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【読書記録】中編:Work with Source

今回の読書記録は、2021年3月に出版された、Tom Nixon(トム・ニクソン)Work with Source: Realize big ideas, organize for emergence and work artfully with money(『ソースを活用する:大きなアイデアの実現、創発の仕組み化、そして、賢くお金を使うために)』の、中編です。

※「すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力」の原著です。

本書の著者であるトム・ニクソン(以下、トム)は、フレデリック・ラルー(以下、フレデリック)の『Reinventing Organizations』に共鳴している起業家・コーチであり、フレデリックとも対話を重ねてきた人物です。

前編では、国内における『ティール組織』ムーブメントを概観した後、どのように『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』が国内に伝わり、その後の『Work with Source』邦訳へ繋がっていったのか等をまとめました。

中編から『Work with Source』や『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』に触れられた方は、是非とも前編もご覧ください。

また、あくまでこの記事の書き手である私視点ではありますが、この中編を以て、トムが『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』の2つのコア・コンセプトと紹介している『ソース(Source)』と『クリエイティブ・フィールド(creative field)』を一旦は扱い終えることができます。

後編では、本書のサブタイトルにもある『「お金(Money)」と人との関係』を扱う予定です。

(さらに詳細な内容については、実践編、発展編という形でまとめるか、前・中・後編をまとめた完全版でご紹介することになるかと思います)

それでも、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』の精髄に触れるためには不完全です。

ご興味のある方は、是非とも原著の購入と探究および著者であるトムや『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』提唱者であるピーター・カーニック(Peter Koenig)氏との対話を実践してください。

それでは、前回の続きへと進んでいきたいと思います。


ソース(Source)とクリエイティブ・フィールド(creative field)

既存の組織構造のさらに深い側面:クリエイティブ・フィールド(creative field)

Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』のレンズで会社組織を眺めた場合、会社組織もまた、ソース(Source)である個人が、アイデアを実現するためにリスクを取って一歩を踏み出して始めた「イニシアティブ(initiative)」の一つの形と考えられます。

イニシアティブ(initiative)はプロジェクト、会社、社会運動、芸術作品、ゼロカーボン経済への移行、サンドウィッチを作ることといった大小様々な形で展開されるものであり、ソース(Source)は世界のあらゆる場所に存在し、富裕層から貧困層まで、あらゆる階層の人々がソース(Source)として存在しています。

Yuki Omori【読書記録】前編:Work with Source

また、アイデアの実現に関しては、組織のより深い側面 、つまり、ビジョンを実現するための基本的なプロセスを推進する基盤となる層を見ることができます。『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』ではこれを「クリエイティブ ・フィールド(creative field)」と呼んでいます。

Yet when it comes to idea realisation, we can learn to see a deeper dimension of our organisations, a foundational layer that drives the underlying process of realising a vision. We call this the creative field.

Tom Nixon「Work with Source」p47

クリエイティブ・フィールド(creative field)」とは、『ビジョンを実現するために必要な人やその他のリソースを引き寄せ 、努力を束ねることで一貫性を生み出す魅力的なフィールドのことを指し、ソース(Source)イニシアティブ(initiative)を取ることで確立されるものです』

Creative field
The field of attraction that draws in the people and other resources needed to realise a vision and creates coherence by binding an effort together. Established when a source takes the initiative.

Tom Nixon「Work with Source」p249

すべての組織およびイニシアティブ(initiative)の根底には、「クリエイティブ・フィールド(creative field)」が存在し、「クリエイティブ・フィールド(creative field)」はビジョンを実現するために必要な人材やリソースを引き寄せ、努力を束ねて一貫性を生み出す重力場と、ビジョンの実現に向けて人々が一緒に行動できる草原のような物理的な空間の両方の性質が備わっています。

Underpinning all organisations there is something we’ll call a creative field. Think of this as being analogous to both a gravitational field that attracts the people and resources needed to realise a vision, and that creates coherence by binding an effort together; and a physical space, like a meadow, where people can be together as they work on realising a vision.

