AI

私は80年代から90年代までアメリカ、ボストンのBerklee College of Musicでジャズピアノを教えていたのですが、

そのBerklee と現在私が教える大学にはパートナーシップがあり、Berkleeを退職する時は予想もしなかったのですが、かれこれ30年くらいの付き合いになっています。この8月に久しぶりにボストンに行った時もBerklee staffたちとディナーをして色々な話をしました。

そしてここ最近よく出てくるの話題が、AIです。

Berkleeでは先進的なカリキュラムを作っていますので、すでにVRを取り入れたり、パソコンはもはや楽器の一つという扱いで、パソコンでアンサンブルをする授業などを行っています。これがいいか悪いかは別として、時代は人がなんと言おうと変化していくものだなあと思います。

私は個人的には、変化、特にテクノロジーの変化は大好きです。

今まで見ていなかったものが見えるのは楽しいものです。

ただAIはものすごい勢いで、すでに世界を変えつつあります。何と言っても膨大な情報を処理する能力がありますから、

ものすごいですよね。AIのお陰で交通などの安全性が格段に上がることもあるでしょうし、人間ができないことをやったり、時間がかかるタスクを短時間でこなしたりするわけです。

AI、音楽にはどのようにかかわって行くでしょうか?

ポップスなどで、リズムスタイルに合わせてドラムパターンを自動で作ってくれるようなシステムは20年以上前からあります。でも、AIは膨大なデータを処理できるわけですから、きっとすぐAIが曲全体を作れるようになるでしょう。コマーシャルの音楽であるとか、映画やドラマの音楽はAIが最も活躍できる場になるのではと思います。

ハリウッドで映画音楽(各シーンのバックグランドの音楽)を書いている知り合いがよく、映画の制作過程で必ずロケとかが予定より遅くなって、音楽を書く時間がほんのわずかしかもらえないので、仕事が入ると1週間くらいほとんど寝れない、と言っていました。各シーンの後ろで流れている映画の音楽って、映像撮影が終了しないと書けないんです。だから、そういうBGMの音楽を書く人は、映画の制作のスケジュールに大きく左右されるわけです。

ですが、多分、近い将来はAIを操作できる人であれば音楽家である必要はない場合も多いと思うので、きっとロケ中に同時進行で音楽が作れるようになるんだと思います。

宣伝用のJingleと言われるテレビやネットのコマーシャルの音楽は、過去の売り上げデータやそのデータと音楽の関係を分析してAIが最適なものを短時間で作れるのだと思います。

それだけではなく、アドリブだって過去の膨大なアドリブのデータを読み込んで、AIがアドリブをする時代が来ると思います。しかもテクノロジーの変化って始まると非常に早いスピードで世の中を変えますから、あと数年もするとAIが音楽家にとって代わるかもしれません。そうなると音楽家の多くは仕事を失うかもしれません。

ではその時代になって音楽家はどうするかというと、きっと多くの人はAI自体を制作したりプログラムを操る側に回るのだと思います。音楽を創るのではなくて、AIを作ったり、操作することでクライエントの要求する音楽を即座に作れる人が仕事がもらえるという時代になるのかもしれません。

実際、CBS Newsによれば、アメリカの一般の職種で5月の1ヶ月だけでAIにより失った仕事は4000とのことです。

下手をすると世の中で聞こえてくる音楽のほとんどがAIによる制作というような時代がすぐくるのだと思います。

そうなると、アーティストは今一度自分のアイデンティティーや個性、自分であることということ自体を考え直す必要性が高まります。技術と精度、仕事の速さでは絶対AIに勝てません。では、人間が作るアートはどんなものでなければならないか、そもそもどういうものなのか。

これを今まで以上に深く考えることがいつにも増して大切になる時代なのだと思います。

テクノロジーの進歩は大好きですし、いつも新しい風を吹かせてくれます。

それを憂いて行くのか、またはその進歩を逆に利用して、より深く人間というものを知って行くのか、これは、

アーティスト一人一人に課せられた課題だと思います。

だから、、

I love high tech!!!

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