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そもそも「本が読める」とはどういうことなのか。

こんにちは。Little Readers Clubという屋号で活動しているユウキです。

英語圏で広く実施される「ガイデッド・リーディング(Guided Reading)」という、絵本を使った英語のリーディングの指導法を日本での教育に取り入れるべく活動を行っています。

本日は、「そもそも本が読めるってどういうことなのか」という点について、お話したいと思います。重要なのは、「文字が読める」ではないということです。本を読めるということは、単に文字を音読できることではない。文章を理解し、その意味を引き出して把握することです。

今回は、リーディングの構造を説明する2つのモデル、「Simple View of Reading」と「Reading Rope」について解説し、効果的なリーディング指導法であるガイデッド・リーディングの重要性についてお話しします。


Simple View of Reading

(https://kidsreadnow.org/for-the-love-of-reading-a-4-part-series-with-ideas-to-help-develop-strong-literacy-skills-1/)

Simple View of Readingは、リーディングを2つの主要な要素に分解して考える理論です(こちらの投稿でも記載しました)。

  1. 文字認知(Word Recognition):フォニックスの知識から、文字と音の関係を理解し、文字列を音声化する能力。デコーディング(Decoding)と表現していることもあります。

  2. 言語理解(Language Comprehension):音声化された言葉の意味を理解する能力

上記モデルによれば、読解力=文字認知×言語理解で表せるとのことです。即ち、文字認知も言語理解も同じように鍛えていくことで、読解力を2倍にも3倍にもどんどん伸ばすことができるということです。

一方で、重要な点として、この式が掛け算になっていることために、どちらも欠けることができないという点が挙げられます。つまり、文字認知か言語理解のどちらかが0(全くできない状態)であれば、読解が全くできないということです。

Reading Rope

(出展:https://www.landmarkoutreach.org/strategies/scarboroughs-reading-rope/)

類似の概念に、Hollis Scarborough氏が提唱したReading Ropeというモデルがあります。こちらは、読解の要素をより詳細に分析するものです。このモデルでは、読解を複数の要素が絡み合った「ロープ」として表現しています。

文字認知(Word Recognition)のストランド(上の図における青・緑のロープ):

  1. 音韻認識:
    言葉の音の構造を理解し、操作する能力です。
    単語を音素に分解したり、音素を組み合わせて単語を作ったりする能力を含みます。

  2. デコーディング:
    文字と音の対応関係を理解し、文字列を音声化する能力です。
    フォニックスの知識を活用して未知の単語を読む際に重要です。

  3. 単語認識:
    単語を素早く、正確に認識する能力です。
    繰り返し練習することで、単語を自動的に認識できるようになります。(サイトワードやハートワードで鍛えるのがこちらです)

言語理解(Language Comprehension)のストランド(上の図におけるオレンジ・赤のロープ):

  1. 背景知識:
    既に持っている一般的な知識や特定分野の知識を指します。
    新しい情報を理解し、文脈を把握するのに役立ちます。

  2. 語彙:
    広範な単語とその意味を知っていることです。
    豊富な語彙力は、文章の理解を深めます。

  3. 言語構造:
    文法規則や文章の構造に関する知識です。
    文や段落がどのように組み立てられているかを構造的に理解する力です。

  4. 読解スキル:
    推論、要約、メタ認知などの高次の思考スキルを含みます。
    テキストの深い理解と分析に不可欠です。

  5. リテラシーに関する知識:
    一般的な文学に関する知識です。例えば英文を左→右に読むこと、単語と単語にはスペースがあること、ジャンルに関する知識等を含みます。

これらのストランドが絡み合って、流暢なリーディング(Skilled Reading)という強固なロープを形成します。

フォニックスの位置づけ

フォニックスの重要性が最近急速に取りざたされています。
そもそもフォニックスなんて言葉すら聞いたことのなかった時代に英語を勉強した身としては、とても良いことだと思います。特に音を重要視する英語の学習において、不可欠なスキルです。

しかし、ことリーディングにおいては、上記2モデルが示すように、リーディングを構成する多くのスキルの1つに過ぎません。真に読解できるようになるには、言語理解のストランドも同様に強化する必要があります。
そこで、特にガイデッド・リーディングのようなリーディングの指導が重要になります。

ガイデッド・リーディングの重要性

ガイデッド・リーディングは、Reading Ropeモデルの多くのストランドを同時に強化できる効果的な指導法です。

  1. 背景知識の活性化: 読む前に、本のテーマに関連する子どもたちの経験や知識を引き出します。これにより、新しい情報を既存の知識と結びつけ、より興味を持って本の世界に入りやすくなります。

  2. 語彙の拡張: 本文中の新しい単語や重要な概念を事前に導入し、理解を深めます。

  3. 言語構造の理解: 文章の構造や文法的特徴に注目させ、文法に関する理解を強化します。

  4. 読解スキルの育成: 予測、質問、要約などの読解戦略を明示的に教え、実践させます。これにより、文章をより深く理解する能力を養います(※私はここが一番大事なポイントと思っています)。

  5. 流暢性の向上: 繰り返し読むことで、単語認識の自動化と読みの流暢性を高めます。

ガイデッド・リーディングの特徴は、これらのスキルを個々の子どもの発達段階に合わせて指導できることです。小グループでの活動を通じて、子どもたちは互いの意見を聞き、議論することで、より深い理解に到達します。また、ガイデッド・リーディングにフォニックスやデコーディングの訓練を組み合わせることで、文字と音の関係を学びながら、同時に内容理解を深めていきます。そうすることで、バランスの取れたリーディングスキルの発達を促進します。

まとめ

リーディングは複雑なプロセスであり、多くのスキルが絡み合って成り立っています。リーディング指導には、これらの多様なスキルを総合的に育成することが求められます。ガイデッド・リーディングのような指導により、子どもたち一人ひとりに合わせた指導を通じて、バランスの取れたリーディングスキルの発達を促進する必要があります。

とはいっても、リーディングの指導に「これ」という王道はないでしょう。1冊の本を1,000人が読めば、1,000通りの感じ方があると思います。重要なのは、目の前の子どもたち一人ひとりと相対し、彼らのリーディングを手助けし、英語の学習が意欲的にできるように、自分自身のリーディングスキルも研鑽していくことだと思っています。

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