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セミリンガルとは:言語能力の狭間で揺れる子どもたち

セミリンガルという言葉を聞いたことがありますか?
複数の言語環境で育つ子どもたちの中で、時に起こりうる言語発達の状態を指します。

学術的な根拠は多くなく、また差別的だとして、ダブルリミテッドやリミテッド・バイリンガル等と呼ばれることもあります。

実は我が家は娘がこの状態に陥る懸念があり、、、
今回は、セミリンガルについて実際の経験を交えながら、その特徴と対策について考えていきたいと思います。


セミリンガルの定義と特徴

セミリンガル(または、ダブルリミテッド)とは、複数の言語に触れて育つ中で、どの言語も年齢相応のレベルに達していない状態を指します。
主な特徴は以下の通り。

複数の言語で日常会話はできるが、その言語での高度な理解・表現が困難
 ▷ 抽象的な概念の言語化が困難
    ▷ 学校の授業内容を理解することが困難

これらの特徴は、子どもの学習や社会性の発達に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。

我が家の経験:英国滞在と言語発達の懸念

私の子どもは日本で生まれましたが、3歳半から6歳半までの3年間を英国で過ごしました。
日本語が大きく発達するタイミングでの渡英となったことから、日本語の言語発達に大きな影響を与えました。

3歳半時点では日本語ネイティブとして年齢通りの発達をしていましたが(むしろ早い方だったかも)、、
渡英して3か月で、家庭での会話は日本語だったにも拘らず日本語に反応しなくなり、英語まがい(英語だろうとは思われるが何を言っているのかは良くわからない)に移行。1年後には完全な英語話者となりました。

※父親がスペイン語母語で家庭で日本語を話さないため、両親ともに日本人というご家庭とは状況が違うのかもしれません。

英語能力の現状

現在、子どもの英語能力は7歳児程度(年齢と同等)と評価しています。
思考力も、年齢通りに着実に発達していますが、英語での教育を受けていないため、言語能力の伸びは停滞しています。

実際の会話を聞いていると、複雑な思考はできているものの、それを高度な英語で表現することが難しいようです。
英語の教育機関に戻ったり、意識してインプット・アウトプットの機会を与えてスキル強化しないと、現状以上の英語力の向上は難しいと考えています。

日本語能力の課題

一方、日本語能力については測定が難しい状況です。
漢字の理解は小学校で習っているため、ある程度できていますが、文法的な間違いが多く見られます。
例えば、外国人にありがちな、「やさしいの人」というようなネイティブではやらないだろうなというような誤りや、文章で発言したときのイントネーションの違いなどがあります。

加えて、高度な日本語での会話や理解に課題があります。
例えば、簡単な道順の説明(「ここで右へ曲がって、ちょっと進んで、次を左に曲がる」)は可能ですが、より詳細な説明(「50m先に右手に青い屋根の家があるので、その角を右へ曲がり、その後30mほど進んだ先に今度は赤い屋根の家があるので、そこを左に曲がる」)を行うことは困難です。

この状況は、英語学習者の方々にとっては身近に感じられるかもしれません。自分の第二言語での表現力の限界を思い出してみていただけるとわかりやすいかと思います。
外国人に道を聞かれたら、身振り手振りで伝えることはできる。しかし、電話で説明せよと言われると、口頭ですべてを説明しないといけなくなるので、言語能力に限界があると難しいですよね。

また、我が家の子どもはいま教室で昆虫を飼っており、生死などの倫理的話をしているようですが、議論にさっぱりついていけていないようです・・・。

セミリンガルの懸念は一時的

一方、現在、子どもは日本の教育機関に通っており、日本語環境で学んでいます。このため、セミリンガルの懸念は一時的なものだと考えています。

上記のような理解の限界が、今後の日本での教育を通じて全く改善しないとは考えにくいです。言語能力の発達は、環境と時間に大きく依存します。適切な言語環境と教育支援があれば、子どもの言語能力は着実に向上していくはずです。

我が家の場合は、主体言語を日本語に切り替えていき、英語はできれば同年齢を目指して維持していく(無理のない範囲で)、ということになりそう。

おうち英語とセミリンガルの懸念

おうち英語、つまり家庭内で意識的に英語を使用する取り組みは、子どもの言語能力を豊かにする素晴らしい方法です。
これによってセミリンガルになるリスクを懸念される方がいらっしゃいますが、日本語環境が主体のおうち英語でセミリンガルになるリスクは、極めて低いと思っています。
おうち英語を実践していても、子どもは学校や社会で主に日本語に触れているからです。

もしインターに行かれているという方は、英語が完全な主体になっていないにも関わらず、ご家庭での日本語での会話が少ないなどの状況になれば、ちょっと心配することが出てくるかもしれません。

セミリンガル対策

セミリンガルの可能性がある場合、以下のような対策が効果的です。

  1. 主体言語での言語環境の提供:主体言語でのインプット・アウトプットの機会を増やす。
    インターに通っていて英語を母語としたい場合は、英語を主体言語として伸ばすと振り切った方がいいと思います。
    片方の言語は思い切ってリミテッドの状況にする。主体言語が伸びた後にいくらでも対応できますので。

  2. 継続的な評価と支援:子どもの言語発達や認知能力の発達が年齢に即しているかどうかを定期的に評価し、、必要な支援を行う

言語は思考や学習の基盤となるものです。子どもの言語能力を育てることは、その後の人生における様々な可能性を広げることにつながります。

まとめると、、

セミリンガルの懸念は、多言語環境で育つ子どもたちにとって珍しいものではありません。しかし、適切な環境とサポートがあれば、一時的な状態に過ぎません。

多言語環境で育つことは、グローバル社会を生きる上で大きな強みとなります。セミリンガルの懸念に過度にとらわれることなく、子どもたちの言語能力と可能性を信じ、サポートしていくことが重要だと思っています。

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