ゼロから始める伊賀の米づくり51:動物たちの痕跡を追って
2020年1月、父から実家の米作りを継いで5年目の春がやってきました。
家族経営の兼業米農家という形式上、口伝や暗黙知で伝えられてきた業務フローやプロセス。それらをきちんと見える化し、共有知として遺していこうと始めた記録も、51回目となりました。
今回は、田んぼ周辺によく現れる野生動物たちの痕跡が目立ってきたので、それらについてまとめていこうと思います。
小動物の群れの足跡
まず、私の田んぼは氏神様を祀る神社の前に位置しています。
向かって右側の一面と、向かって左側の一部です。
田んぼの中を行く参道を進んでいくと、左手に蛇行しながら進んでくるような二筋の轍のようなものが見えてきます。
それら二筋の足跡はおそらく参道の中心あたりで交わり、真っ直ぐ我が家の田んぼを突っ切るように進んでいっているようです。
何度も何度も同じ通り道を通っているためか、動物たちの足跡は畦道すら削っていっているようです。
ここ最近、雨が多かったため柔らかくなった土にクッキリと跡を残してくれています。
参道から我が家の田んぼへと進んだ動物たちの足跡は、真っ直ぐ進むかと思いきや途中で蛇行し、そのままさらに奥の圃場へと続いています。
おそらく毎晩、人の寝静まった頃に群れになって大移動しているのでしょうが、どうしてここまで大移動をしなければならないのでしょうか。
人間都合にはなりますが、何度も踏みつけられた足跡の筋をトラクターに乗って耕そうとすると固められた土を削るガタガタという音が鳴り、ロータリーの回転爪へのダメージがどうしても気になってしまいます。
また、ここまで動物たちと言ってきましたが、この足跡を残している動物の正体はいまだに分かりません。
足跡に接近してみると、以下のような足跡となっています。
この足跡の主の正体の候補は、いくつか思い浮かびます。
それは、この地域でたびたび目撃する動物たちです。
イタチ、キツネ、シカ、あまり見ませんが、タヌキ……、おそらくこのいずれかの動物たちが毎夜群れをなして田んぼを突っ切っているようです。
露地で行う農業は天候や自然の季節のサイクルにも影響を受けますが、それと共にこの地域に生息する動物たちともまた共存しながら営まれている生業であることを意識させられます。
大きすぎるモグラの穴
続いて見られた動物の痕跡は、その正体ははっきりしています。モグラの仕業です。
それは、我が家の田んぼの畦道の中腹で見つかりました。
畦道を歩いて行くと、唐突に大きすぎる穴が見つかりました。
パッと確認できるだけでも3つの大穴が、畦道の中腹で空いています。
流石に自分もこの穴の大きさに驚いて、自分の足と比較して大きさを調べてみることにしました。
深さを見てみると、おおよそ30cmくらいの深さが確認できました。
どうしてわざわざ、同じ位置をこうして掘り返してしまうのか……。
この畦道の位置は例年、モグラによって開けられた穴によって田んぼの水が漏れ出す危険地帯です。
こうして畦道に見つかった穴は塞いでいかなければなりませんが、穴を開けるだけではなく塞ぐにもかなりの労力が必要になります。
田んぼの土は通常、水を含みやすい粘度の高い土です。
そして、穴をきれいに塞ぐには水を含んで重くなった土を何往復もして塞がなければなりません。
動物と共存と先は書きましたが、モグラの仕業にはなかなか困ったものです。
我が家には畑もあってそちらにも春先になると穴が開いたりするのですが、うまく共存できないものか……。
いまだ答えは出ずにいます。
ともあれ、嘆いてばかりもいられません。
毎年5月連休に行う田植えに向け、まずはトラクターで春起こしを行います。
次回は、この春起こしの様子をまとめようと思います。