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『Mark My Words』とガルシアへの手紙が示す誠実さ

G. Kingsley Ward『Mark My Words: Letters of a Businessman to his Son』(ビジネスマンの父より息子への30通の手紙)の読書感想文です。

King Wardが実際に息子に向けて書いた手紙をそのまま書籍化したものなので、多少読みづらかったり全体の構成としてつかみづらかったりするところはあるものの、その分作者の父親としての愛情や、ユーモア、謙虚さを感じとることができました。第三者ですが、勝手に温かい気持ちになり、励まされているような感じさえしました。

1985年に書かれた本なので、教育やお金についてなど若干時代に思いを馳せなければいけない部分もあれど、ビジネスにおけるコミュニケーションや信頼関係の築き方、目的を持つことの大切さなど視座に富んだ言葉がたくさん書かれています。

「ガルシアへの手紙」を読んだ違和感

一部、一度読んだだけでは理解できない箇所がありました。それは、作者本人が書いた文章ではなく、"The Value of Reading"の章で名著として紹介しているElbert Hubbardによる'A Message to Garcia'の内容です。

これはキューバのどこかの山にいるガルシア将軍に対して手紙を届けよと命じられたローワン中尉が、ガルシア将軍の所在や手紙の内容、その重要性などについて何も質問をすることなく、ただ届けた、という話です。Hubbardはこのローワンを賞賛し、世の中には手紙を届けることのできない人がいかに多く、被雇用者や不平ばかりを言うが、雇用主はいつまでもローワンのような人を見つけることができず苦悩していると述べています。

私はこれを読んで最初「何も疑問を持つことなく言われたことを実行することが従業員には求められている、ということだろうか?」と思い何度か読み返しました。

仕事をする上で、自分は何事も理解できるまで細かく確認し指示の意図を把握してから行動をすることが合理的で正しいと思っていたからです。手紙の内容も知らずにそれを届けるなんてもってのほかだ!という感じです。

求められているのは手紙を届けることができる人物

その後、自分が仕事をする上でもこのことを考えるようにしてみました。

何かタスクを与えられた時、上司から仕事を振られた時、細かくその内容や意図について聞き返す前に自分の頭の中で繰り返したのは文章の最後にあった、

he is needed and needed badly-the man who can "Carry a Message to Garcia."

という言葉です。

すると、今まで自分の仕事に対してどこか「指示待ち」「受け身」であったという感覚に気づかされ、相手の指示を確認しなくとも、細かい方法論やアウトプットの内容など自分自身で考えられることがいかに多いかについてに気づきました。

当初この「ガルシアへの手紙」はただ命令に従うだけの指示待ち人間が社会には求められているという意味だと思っていました。

しかし、いざ実践してみるとそれは全く逆でした。ローワンがガルシアに手紙を届けることができたのはただ盲信的に命令に従ったのではなく、自発性を持って問題の解決にあたり、指示を遂行したからでした。その能力と誠実さが銅像に値するのです。

ビジネス界に求められる「誠実さ」

改めて本書を読み返すとKing Ward自身もその答えについて言及していました。

Owning integrity(誠実さ) is owning a way of life that is strong in moral principles-characteristics such as sincerity, honesty, and straightforwardness in your daily living patterns. In the business world, ownership of such characteristics is the lifeblood of any long-term success.

ビジネスの世界に置いて長期的な成功を手にするためには一つ一つの手紙を誠実に届け、一本一本信頼の糸を増やしていくことなのだということを学びました。

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