Tom Nixon「Work with Source」p21

オーサーシップ(authorship)の共有と、クリエイティブ・フィールド(creative field)

ソース(Source)の目線から、グループや組織が形づくられていく様子については、以下のような表現も為されています。

いずれの場合も、前述のクリエイティブ・フィールド(creative field)が重要な役割を果たしていることが見て取れます。

しかし、重要なビジョンは、一人の人間だけで実現できるものではありません。 一旦、あるソース(Source)がイニシアティブ(initiative)を開始するために自己投資すると、ソース(Source)のビジョンとそれに対するエネルギーは、磁石のように他の人々を引きつけることができます。』

その中には、当然ながらビジョンの特定の部分を担当する人もいるので、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』はその人たちを「スペシフィック・ソース(specific sources)」と呼んでいます。

HOW SOURCE IS SHARED
Every human initiative has one overall source, yet a significant vision cannot be realised by one person alone. Others join the initiative to play a part in realising the vision.Once a source has invested herself in starting an initiative, her vision and the energy she has for it can attract other people like a magnet. Some of these people will naturally take responsibility for specific parts of the vision, so we call them specific sources.

Tom Nixon「Work with Source」p39

あるソース(Source)は、ビジョンのオーサーシップ(authorship)を共有すると、他の人はビジョン全体の一部のスペシフィック・ソース(specific sources)となります。ソース(Source)は、その特定の領域内でソース(Source)と全く同じ役割を担うことで、スペシフィック・ソース(specific sources)に好きに動いてもらうことができます。

そして、スペシフィック・ソース(specific sources)は、ソース(Source)に従属するのではなく、自分自身の人生における天命(personal calling in life)を生きています。

これにより、従来の中央集権と分権化の間の争いから、中央集権(centralisation)と分権化(decentralisation)を同時に包含する、より活力に満ちた実用的な組織方法へと移行することができます。

A source can share the authorship of the vision and get out of the way as others become specific sources for parts of the whole, taking on the exact same role of source within that specific domain. Far from being subservient to the source, specific sources are also living their own personal calling in life; they merely choose to express this calling within someone else’s broader initiative. This helps us move on from the traditional struggle between central and decentralised control to a more energised and practical way of organising that embraces centralisation and decentralisation at once.

Tom Nixon「Work with Source」p20

クリエイティブ・フィールド(creative field)に関する簡潔なまとめ

ここまでで一度、クリエイティブ・フィールド(creative field)、ソース(Source)、オーサーシップ(authorship)、スペシフィック・ソース(specific sources)の関係について、まとめてみましょう。

ソース(Source)は、何かアイデアを実現するために、ある個人がリスクを取った時に自然と生まれる役割であり、そのアイデアの実現のために継続的なプロセスであるイニシアティブ(initiative)を展開し、参画、推進していきます。

イニシアティブ(initiative)はプロジェクト、会社、社会運動、芸術作品、ゼロカーボン経済への移行、サンドウィッチを作ることといった大小様々な形で展開されるものであり、ソース(Source)は世界のあらゆる場所に存在し、富裕層から貧困層まで、あらゆる階層の人々がソース(Source)として存在しています。

ソース(Source)は、リスクを取ってアイデアを実現するためのイニシアティブ(initiative)を始めたが故に、自然なオーサーシップ(authorship)およびクリエイティブ・オーソリティ(創造的権威:creative authority)を持ちます。オーサーシップ(authorship)は 、ソース(Source)に結果として起こることに対する自然で、完全な責任(a natural and full responsibility)を与えます。

しかし、重要なイニシアティブ(initiative)であるほど、ソース(Source)は一人でビジョンを実現することが難しくなります。

他方、ソース(Source)がイニシアティブ(initiative)を取ることでクリエイティブ・フィールド(creative field)確立され、また、ソース(Source)のビジョンに対する情熱は、協力者をまるで磁石のように引き寄せます。

この時、ソース(Source)オーサーシップ(authorship)を他の人に共有し、その人が全体のビジョンの一部を担当することがあります。この時、その人はソース(Source)に対して、ある特定部分を担うことからスペシフィック・ソース(specific sources)と呼ばれます。

スペシフィック・ソース(specific sources)は、ソース(Source)に従属するのではなく、スペシフィック・ソース(specific sources)もまた、自分自身の人生における天命(personal calling in life)を生きています。

なお、ソース(Source)に適用されるすべての原則は、その特定の領域内のスペシフィック・ソース(specific sources)にも適用されます。つまり、その部分のビジョンを明確にするために耳を傾け、次のステップを察知し、決定して行動し、サブ・イニシアティブ(sub-initiatives)の境界を維持する、というソース(Source)としての責任が含まれます。

イニシアティブ(initiative)が成長し、よりスペシフィック・ソース(specific sources)がその部分に対して責任を持つようになると、さらにイニシアティブ(initiative)の入れ子が出現し、何段階ものスペシフィック・ソース(specific sources)が存在するようになります。

