早稲田アカデミーの講師について/元早稲アカ校長から見た客観的な事実
こんにちは。
塾業界は夏期講習の集客真っ只中の時期ですかね。業界を離れて6年くらい経つのですが、なんとなくこの時期はこんなことをしていたなぁというのは、毎年思い起こされます。やっぱり僕早稲アカ好きなんですよね。
ということで、今日は早稲アカの講師について書きたいと思います。
1.講師の採用について
当時は各校舎や複数校舎が合同で採用をしていました。土曜日の夜とかに希望者が集まって来て説明会と筆記試験、模擬授業、面接をやっていました。ちなみに良く聞かれるのが、講師にアルバイトはいるんですか?っていう質問。
これはGoogleなんかで「早稲アカ アルバイト」とか検索すれば、当然のように採用サイトが出て来ますので、アルバイトの講師はいるわけです。でも当時はなぜか答え難かったですね。なんとなくアルバイト講師がいる=質が悪いみたいなイメージを自分でも持っていたのかもしれません。でもこれは全くの事実誤認です。
ちなみに講師は、専任講師と時間講師という分け方をしていまして、後者の時間講師がアルバイトという雇用形態です。専任講師が社員ですね。
で、アルバイトだと「大学生」がメインになるのですが、他にもいろんな方がいました。本業「塾講師」みたいな人もいれば、学校の非常勤講師やりながらの人もいましたし、大学院生もいましたね。ちなみに、学生でも本当にこの仕事を通じて成長し、自分の糧にしていった人もたくさん見て来ました。そういう意味では、塾講師の仕事は大学生時代にスキル習得という観点でもとても有益なものだと思います。(※この例は3で書きます)
それぞれがどんな人かは、また色んな話題があるのですが、今日は時間講師の採用について道場どんな思いで採用していたのかと、どんな基準で採用していたのかを書きたいと思います。(特有の秘匿事項は除きます)
2.アルバイト講師に向けた採用時の説明内容
まず説明会ですが、言葉を選ばずにわかりやすくいうと「めちゃくちゃ脅かす」のです。大体時給2300円〜という条件に惹かれてやってくる人がほとんどなので、その基準で見ている人をフィルターにかけます。
実際やってみるとわかりますが、塾講師の仕事は授業以外にも生徒対応や保護者対応、その他資料作成など業務が多岐に渡ります。この時給というのは授業時間内に発生する賃金で、それ以外の時間は事務級のようなものが設定されていました。
もちろん授業の準備(予習)には賃金は発生しません。なので、素人が1つの授業を本気でやろうとすると、準備にめちゃくちゃ時間かかります。また当然ですがいきなり授業を担当できる訳ではありません。ちゃんと研修をして、一定のレベルの模擬授業ができるようになって始めて教壇に立たせます。しかも最初は定期的なクラスじゃなくて、単発の補修(例えば定期テスト対策とか)や解説授業というシンプルに問題の解説だけをすればいい授業だけ持つのです。
そうやって始めて1つのクラスを担当できるのです。でも、1つのクラスを担当するだけなら、週に1回、例えば2時間の授業だとして、4600円。事務時給入れ約5800円くらいですかね。月に4回なので、23000円くらい。時給1000円のバイトを23時間やるのと同じくらいの額です。でも、準備や対応など、かかる時間はたぶん倍以上でしょうね。
ほとんどの人が勘違いしているのは、塾講師になった瞬間に授業を担当できて、すぐ時給2000円以上稼げるぜ!的な考えです。
なので「普通に時間で稼ぎたいなら他をあたって下さい、時間かかるし、考えれば考えるほどキリがない、だから教育について自分なりのこだわりがあって、時間を没頭して準備して、生徒の成績向上に本気で取り組める人だけ次のステップに進んでください、もし考えていた仕事と違うなと思ったら説明会のあと退室してOKです」
みたいな説明をしていましたね。これで多い時は半分以上説明会の後に退室します。正直2〜3名しか応募して来ていないのに、全員帰ったこともありました。でもそのくらいの本気度じゃないと、塾講師は務まらないです。
で、それでもあえて残る人で、面接とかしても途中で「やっぱり自分には無理です」と辞退するケースも結構ありました。そういう意味では、結構狭き門です。別に採用基準が厳しいんじゃなくて、本当にできるの?やれるの?という問いに対しての覚悟の有無の問題です。覚悟さえあれば、スキルがなくてもやれますし、活躍できます。まぁバイトするのに覚悟持ってくる人なんで、ほとんどいないんでしょうけどね。
3.あえて塾講師を選ぶ理由/これから目指す人へ
塾講師はよく、世間ではブラックバイトとか言われます。実際、時間給的な視点で考えている人にとってはブラックでしょう。後、自分の大学の試験があろうが生徒の受験には関係ないですよね。その仕事を選択した以上、同じような時期に試験があるのは初めからわかっているはず。試験近いんで休みますとかいう講師に出会った日には、はらわた煮えくりかえる思いでしたw
ただ、そこで得られるスキルは普通のアルバイトの領域を超えています。他にもいろんなスキルを身につけられるバイトあると思いますけど、大勢の人の前でのプレゼン力とか、仕事への熱量の注ぎ方、責任ある仕事を全うするスタンスとか、ビジネススキルに直結するスキルがたくさん身につく仕事だと思います。サークルの代表やってましたとかいう、横や下に対する集団のトップよりも、年上で経験も自分以上の相手の子どもの受験指導で成果あげました、って方がビジネス市場としては価値があると思います。
僕の担当していた校舎で、2年間一緒に働いてくれた大学生で印象的な子が一人います、F君というのですが、彼はもともと僕が採用したスタッフではありませんでした.他の校舎で採用され、ちょうど人材不足の私の校舎に移籍するという形で一緒に仕事をすることになりました。模擬授業をやってもらっても正直下手くそで、板書も汚いし、うーん、どうしよ汗というのが第一印象でした。
そんな彼でしたが、中学受験の算数のクラスで才能が開花しました。自身も中学受験経験者で、「失敗した」という経験の持ち主でした。本当にいつの間にか、ある日突然、授業や生徒対応の質と熱量が変わりました。また保護者へのまめな連絡も飛び抜けて素晴らしい対応をしてくれました。そのクラスの保護者も若い彼を信頼し、最後の受験まで責任を持って送り出してくれました。そんな彼は就職活動で、メガバンク内定と国家一種に合格、その時期に彼が言っていたのが、「早稲アカでの経験を本気で熱く語れたのが成功要因です」ということ。
彼は塾講師経験をキャリアに生かし、自分で未来を切り開いたのです。
どの世界でもそうですが、あえて苦しい思いをしながら本気の熱量で乗り越えていく経験は、成功する人に共通する体験だと思います。期間の長さというより、むしろ短くてもいいから濃密な時間を過ごすことが大切なような気がします。そういう意味で、早稲田アカデミーの講師は、お金をもらいながら圧倒的に普通の大学生とは違うスキルを身につけられるというのが、凄いところだと思います。
ということで、今回は早稲田アカデミーの講師採用について書きました。これは当時のことなので、今はどうでしょう。もう少し柔らかい表現で、ハードルを下げているかもしれません。ブラックバイト扱いされているので、塾講師になりたがる学生も減っているんじゃないかと思います。一方で、その分研修や仕組みが充実して、普通の学生でも合格させられる授業が運営できるみたいになっているかもしれません。でも、熱い早稲アカのことでしょうから、商品の本質である「講師」には、こだわり続けているのだと思います。
また別の視点で続きを書きたいと思います。
それでは!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?