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変わらぬ悩みと負けない心

僕は生まれた時は女だった。幾度の手術を経て、戸籍を心の性別である男に変えて生きているLGBTQのTであるFTMトランスジェンダー。
1980年生まれ。
仕事は地元である名古屋の繁華街錦三丁目でオナベバーVenusとレズビアンバーWの経営をしている。

オナベバーVenusは2007年に開業して今年2025年で18年目を迎える。

僕が自分になるまで。

「自分の居場所が欲しかった」

性別に違和感を持ってからずっと自分に嘘をついて生きていた。求められる英理子として、着なくてはいけない服を着て、好きにならないといけない異性を好きになったフリをして。
自分を騙しすぎて、何が本当かなのかがわからなくなった。

女でいないと価値がない。
女としてしか生きてこなかったから、心の性で生きていけるのかさえ不安でたまらなかった。

性同一性障害の自分と向き合って、治療して生きていくこと。
治療とは治すことなのに、僕たちのこの治療というものは、心には圧倒的に当てはまるけれど、身体には負担しかない。
どちらも天秤にかけられない大切なモノを覚悟して選んで進んでいかなくてはいけない。
ほとんどの人は生まれた時から心と体の性が一致しているのに僕はソレを一致させるまでに20数年かかった。

スタート地点に立つまでにそれだけ時間がかかったのだ。

性別を変えたから終わりでなかった。


これからどう生きていくか?
どう社会で居場所を作ればいいのか?
当時の僕は不安とコンプレックスしかなかった。

もがきながら辿り着いた。

居場所がないなら作ればいいと。

人生を変える出会いとタイミングに恵まれ、僕は「自分らしく生きる場所」というテーマを掲げて店を開くことにした。

あれから18年。

本当にいろんなことがあった。
良い事も悪い事も悲しい事も寂しい事も…想定外のトラブルも…ほんとうに沢山。

振り返ってみると折れそうな心との闘いの18年だった。
その度なんとか、なんとか立て直し、奮い立たせて「今」があるんだけど、その今も尚、おれそうになる心との闘いの日々である。(笑)

この仕事は離職率が高い。
若い時だけ。
将来はどうする?
親の反対。彼女の反対。
世間体
身体への負担。

企業カウンセリングを導入した税理士の先生の話からヒントを得て、この業界としては異色な希望者へのカウンセリング制度も始めた。
働き方、給料体制の改革もした。

働きやすさ、給料の安定、自立を目指す。
この仕事、水商売はどちらかというと短期決戦。一攫千金。一か八か。
売れたら天国、売れないと地獄。
そんなジェットコースター感覚が売りな世界に僕が目指している事は真逆に近い。
もちろん売れる子は稼げる。
ここは絶対に変えてはいけない大切なポイントである。という事は
安定という基本給の底上げをしていかないといけない。

野球でいう所の、エースはもちろんのこと。中継ぎ、抑えも評価していくことでチームが強くなる。

僕が持っているのはLGBTQの仲間たちとのチーム。個々は弱さも抱えている面もあるが、それぞれに個性と魅力がある。
僕は監督としてどう采配するか?そしていかに長く活躍できる環境を作るか?
今でも見えない答えに向かって試行錯誤の連続である。

一番の魅力は、人との出逢い。

普通に働いていたら、出会えない「出会いのチャンス」がここにはある。
そこが水商売という仕事の最大の「セールスポイント」だと思っている。

どうしたら、この仕事を好きになってもらえるのか?
僕と同じような思いになってくれるのか?

たった一度の人生の貴重な時間を賭けて、オナベバーVenus・レズビアンバーWを働く場所として選んで今一緒に居てくれるスタッフ達。その子たちが何を求めているのか?

ここで働いて良かった!そう思って欲しいからこそ悩む。
ただどれも「努力」があっての話。
いるだけで評価されることはない。

努力は必ずは報われない。ただ、努力しないと報われるチャンスは絶対に来ない。

人を集めること。
その子たちをどう売っていくか?
自分を売るんじゃない。
導いてあげなくてはいけない年齢になった今、下の子たちにどう伝えていくか?
僕も努力しなければ結果は出ない。

何年商売をしても、やはりやらないといけないことは変わらないと実感している。

やりたくないことがやらなくてはいけないこと。

18年目を迎える今年も折れそうになる心との闘いの日々になるだろう。ただ簡単に倒れてたまるか。鼓舞して気力を高め、目の前の問題に対して出来る最大の努力をしていこうと思う。

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