これは、ソースのイニシアティブの中にあるクリエイティブ・ヒエラルキー(creative hierarchy:創造性の階層構造)です。ある人間が他の人間に対して正式な権力を持つことがないため、従来の組織に見られる管理階層(management hierarchies)とは非常に異なります。

Creative hierarchy
All of the principles that apply to sources also apply to specific sources within their specific domains. These include the responsibilities of being a source: listening for clarity about the vision for that part; sensing the next step, deciding and acting on it; and maintaining the boundary of their sub-initiatives.
As an initiative grows, and more specific sources take responsibility for their parts of it, a further nesting of initiatives can emerge, with many levels of specific sources. […] It’s a creative hierarchy within the source’s initiative; it’s very different from the management hierarchies we see in traditional organisations, as it does not involve one human having formal power over another.

Tom Nixon「Work with Source」p40

なお、別の人を自身のビジョンの実現に招待するということで、ソース(Source)イニシアティブ(initiative)エッジ(edge)を守り、完全性を維持する他、イニシアティブ(initiative)エッジ(edge)が何であるかを明確にするために耳を傾け、その取り組み全体にとって何が範囲内で何が範囲外なのかを判断する責任も発生します。

WHAT THE SOURCE DOES
The source’s authorship of her initiative means that she alone is naturally responsible for the whole, so her primary tasks are to:

1.listen for clarity about what the edge of the initiative is: what’s in and out of scope for the endeavour as a whole

2.maintain the integrity of the initiative by guarding its edge

3.sense the next step for the initiative as a whole, decide upon it, and act

4.share the creative field with specific sources.

For such a short list, being a source is a surprisingly large undertaking.

Tom Nixon「Work with Source」p39

もし、ソース(Source)が、自分に合わないとわかっているものを入り込ませてしまったら、ゆっくりと、しかし確実に、クリエイティブ・フィールド(creative field)はまとまりを失ってしまうでしょう。そうなると、ソース(Source)のエネルギーが衰え、ビジョンに取り組む全員の活力が失われていくことが予想されます。

If a source allows things to creep in that she knows don’t fit, then slowly but surely the creative field will lose all coherence. If this happens, we can expect the source’s energy to wane and the feeling of vitality among everyone working on the vision to weaken.

Tom Nixon「Work with Source」p77

ビジョンに対するソース(Source)のエネルギーや情熱はイニシアティブの燃料のようなものであり、ソース(Source)はそのエネルギーを維持することも重要です。

そのためソース(Source)は、自分がエネルギーを持つビジョンにつながり続け、自分の肉体的・精神的な健康と、自分自身の成長・発展に気を配らなければなりません。

なぜなら、ソース(Source)の内面的な状態は、参加するすべての人が感じる活力やエネルギーの感覚と直接的に関係しているためです。

The source’s energy, or passion, for the vision is like the fuel for the endeavour. A vision without sufficient energy powering it will never get off the ground.The source’s energy for her vision must be strong enough to create an imperative to act and stick it out. It is also vital that her energy is maintained. Everybody else is drawn in by it, and if it wanes, then gradually the energy level in the whole endeavour will drop, sometimes with tragic consequences.
This is why it’s vital for the source to stay connected to the vision for which she has energy and not veer off-track. The source must look after her physical and mental health and her own growth and development. Her inner state will directly correlate with the vitality and feeling of energy felt by everyone else who participates.

Tom Nixon「Work with Source」p37-38

しかし、エッジ(edge)を守るために、専制的なリーダーに期待されるような力強さや威厳が必要とされることはほとんどありません。ソース(Source)が明確で究極の愛に満ちた場所から行動するとき、物事は自然に現れます。

強い抵抗が起こる多くの場合、ソース(Source)が十分に聞いていないか、無意識のバイアスや自分では気づいていない精神の別の部分から行動していることを示しています。解決策としては、無理に押し通すのではなく、もっと耳を傾け、自分自身に働きかけて無意識を可視化することです。

しかし、それでもなお、ソース(Source)は必要に応じてトップダウンで行動する準備をしておかなければなりません。

Yet guarding the edge very rarely requires the kind of forcefulness or violence that we expect from tyrannical leaders. When a source acts from a clear and ultimately loving place, things emerge naturally. Strong resistance is often a sign the source is not listening well enough, or that she is acting from an unconscious bias or another part of her psyche of which she is not aware. The solution is not to force her way through but to listen more and to work on herself to make the unconscious visible.Yet, all the same, a source must still be ready to act in a top-down fashion when appropriate.

