竹内力になれなかった僕。
僕はLGBTトランスジェンダー。女から男に性別を変えて生きている。
1980年生まれ41歳。
仕事は同じ性別違和。特にFTMの子を主に雇用した飲食店を地元名古屋で経営して15年になる。
憧れた男像に振り回されて失くした自分らしさ
ずっと自分の中にある本当の気持ちに蓋をしてきたせいか、23歳の時、両親にFTMであることをカミングアウトしてから我慢していた「男」になりたい!気持ちが一気にあふれ出した。
治療もすぐにしたい!当時GID専門の科が出来たばかりの大阪医大に通った。
顔が女っぽいことがコンプレックスだった僕。
性格も甘やかされて育った僕は性格も女っぽく男らしさとは程遠かった。
そのくせ、憧れだけは強く。
逆に言えば、女であることに甘えて、男の責任。なんていうものを知らずにいたから、今考えるとただ男というもののいいとこどりだけしたいハッピー野郎だが、その時の僕には知る由もなく。
中性的なジャニーズに寄せる事もあったが、僕がホントになりたかった男像は好きなVシネマ 「ミナミの帝王」で見た
竹内力だった。
男=漢
弱きものを守り、博学。腕っぷしも強い。女にモテて、舎弟には優しい。カッコイイベンツに乗って、颯爽と現れて悪者をやっつける。萬田銀次郎あの強面の威圧的な風貌が僕の理想とする「男像」だった。
「僕も男なんだからそうなりたい!」
僕は形から入るタイプなので、竹内力がプロデュースしたブランド
RIKI TAKEUCHI のスーツを買った。無論、僕のサイズはなく一番小さいサイズを買ったけどブカブカ。
それを着て名古屋の繁華街、僕の仕事場の錦3の街を歩いた。
自分らしくて良い。
女っぽいのがコンプレックスでそれを打ち消したい一心で自分を大きく見せたかった。無理してでも男に見られたい。「なめられたくない」そんな気持ちもあってめちゃくちゃ無理をしていた。体に合わないブカブカのスーツにブカブカの靴。シャツはボタンを胸まで開けた。歩き方もガニ股で。そんな僕の姿は滑稽だっただろう。
自分らしくていい。それでいいと気付くまでに時間がかかった。
竹内力は竹内力だからカッコイイ。
僕は竹内力じゃない。女っぽくても。荒々しさがなくっても。それが僕なんだ。
それを教えてくれたのは、お客様だった。
僕の姿を見て、
「自分の体に合うスーツを着なさい。それが一番似合う。」と
それでわかった。身の丈。そして自分らしさ。
男の中にも様々なタイプがある。一通りじゃないんだ。
当たり前のことなのに、僕は「男」という存在に憧れが強すぎて「男」というものを知らなかった。男ってこういうものなんだろう。という固定概念の塊だった。
この一件で自分らしくて良い事を学んだ。
僕の好きな色はピンクだし、足のサイズは23.5。荒っぽい言葉遣いも出来ない。
でも心は男。男の責任は目下勉強中。
それが僕の自分らしさ。
※2021.12.11(土)LGBT社会人交流会「BRUSH UP」第4回無事終了。沢山のご参加ありがとうございました!