なぜ経営者は利益を追うのか？

僕はLGBT。女から男に戸籍を変えて生きているFTMトランスジェンダー。
仕事は同じ性別違和の子を主に雇用して地元名古屋でBAR　Venus（ビーナス）を経営して15年目を迎えた。店の経営は・・・

綺麗事だけではいられない

この一言に尽きる。

僕がFTMトランスジェンダー当事者であること。自分が悩んだ経験からこの店を開業した。

「自分らしく生きる場所」というキャッチコピーのもと、Openして15年、常時求人を募集してきた。

このキャッチコピーを掲げた以上、
店の浮き沈み、世の中の浮き沈みを理由に「受け入れる」ことを辞めたくない！という気持ちからのこと。

僕の信念と言えばカッコ良いが、意地に近いものであり、これはこれからも変えるつもりはない。

実際に雇用しすぎて、カウンターが身動きとれず...バケツリレーのようになることもしばしばだが、そこはご愛嬌（笑）

このようにして、Venusには実際に多くの性別違和を抱えた仲間達が集まってくる。

ただ、当事者同士だから
「辛い気持ちをわかってくれる」「悩みをわかってくれる！」と救いに近いような気持ちで面接を受けにくる子も多い。

同じ身体、心、悩みを持った者同士、もちろん分かり合えることもある。

しかし、忘れてほしくないのは僕の店Venus（ビーナス）は職場であるということ。

ボランティアでも学校でもない

お客様からお金を頂いて収入を得る。だからこそ、労働力にならない子は同じ性別違和を抱えていたとしても、雇用し続けることは出来ない。
この15年の中で沢山のFTM、性別違和を抱えた子が店を去った。僕を恨んでいる人間も多いだろう。

利益主義でついていけないと、スタッフに言われたことがある。

そんな時、僕は真顔でこう返す。

「利益主義で何が悪い？」

この店Venusを成立させることが僕の最大任務である。

利益が無ければ還元出来ない。

この店を存続することすら出来なくなる。

それは、僕も含め、集まって来てくれたスタッフ達の「自分らしく居られる」この場所を無くすことになる。
そうなってしまったら、この先誰も受け入れることは出来ない。

僕の掲げた「自分らしく生きる場所」はどうなる？

綺麗事では自分も人も守れない。

当事者だからわかってくれる。寄り添ってくれる。

僕はボランティアではない。

でも中には、お酒が飲めない。夜働くことが出来ない。未成年などの理由でこの場所に来られない子もいる。

来てみたとしても、環境的な問題、性格的な問題で、夜の世界ではどうしても実力を発揮できず、戦力となれず去って行く子も多い。
そんな時、僕も夜の店Venus一択では「自分らしく生きる場所」の受け皿の限界を感じた。

そんな中で縁あって、昨年LGBT社会人交流会「BRUSH UP」を立ち上げた。

あくまでお互いを磨こう！もっと高め合おう！というテーマの会だけど、ここなら「報酬を頂く」仕事ではないから、それぞれが抱える弱さや悩みにも向き合うことが出来る。

この活動を経て、新規に出会ったLGBTQ当事者の方も多いが、中には昔辞めたVenusのスタッフ達と再会し、夜の世界ではお互いに見つけることが出来なかった信頼関係を見つけることが出来て関係が変わった子も多い。

人間は同じなのに場所が変わるだけでこんなにも関係性が変わるのかと驚く。

僕の仕事での立場。考えは同じ立場にならないと理解されることはない。
僕はあくまでも商売としてVenusを経営している。

自分の抱えた性同一性障害を売りにすることで収入を得て自分らしく生きれている。

マイノリティな僕たちだからこそ余計に、この社会で自立することが、家族や彼女。心配かけた人へ安心感を与えられる大切なことだと思っている。

だからこそ収入を得る＝お客様からお金を頂く「仕事」に対して求めることは多い。

厳しいと感じているスタッフの気持ちもわかる。

ただそれは、LGBTだからFTMだからということではない。
オナベバーだから特殊でもない。

どんな仕事でも同じ。

経営者にとって、スタッフのセクシャリティも学歴も精神的弱さもプライドも環境も何も関係ない。
求めているものはただひとつ「労働力」である。

そして居場所は与えられるものではなく、
自分で作るモノ。

その会社、店にとって必要な労働力、信頼される人材にならなくてはいけない。

逆にそれさえあれば、どこだって自分らしく生きる場所となる！

僕は誰に批判を受けようが、自分の店を守っていく為に利益を得る仕事をする。

この信念は曲げない。

※2022.6.11（土）LGBT社会人交流会「BRUSH UP」第9回無事終了。沢山のご参加ありがとうございました！

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