Tom Nixon「Work with Source」p78

クリエイティブ・フィールド(creative field)のライフサイクル

クリエイティブ・フィールド(creative field)は、ソース(Source)の継承のプロセス(succession processes)を通じて継承されるか、あるいは閉じられる独自の方法を持っています。

このような移行の瞬間は、ソース(Source)が旅の中で自然な変曲点(natural inflection point)に達したとき、つまり、自分がやり遂げたという強い体感を得たときに始まります。例えば、次のようなことです。

  • ソース(Source)のビジョンは、ソース(Source)の満足のいくまで完全に表現された。

  • ソース(Source)がビジョンに注ぐべき、十分なエネルギーがなくなった。

  • ソース(Source)が打ち込んでいることが、結局は自分の道ではないことに気づいている。

問題が生じるのは、この変曲点を超えてソース(Source)が自分のクリエイティブ・フィールド(creative field)を保持し続けようとするときです。ソース(Source)のビジョンとエネルギーがなければ、その努力の活力が失われることが予想されるからです。

変曲点に気づいたソース(Source)は、自分のクリエイティブ・フィールド(creative field)を閉じて、自分自身と創造された資源や資産を自由にして、新しいことを追求するか、あるいはソース(Source)の役割を後継者(successor)に引き継ぐことができます。

THE LIFECYCLE OF CREATIVE FIELDS
Since a creative field is separate from the formal aspects of an organisation, like its status as a legal entity, even if the legal entity goes bankrupt or is otherwise wound up, the creative field does not disappear, and the source will still occupy her role. In the same way, if a family home burns down but everyone survives, the family is fundamentally intact. Creative fields have their own ways of closing and being passed on through succession processes. These moments of transition begin when the source reaches a natural inflection point in her journey: when she has a strong, embodied sense that she’s done. For example:

• Her vision has been fully manifested to her satisfaction.
• She no longer has sufficient energy to put into her vision.
• She realises she’s committed to something that isn’t her path after all.

Problems emerge when a source tries to continue holding her creative field beyond this inflection point. Without the vision and energy of the source, we can expect the vitality of the endeavour to wane. When the source notices the inflection point has arrived, she can either close her creative field, freeing up herself and the resources and assets created to pursue something new, or, alternatively, she can pass the role of source on to a successor.

Tom Nixon「Work with Source」p55-56

ソース(Source)の継承(succession)

クリエイティブ・フィールド(creative field)のライフサイクルについて紹介する中で、ソース(Source)の役割の継承(succession)というテーマが出てきました。

これについて、トムは以下のように語っています。

『私は、ソース(Source)という役割が常に存在していることを理解してもらうよう勧めています。誰が最初にリスクを取ったかには注意を払わないことにしてもいいのですが、ソース(Source)の役割から得られる視点は、権力闘争、混乱、責任の欠如、長期にわたる創造的ビジョンの水増しなど、人間の努力に現れうる厄介な問題を新たに明確にしてくれるのです。』

『また、創業者が事業から離れたとき、その創業者がソース(Source)であるかどうかを知ることは非常に重要です。継承のプロセスに適切な配慮がなされないまま創業者が去った場合、イニシアティブは予測可能な方法で崩壊する可能性があります。同様に、イニシアチブが何らかの形で統合される場合、ソース(Source)の役割に注意を払うことで、物事がスムーズに進み、イニシアティブ(initiative)が予測可能な別の一連の問題を回避するのに役立ちます。』

I encourage them to see how the role of source is always present. We can choose not to pay attention to who took the first risk, but the perspective offered by the role of source brings new clarity to the gnarly problems that can emerge in human endeavours, like power struggles, confusion, a lack of responsibility, and the watering down of a creative vision over the long term.[…]
This acknowledgement also matters a great deal because, when a founder leaves an endeavour, it is important to know whether that founder is the source. Initiatives can unravel, in predictable ways, if a source leaves without the right care going into a succession process. Similarly, when initiatives merge in some way, paying attention to the role of source can help things to go smoothly and can help the initiative to avoid another set of predictable problems.

