ゼロから始める伊賀の米づくり42:春の田起こしと、土・自然・機械とのコミュニケーション
冬の農閑期の間に圃場の石拾いをしてから約2ヶ月。
3月に入り、いよいよ5月連休の田植えを見据えての田起こしの季節がやってきました。
稲の苗の根付きを良くするため、また、春になって繁茂してくる雑草を鋤き込んでいくため、トラクターで田んぼを耕す作業です。
今回は、トラクターの操作上で注意すべき点がいくつかあったため、それごとにまとめてみたいと思います。
泥の中をトラクターで走る際の注意点
まずは、水路の水漏れが起こってしまっているこちらの田んぼです。
雲ひとつない快晴の天気の中、いざ、トラクターに乗って田んぼへ向かいます。
やはり、これほど水路の水漏れが進んでいると、トラクターの操作にも気を遣います。
トラクターは回転する爪が装着されているロータリーがある後部の方が重量があり、水漏れしている泥にどんどん後部が嵌まり込んでいきます。
そのため、深く土を掘りすぎたり、泥がロータリーに絡んでくると回転部に負荷がかかり、エンジンのモーター音も変化します。
このため、運転中は常に後方と前方を確認しながら、真っ直ぐにトラクターを走らせつつ、ロータリーが深く嵌らないように注視し続けることになりました。
流石に4年目にもなると、少しずつ自身の運転技術の向上も感じられ、着実に耕起を進めて行きます。
最後、外周を回る時にトラブルが発生しました。
泥にロータリーが取られ、トラクターが急停止してしまったのです。
幸い、タイヤが泥に取られて抜け出せないわけではないので再びエンジンを始動させようとしますが、セルモーターが回りません。
うんともすんとも言わないのです。
どうやら、前々から騙し騙し使用していたバッテリーがついに寿命を迎えてしまったようでした。
仕方がないのでクボタさんに連絡し、そしてバッテリーを交換してもらうことで事なきを得ました。
無事にこちらの田んぼを耕し終えてみると、奥へ向かうほど土の色が明るくなっており、いかに水が手前側から浸透しているのかが一目瞭然となりました。
それでも、一番の難所を終えたため次の田んぼは余裕を持って向かえそうです。
土が田んぼの端に寄ってしまっている場合には?
次は、鎮守の森の前の田んぼです。
こちらは特に水漏れなどしてはいないのですが、その分緑色の雑草の繁茂が目立ちます。
雑草は、本来稲が成長するための栄養を奪ってしまう他、収穫の際には機械に挟まるなど後々の作業の障害にもなり得ます。
そのため、丁寧に除去したり、雑草の種が圃場に落ちて後々繁茂しないように心がけることが重要になります。
そんなことを思い返しつつ、こちらの田んぼも耕し始めました。
ところで、私は小学生の頃から花粉症なのですが、この作業中は特に症状がひどくなりました。
乾燥した土をトラクターで耕すと粉塵が舞い、それが鼻に入るのもそうですが、細かな粒子も巻き上げてそれが刺激になったようです。
くしゃみが止まらず、思わず途中でトラクターを降りてティッシュを取りに戻ることになりました。
空は今回は澄んでいますが、大陸側からくる化学物質などが混ざると白く濁った空の色となるときもあります。
季節性のアレルギー症状から、地球環境についても思わず意識を巡らせてしまうことになりました。
この田んぼで特に意識をしたのは、土を極力田んぼの中央に戻すことです。
トラクターでの耕起は、土を後方に送ってしまいます。
同じコースを何度も何度も通っているうちに土はやがて田んぼの中央から田んぼの端に寄ってしまい、水を張った際に偏りが出てしまったり、田植え後の苗に均等に水が行き渡らない等、生育に影響してしまうことがあります。
そんな状況を回避するために活用できるのが、トラクターのロータリーの逆転機能です。
ロータリーの爪を逆回転させながら進むことで、端に寄った土を中央に寄せることができます。
操作方法としては、PTOのギアを「逆転」に入れることです。
爪の回転は回転方向を逆転させる以外にも、回転数を上げることでより細かく土を耕すことができたり、その逆に回転数を少なくして荒起こしをすることも可能です。
このような作業が、かつてはトラクターではなく飼っていた牛で行っていたそうですが、この愛機を遺してくれた祖父に感謝したいですね。
さて、無事に土も中央に寄せることを意識しながら、無事に耕し終えることができました。
今回は、自分自身の土や機械への理解とコミュニケーションが深まったことにより、状況の異なる田んぼに対しても冷静に対処することができました。
もちろん、毎年異なる気候条件が重なるため、100%の正解はありませんが、身につけてきた知恵を実践できるよう、今後も努めていきたいと思います。
さあ、次は4月末の代掻きですね。いよいよ田植えが迫ってきています。