『FACTFULLNESS』とマーケティング
真面目な読書感想文です。
Hans Rosling他作 『FACTFULLNESS』 2018
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魂を感じた!nonfictionの本で初めて感動した。
最後でHansがこの本をガンと戦いながら書き、原稿の完成と共に亡くなったということを知ったけど、読んでる時に感じた魂はそういうことだったのかと思った。
「世界は日々進歩している。人類の努力を決して無駄と思ってはいけない」という希望と励ましがひしひしと伝わってきた。世界のために残してくれたんだなと。
一つ言いたいのが、ここで紹介されている考え方もなのだけど、挟み込まれているHansの人生エピソードがすごすぎる。まさに世界中を飛び回る「冒険」という感じで、それも読んでて面白く世界が広がった。
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以降本題、中身とビジネス(とりわけ本業のマーケティング)とを絡めた考察です。
この本では「10のinstinct」によって人が間違ったネガティブな形で世界を捉えてしまっていることを指摘しています。仕事柄日々情報とそれがどうニュースになるかについて向き合っているのですが、一つの情報を取った時に世の中がそれをどう捉えるかというのを「10のinstinct」として具体化してくれたことは複雑で入り組んだパズルが整理された感覚でした。
情報というのは水の流れみたいに一度ある方向に流れ始めると、ドバッとそこに他の色んなものが集まっていくように思います。各章でその原理が「人間の本能」の限りなく本質的な部分で、誰しもが共感できる事例と共に説明されていると感じました。
下記、それぞれのinstinctについてマーケティングの分野の中でどう活かせるかを自分なりに考えました。
1 The Gap Instinct = 物事を2極化して考えがち
→調査の分析やターゲットを考える際、二つのグループでのgapを抽出するのはよくある手法です(男女とか、若者とそれ以外とか)。でも実際、majorityはその2つのグループの間にあるのではないか?切り分けると考えやすいけど、2つで均等にボリュームは分けられているか?も確認しないといけないですね。
2 The Negativity Insitinct = ポジティブとニュートラルはニュースにならない
→一つの炎上やミスによって本質的な価値が何も伝わらなくなってしまう、というのは言えると思います。それを当事者側としては冷静に受け止め、例え事実と異なることだとしても軽く考えず、対処を怠ればあっという間に情報は広がってしまうことを自覚しなければいけないですね。
3 The Straight Line Instinct = 変化は直線的とは限らない
→「伸びてる」「減ってる」と一言で片付けてはいけない。そしてただ「伸ばす」ということを最終着地点にしてしまうこともsustainableではないということなのかもしれません。
4 The Fear Instinct = 恐怖を人は冷静に測ることができない
→消費財市場において恐怖マーケティングはど定番中のど定番ですよね。けれど本質的な価値に根ざした広報をするのならば、「恐怖」ではなく「リスク(danger x exposure)」を伝えなければいけません。
5 The Size Instinct = 全体のうちのどれくらいか?を見失いがち
→この章の中で紹介されている80/20という考え方は、全体のうち80パーセントを構成するものが何かを把握すればいい、というものです。細かいことに捉われて時間や労力を浪費しないために全体像を見た上で対処すべき課題を見つけることが重要そうです。
6 The Generalization Instinct = 一つのことと同じ基準で別のことを評価しがち
→ある事例でうまくいったからといって、それを別の事例にあてはめたところで上手くいかないというのはよくある話ですよね。全米が泣いたからと言って日本は泣かない。
7 The Destiny Instinct = 「あるべき」論にとらわれる老害
→「〇〇はテレビにはならない」「〇〇だけでは効果がない」など業界の経験値によるルールってありますよね。その叡智に頼ることも大切ですが、いつの間にかそのルールは社内や身内だけのものになり、世の中の新しい規範からは置いてかれているかもしれません。
8 The Single Perspective Instinct = 専門職は専門外でも出しゃばりがち
→一つのメソッドを手に入れるとそれを一生使いまわして楽したい気持ちになるますよね。万能な解決策というものは存在せず、課題は常に複雑で多面的であるということを忘れないようにしたいです。
9 The Blame Instinct = 人は常に「原因」を探し求める
→「なぜ?」はビジネスにおいて必ず聞かれることですし、それを整理するのが仕事だと思います。そしてその理由は限定的であればあるほど、分析として評価されがちです。むしろ一言で表現できてしまう「なぜ」の方が考察としては不十分ということかもしれません。
10 The Urgency Instinct = 今すぐに!判断をしてしまうと誤る
→「今すぐに手を打たなくては手遅れになる!」というシチュエーションってもうすでに手遅れな気がしますよね。「手を打たなくては」と言っている時点で何をすればいいかが決まっていないわけなので、そういう場合判断するための情報収集と条件の整理が必要です。
以上、私なりの解釈でした。
かなり本質的な話をしている本なので、拡張の仕方は無限にあると思います。面白かった!