Tom Nixon「Work with Source」p36

さらに、ソース(Source)の継承について、トム自身の体験からくる以下のような教訓もあります。

『最初の会社を設立してから10年後、私は株式の大半を売却し、取締役を辞任し、組織におけるさまざまな役割を引き継ぎました。私たちはパーティーでお祝いをし、みんな私が永久に去ったと思っていました。

それから2年後、その会社は破綻し始めていました。権力闘争が始まり、会社のビジョンもはっきりしません。この2つの問題を「ソース(Source)」という観点から見てみると、どちらも「ソース(Source)」が本来の役割を果たせなかったことに起因していることがわかります。会社は末期的な状態にあり、毎月多額の赤字を出していました。その結果、誰もが不満と苦痛を感じていました。優秀な人材の潜在能力が引き出されていないのです。

このような状況を外から見ていて、私は、自分が組織を離れても、ソース(Source)の役割が継承されていないため、クリエイティブ・フィールド(creative field)を担当する人がいないことに気がつきました。そして、私は自分が「ソース(Source)」であることを認めたくないという気持ちを抑え、会社を立て直すために、再び会社に戻ってきたのです。』

Ten years after founding my first company, I sold most of my shares, resigned from the board, and handed over my various roles in the organisation. We had a party to celebrate, and we all thought I’d left for good.
Fast forward two years, and the company had begun to fail. Power struggles had developed, and there was a real lack of clarity over the vision for the company. If we examine these two problems through the lens of source, we can see they both point to the lack of a source fulfilling her natural responsibilities. The company was in a terminal decline, and it was losing a large amount of money every month. Everyone was frustrated and suffering as a result. The potential of the brilliant people who worked there was not being unleashed.
Watching all of this unfold from outside, I realised that, while I’d left the formal organisation, the role of source had not been passed on, so there was no one to tend to the creative field. After getting over my reluctance to acknowledge that I was still the source, I found myself drawn back to the company to see if we could turn it around.

Tom Nixon「Work with Source」p71

『数年前、私自身の会社でカーニック(Koenig)の原理(Source Principle)を実践したところ、急速な財務状況の好転に始まり、会社全体を吹き飛ばして多くの新しい試みへの道を切り開くという、信じられないような旅を経験しました。この話は、ビジネスの失敗としても、素晴らしい創造性の爆発としても語ることができます。』

Putting Koenig’s principles to work in my own company years ago led to an incredible journey, beginning with a rapid financial turnaround and ending with blowing the entire company apart, clearing the way for a raft of new endeavours to emerge. That particular story can be told either as a business failure or as an incredible creative explosion.

Tom Nixon「Work with Source」p7

実際に会社の立て直しの最中のプロセスの記述に関しては省略しますが、ソース(Source)の継承やソース(Source)の自覚が、どのようにイニシアティブ(initiative)全体の創造性に繋がるかが伺えるエピソードです。

組織のパーパス(Purpose)とソース(source)

このクリエイティブ・フィールド(creative field)に関する章以降、組織それ自体を実体と捉え、名詞化されたOrganizationとして見る視点と、ソース(Source)という個人によるイニシアティブ(initiative)が結果として組織を形づくるという、動詞(Organize)として捉える視点があることを見てきました。

トムは、西洋文化では組織は名詞化されており、独立した存在を持つものと考えられている、と説きます。

イニシアティブ(initiative)を法人化することで、人間の個人とほぼ同じように法律で扱うことができる。私たちは、組織が財産を所有し、法的な契約や紛争を締結し、人々を雇用・解雇し、意思決定を行い、組織を設立・運営している人々とは別に法律上の責任を負うことができる、と考えているというのです。

ORGANISATIONS ARE EMERGENT PHENOMENA
In Western culture, organisations have become nouns; they are considered to be things that have an independent existence. We’ve written laws to make this idea feel concrete. By turning an initiative into a legal entity, it can be treated in law in much the same way as a human individual. We go along with the idea that an organisation can own property, enter into legal contracts and disputes, hire and fire people, make decisions, and be held accountable in law separately from the people who started and run the organisation.

Tom Nixon「Work with Source」p46

また、近年の組織論の世界では、組織は世界に独立した存在として存在するだけでなく、独自の魂(Organisational SoulsあるいはEvolutionary Purpose)を持っているという考え方があります。

この考え方は、フレデリック・ラルーの著書『Reinventing Organizations』で広まりました。

ORGANISATIONAL SOULS
A recent idea in the world of organisational thinking is that organisations not only exist as separate entities in the world but have souls of their own.The idea was popularised in Frederic Laloux’s book Reinventing Organizations.

