像、アート、音楽などのライブイベント、ゲーム、デザインなど)を公開しようと思うと、通常はそうしたコンテンツに含まれる著作権をはじめとする無数の権利者との間での権利処理と呼ばれる作業が必要となる。
こうした権利処理というのは(特に過去生み出された)コンテンツ利用にあたっては、しばしば極めて困難な問題として我々の前に立ちはだかり、誤解を恐れずに言えば、通常はそうした権利処理コストを払ってもなお採算のとれる見込みのあるコンテンツ以外は、永遠に眠ったままという事態もありうる。
そうした時間的・金銭的な権利処理コストはメタバース×〇〇の可能性を自由にかつ手軽に探る上では一つの障害になり得るものであるが、いわばこうした権利処理コストが不要で、自由に活用できるコンテンツこそがパブリックドメイン作品である。
まさにメタバース×青空文庫が新しい可能性を示したように、私の乏しい発想では思いもよらないメタバース×既存コンテンツの可能性を皆で自由にアイデアを出し合い、パブリックドメイン作品を利用しつつ試行錯誤していけたら、もっと楽しいコンテンツ体験が待っているのではないかと、そんな未来が実現することを(やや他力本願的に)期待しながらこの記事を書いている。
…と、ここまで書いたところで、そもそも著作権切れ(パブリックドメイン)作品かどうかをどうやって判断すればいいんだよという声が聞こえてきそうなので、以下簡単にご紹介。
3.著作権の寿命について(その計算方法)
この著作権の寿命のことを著作権法では「保護期間」という。
著作権の保護期間が終わると、その著作物は誰でも自由に利用可能となるのが原則である。
この保護期間が終了した作品のことを上では著作権切れ(パブリックドメイン)作品と呼んでいたわけだが、それではパブリックドメイン作品をフル活用しよう!と思ったときのために、簡単に著作権の保護期間の計算方法をご紹介しよう。
…といっても、実はこの計算方法、信じられないほどの例外の上に成り立っており、はじめて保護期間を考える方がそうした例外も含め完璧に理解しようと思うと困難を極める。
そこで、ひとまずここではこの手順さえ知っておけば保護期間が明らかに終了しているものや、明らかに保護期間中であるものを選別することはできるだろうという検討順序を紹介する。ぜひこちらを参考にパブリックドメイン作品をフル活用してもらいたい。(田島 佑規)
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