部下のモチベーションが上がらない…吉本人気NO.1講師が教える「よいコーチング術」とは
放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
「部下のモチベーションを上げたいです。うまくコーチするコツがあれば教えてください」という依頼をいただきました。
これは、本コラムを読んでくださっている多くのリーダーも抱えているお悩みではないでしょうか?
そこで今回は、僕が1万人の芸人の卵に実践してきた、「若手のモチベーションの上げかた」をシェアしてみたいと思います。
そもそもリーダー側のモチベは上がっていますか?
まず、部下のモチベーションを上げる「よいコーチング」とはどういったものでしょう?
嫌われ役に徹する? 私見は捨ててホメて伸ばす?
いえいえ、どちらも違います。
僕に言わせれば、「よいコーチング」とは“相手のモチベを上げながら、自分のモチベも上がっていく手法”のことです。
いくら部下の「やりがい」や「ドキドキ」を引き出そうと思っていても、リーダー自身が指導を通して「やりがい」や「ドキドキ」を見出せていないとうまくいきません。
かつての僕も、若手のやる気をうまく引き出せない講師でしたが、オズワルド、コットン、EXIT兼近くんなど、「未来のスター芸人の、人生初のネタを観ることができる仕事なんだ!」と気づき、やりがいやドキドキ感をもって現場に行くと、どんどん生徒らとの関係が良好になっていった経験があります。
みなさんのポジションも、「新世代の仕事観・人生観を知れるチャンス」といった役得や、「デジタルネイティブ世代からSNS戦略を学べる」といった“教育の外にあるモチベの源泉”が必ずあるはずです。
まずは、私たちリーダー側のモチベを上げることを心がけていきましょう。
モチベを上げるキーは「内鍵」か?「外鍵」か?
さて、部下のモチベを上げる手法は大きく2種類です。私たちリーダーが「外側から扉を開ける」か、彼ら自身が「内側から扉を開ける」かです。
彼らが内鍵をかけている場合。
いろいろ手を尽くしたくなるでしょうが、いくら外からノックしても、ただの「うるさい上司」になるだけ。
“モチベを上げるキッカケは彼らの内側にある”ということを知り、辛抱強く「その時」を待ってみることも必要です。
ちなみにM-1王者・令和ロマンや、最近めきめき知名度を上げているナイチンゲールダンスも、最初は内鍵をかけているタイプでした。
なので僕は、いつか外に出てくる「その日」のために、せっせと周辺環境を整備してみました。
例えば、すでにモチベを上げている他の生徒たちと、参加したくなる授業や、仲間に入ってみたくなる関係性を築いていったのです。
半年後、彼らは自発的に内鍵をあけ、授業に参加し、卒業する頃には、頼れる同期のリーダーになってくれました。
相手が内鍵の場合は、焦らず、相手を否定せず、私たちは“いつか飛び立ってもらう滑走路をせっせと整備する”。そんな感覚が大切なんです。
外鍵タイプのキーは「オリジナルなインセンティブ」
外鍵タイプの相手にはインセンティブ。いわば「報酬」がモチベを上げていく動機になります。
給与アップ、昇進や出世などもそれに当たりますが、リーダーにはそこまでの権限はないので、適切な「評価」や言葉によって「承認欲求」を満たしていく必要があります。
さらに僕は、「オリジナルなインセンティブ」を心がけてコーチしています。これは“自分ならではの報酬”を意味し、お金はかかりません。
例えば、「あなたの人脈で同郷の先輩を紹介する」や、「悩みやストレスを緩和する映画や本を教える」など、自分のキャリアや経験を活かして様々なバリエーションが付与できます。
芸人学校では、意欲はあっても、良き相方とコンビを組めずにいたり、スランプでネタが書けなくなったりして、孤立し、辞めていく生徒が一定数います。
そこで僕は、学校側にお願いして、コンビを組んでいなくてもOK、ネタを見せなくてもOKの「キャラのいいヤツだけ集めて騒ぐ授業」というのをやってみました。
授業を増やすのは負担になりましたが、そこに参加し、自信をつけていった女性徒が、現在の「ぼる塾」なので、自己流のインセンティブを付与してよかったなと思っています。
すぐにうまくできなくてもいいんです。コーチングとは長い旅ですから。焦らず、じっくり、若手を励まし、自尊感情をもたらしていきましょう。
桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に