Tom Nixon「Work with Source」p50

しかし、このような組織のパーパス(Purpose)という考え方と、ある個人の創造性から始まるソース(Source)の考え方とは、一線を画します。

トムは、組織のパーパス(Purpose)、あるいは組織がひとつの存在、実態であるという考えに固執しすぎると、ビジョンを実現するという根本的な創造的プロセスから注意をそらすことになり、ビジョンの水増し、責任の回避、協力ではなく強制、権力闘争の発生などの問題を引き起こすことになるとして、警鐘を鳴らしています。

Getting too attached to this idea can pull our attention away from the underlying creative process of realising a vision and leads to problems such as the watering down of a vision, the avoidance of responsibility, forcing rather than collaborating, and the emergence of power struggles.

Tom Nixon「Work with Source」p21

『組織や、企業における役員は、独立した存在として何かを決定したり、行動したり、発言したりするものではありません。行動を起こすのは人間であり、意見や感情、ニーズを持つのも人間であり、発言するのも人間であり、責任を負うべきなのも人間なのです。さもなければ、私たちは知らず知らずのうちに自分の力を幻のようなものに委ねてしまうことになります』

と言うのです

Organisations and boards do not decide anything, act, or speak for themselves as independent entities. It’s humans who take action; humans who have opinions, feelings, and needs; humans who speak; and humans who should be held to account. We need to pay attention to that; otherwise we can unwittingly give up our power to a phantom, an illusion.

Tom Nixon「Work with Source」p47

また、『ティール組織(Reinventing Organizations)』で紹介されているような参加型の組織は、ソース(Source)が去ったり、より洗練された組織のあり方に全責任を負えなくなったりすると、より伝統的なパラダイムに逆戻りすることがあります。

『ティール組織(Reinventing Organizations)』の代表的な企業であるFAVI社でも、ソース(Source)のジャン・フランソワ・ゾブリスト(Jean-François Zobrist)が去った後、同じことが起こったようです。

There’s evidence that highly participatory organisations like those featured in Reinventing Organizations can regress back to more traditional paradigms when the source either leaves or fails to take full responsibility for the more sophisticated ways of organising. This is a compelling explanation for why two of the organisations that served as case studies in the book did not maintain their special ways of working. Since the book’s publication, the same appears to have happened at the Reinventing Organizations poster-child company, FAVI, after the source, Jean-François Zobrist, left.

Tom Nixon「Work with Source」p51

以上のような理由から、トムは『組織とは、私たちの想像力の産物であり、客観的な現実に存在する実体ではなく、物語』と捉え、

『だからこそ、その概念を軽く捉えておくことが有効なのです。組織を尊重するあまり、個人のビジョンやニーズが抑えられてしまうと、個人が自分のニーズやビジョンを「組織」という概念に投影(project)してしまうことになります』

と語っています。

An organisation is a construct of our imaginations; it is a story rather than an entity that exists in an objective reality. So it’s useful to hold on to the concept more lightly. If individual vision and needs are suppressed because of deference to the organisation, individuals will naturally project their own needs and visions on to the concept of “the organisation”.

Tom Nixon「Work with Source」p51

これは、たとえ目的意識の高い活動であっても、混乱やフラストレーション、権力闘争の原因となります。表面的には、組織は人々によって管理されているというストーリーがありますが、実際には、人々は個人的なビジョンを実現し、個人的なニーズを満たすために無意識のうちに競争しています。

This can cause confusion, frustration, and power struggles, even in highly purpose-driven endeavours. There can be a surface-level story according to which the organisation is being stewarded by the people, while they are actually unconsciously competing to realise their personal visions and meet their individual needs.

Tom Nixon「Work with Source」p51

一方、すべての従業員を満足させるために、すべてを最小公倍数にしてしまうことで、イニシアティブ(initiative)からエネルギーを奪ってしまうこともあります。

上記のように、組織のパーパスに基づくパラダイムでは 、全員が組織に従属することを期待され、集団的な取り組みに参加する中で、個々の人生における意義ある使命を果たす方法を見失ってしまう危険性があるとトムは強調しています。

Alternatively, the group may reduce everything to the lowest common denominator to satisfy all the employees, draining the energy from the initiative.There is a risk with this paradigm that everyone will be expected to be subservient to the organisation and may miss out on finding ways to live their individual, meaningful callings in life as they engage with the collective endeavour.

Tom Nixon「Work with Source」p51

また、トムは、組織の魂のパラダイム(the organisational soul paradigm)は「Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)」のレンズで統合することで、改善できると話しています。

Despite these risks, I do not suggest rejecting the organisational soul paradigm altogether. I believe we can improve it by integrating it with the lens of the Source Principles. 

Tom Nixon「Work with Source」p52

もし、FAVIのように、トップダウンの組織運営に逆戻りしてしまった組織において、ソース(Source)の役割を担っていた人たちが、自分たちのユニークな役割を認識していたならば、彼らが去る前にソース(Source)の継承を促し、私たちが目にしたような残念な結果を避けることができたかもしれない、と考えられるためです。

If those individuals in the role of source of the endeavours like FAVI which regressed back to more topdown ways of organising had acknowledged their unique roles, they could have instigated a succession of source before they left and potentially avoided the disappointing results we saw.

Tom Nixon「Work with Source」p52

『ティール組織(Reinventing Organizations)』の出版後、フレデリック・ラルーもまた自説の中にソース(Source)の視点を自説の中に取り入れるようになりますが、トムもその経緯を振り返りながら以下のように書いています。

In the years following the publication of Reinventing Organizations, as I and others highlighted some of these issues, Frederic Laloux also came to recognise that Peter Koenig’s source perspective is extremely useful for building next-generation, highly participatory organisations. Laloux has since spoken about this in a video series, and many of his followers are now integrating source into their mental models too.

Tom Nixon「Work with Source」p52

Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)をどう扱うか?

Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の活用は、個人の選択に委ねられている

以上、組織の魂(Organisational Souls)とソース(Source)についても見てきましたが、トムはソース(Source)を活用することは、個人的な選択であり、自分の推論、経験、本能が、このレンズを使って物事を見ることが理にかなっていると言うなら、それを使えばいいというスタンスです。

世界がどのように機能しているかについて、人々がまったく同じメンタルモデルを採用することは健全ではなく、現実的にも不可能であるし、もし実現したとしても、それは実用的な概念や原則ではなく、教義(a dogma)となってしまうと考えるためです。

It’s not healthy, and not even practically possible, to get a group of people to adopt exactly the same mental model about how the world works. Such a model becomes a dogma rather than a working set of concepts and principles.[…]So working with source is a personal choice. If your own reasoning, experience, and instincts tell you that looking at things through this particular lens makes sense, then use it.

Tom Nixon「Work with Source」p24

Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)は常に更新の可能性を持つ

また、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の提唱者であるピーターもトムも、その可能性を感じつつもSource Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)が絶対的な自然の法則(laws of nature)とは表現していません。

Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)が更新されうる、より良いモデルが出てきた場合には、それを採用する準備と意思を持つことの重要性を説いています。

Attempting to impose the Source Principles on a group is highly likely to fail, since nobody can say with any ultimate authority that the principles are fundamentally true. Even Peter Koenig stopped short of describing his principles as laws of nature. They have been continually refined as new evidence has emerged, and we must be ready and willing to adopt a better model, should one come along.

Tom Nixon「Work with Source」p24

Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)に至るまでの、それぞれの旅路の違いを尊重する

そして、トムの経験によれば、ソース(Source)に最も馴染みやすい人にはいくつかの特徴があるそうです。

彼らは、以前に何か重要なことでソース(Source)の役割を担ったことがあり、原理原則が説明する複雑なダイナミクスの一部を直接経験したことがある、また、彼らはしばしば他のさまざまなメンタルモデルや組織的パラダイム(トップダウンとボトムアップの両方)を使って状況を理解し、何かが欠けていたりうまくいっていないこと経験してきた場合が多い。

In my experience, the people who click most easily with source share some characteristics. They have often been in the role of source for some- thing significant previously and directly experienced some of the complex dynamics the principles help to explain. They have also often used a variety of other mental models and organisational paradigms - both top down and bottom up - to make sense of their situations and found something missing or not working. So when they learn about the Source Principles, they finally have a language and concepts which explain something they have felt yet not been able to articulate. 

Tom Nixon「Work with Source」24-25

また、人によっては過去の経験から、ソース(Source)の新しい視点が何か強い感情を引き起こす可能性があります。

この新しい視点を受け入れる準備ができるまでには、個人的な癒しの旅が必要かもしれません。そして、そのことについて誰も診断や治療(cure)を強制することはできませんし、すべきではないのです。

Introducing the Source Principles can be contentious. Some people have been so wounded by their past experiences in top-down endeavours that they react by strongly favouring highly collectivist approaches. The new perspective of source can trigger strong emotions for them, as working with source acknowledges the virtue in both top-down and bottom-up models and at- tempts to integrate and transcend them. There may be a personal journey of healing needed before they are ready for this new perspective, and nobody can or should force a diagnosis or cure on them.

Tom Nixon「Work with Source」p25

反対思考(opposable thinking)のすすめ

同様に、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)とは異なる別の見方があるかもしれませんが、 どちらがより妥当かを客観的に証明することはできません。

しかし、視点の違いは反対思考(opposable thinking)の能力を向上させるチャンスと言えます。

反対思考(opposable thinking)は、AかBかという二極化(polarisation)を断ち切り、同じ方向に向かって引っ張ることで、より大きな意味を生み出す可能性を見出すことができるのです。

この思考法は、複雑な環境の中でグループが無数の対立する視点(opposing viewpoints)やアイデアを同時に保持することや、ますます偏った意見(polarised views)で定義されるようになった世界を解決するためにも役立ちます。

Equally, there may be other ways of seeing things which are at odds with the Source Principles, but it may simply not be possible to objectively prove which is the more valid. Rather than seeing that as a problem, as I once did, I’ve learned that differences in perspective offer an opportunity to improve our abilities in opposable thinking. We can find ways to cut through polarisation, pull in the same direction, and create the potential for greater meaning to emerge. Opposable thinking can also help groups hold countless other opposing viewpoints and ideas at the same time as they navigate a complex environment. It’s a key part of the solution to a world increasingly defined by polarised views, so I’ve included some useful approaches for opposable thinking in the Appendix if you’d like to explore this further.

Tom Nixon「Work with Source」p25

すべては愛/IT’S ALL ABOUT LOVE

以上、ソース(Source)およびソース(Source)の生み出すクリエイティブ・フィールド(Creative Field)、そしてソース(Source)と組織のパーパス(Purpose)に対する考え方の違いを見てきました。

以上を踏まえつつ、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)を体系化してきたピーター・カーニック(Peter Koenig)はどのような価値観を持っているのでしょうか?

ピーター・カーニック(Peter Koenig)は、ビジネスにおいて愛を創造することが人生の目的だと言っています。

Peter Koenig says his personal purpose in life is to create love in business, and I’ve also come to believe that working with source is a wonderful way to show up and act with love. But what is love?

Tom Nixon「Work with Source」p26

トムもまた、ソース(Source)を活用することは、愛を持って現れ、行動するための素晴らしい方法だと考えています。

そして、トムにとっての愛とは、ロマンチックな愛よりも範囲が広く、結合(union)であると言います。

『私にとっては、最終的にはすべての人とすべてがつながっていて、宇宙のあらゆるものの間に根本的な隔たりはなく、私の苦しみはあなたの苦しみであることを受け入れることです。

私たちはこの理解を携えて、自分自身や他人、そして周囲の世界に優しい思いやりをもって関わることができるのです。』

My personal interpretation of this kind of love, which is broader in scope than romantic love, is that it is a union. To me, it’s the acceptance that ultimately everyone and everything is connected, that there is no fundamental separation between anything in the Universe, and that my suffering is your suffering. We can carry this understanding with us as we relate to ourselves, others, and the world around us with a tender compassion.

Tom Nixon「Work with Source」p26-27

(続く)

著者来日イベントに関するアナウンス

2022年8月、『Work with Source』著者であるトム・ニクソン氏が来日し、全国各地でイベントに登壇予定です。

出版プロジェクトのメンバーである嘉村賢州氏の投稿を参考に、以下にご紹介させていただきます。

私自身、トムとの邂逅と対話を楽しみにしていますが、ぜひ興味のある方に届きますように🌱

(以下、嘉村氏の投稿より)

【ソース原理に関心をお持ちの皆様へ】 9月にソース原理に関して書かれた英語の書籍「work with...

Posted by Kenshu Kamura on Monday, August 1, 2022

【ソース原理に関心をお持ちの皆様へ】
9月にソース原理に関して書かれた英語の書籍「work with source」の
翻訳本が英治出版から発売されます。
私も出版プロジェクトチームに入っております。
それに先駆け著者のトムニクソン氏の来日も決まり
オンライン・北海道・東京・京都でイベントを開催することが決まりました。
もしご興味のある方は是非ご参加ください。

8月8日から11日 経営者リトリート@美瑛 (定員により締め切り)

8月11日(木祝)@オンライン 10:00-11:30 (無料)

8月11日(木祝)@東京 13:30-15:30

8月17日(水)@京都 18:30-20:30 

※京都イベントはある程度のソース原理に関する知識をもっていることが
前提になっておりますのでご了承ください。
そのため、8月11日(オンライン)に参加するか、その後配布予定の動画を見ることをお勧めします。

8月22日(月)〜25日(木)@屋久島


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大森 雄貴 / Yuki Omori
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