「デンマーク-ヒュッゲな暮らしと美食を巡る旅」
1.デンマークへの旅立ち
「ヒュッゲ」という言葉に出会ったのは、ある雑誌の特集記事だった。心地よい暮らし、幸せな時間を大切にする北欧の生活哲学。その言葉に惹かれ、夫と共にデンマークへの旅を決めた。
成田空港から北欧の玄関口、コペンハーゲン空港までは直行便で約11時間。機内では早くもデンマークのデザイン性の高さを感じる。シンプルながら洗練された機内インテリアと、温かみのあるサービスに、これから始まる旅への期待が高まる。
コペンハーゲン空港は、その設計からして北欧デザインの粋を集めたような空間だ。天井が高く、木材を効果的に使用した内装は、まるで美術館のよう。入国審査もスムーズで、デンマークならではの効率的なシステムを実感する。
空港から市内へは、メトロか列車を使うのが一般的だ。私たちは、より街並みを楽しめる列車を選択。空港駅から中央駅まではわずか13分。車窓から見える整然とした街並みに、北欧らしい秩序と美しさを感じる。
列車の中で隣り合わせた地元の老夫婦が、私たちに優しく話しかけてきた。拙い英語での会話だったが、彼らの温かな笑顔に、デンマーク人の親切さを垣間見た気がした。
「コペンハーゲンの魅力は、歩いて発見することです」と彼らは教えてくれた。その言葉を胸に、私たちの旅が始まった。
中央駅に到着すると、そこはすでに街の喧騒の中心だった。古き良き建築物と現代的な建物が調和する街並み。自転車専用レーンを颯爽と走る地元の人々。その光景は、環境先進国としてのデンマークの一面を物語っている。
デンマークの「ヒュッゲ」を求めて、私たちはゆっくりとこの街を歩いてみることにした。
2.Day 1:コペンハーゲンの街歩き
ニューハウンに降り立った時、時計は午前9時を指していた。かつて船乗りたちで賑わった港町は、今や観光客に人気のスポットだ。しかし、この時間帯はまだ静けさが漂い、パステルカラーの建物群が運河に映り込む様子を独り占めできる。
「これぞデンマークの絵はがき」と夫が呟く。17世紀から残る色とりどりの建物が、朝日に照らされて輝いている。第67番地には、かつてアンデルセンが住んでいたという建物もある。童話作家の創作意欲を掻き立てたという、この街の魅力を肌で感じる。
【モーニング:Kafferiet】
住所:Sankt Annæ Pl. 7, 1250 København
https://kafferiet.dk/find-us/
運河沿いの小さなカフェで朝食を取ることにした。地元の人々が通う隠れ家的な店で、バリスタが淹れる香り高いコーヒーと、自家製のカルダモンブッレ(シナモンロール)が絶品だ。
運河沿いを北上すると、デンマーク王室の居城アマリエンボー宮殿に到着する。四つの宮殿が八角形の広場を囲む様は圧巻だ。12時の衛兵交代式を見学するため、少し早めに到着。衛兵たちの規律正しい足取りと、観光客に対する思いがけない微笑みが印象的だった。
【ランチ:Aamanns 1921】
住所:Niels Hemmingsens Gade 19-21, 1153 København
Aamanns | Smørrebrød, restaurant & take-away i København
デンマーク伝統のスモーブローを求めて訪れた名店。
おすすめメニュー:
・ヘリング3種盛り合わせ
・ローストビーフのスモーブロー
北欧デザインの殿堂デザインミュージアムを訪れる。アルネ・ヤコブセンの「エッグチェア」やポール・ヘニングセンの照明など、名作の数々に出会える。学芸員のマリーさんが、デンマークデザインの特徴である「機能美」について熱心に説明してくれた。
【宿泊:71ニューハウン】
住所:Nyhavn 71, 1051 København
71 Nyhavn Hotel - a hotel filled with history
歴史的建造物を改装した boutique hotel。運河に面した客室からの眺めは絶景。部屋のインテリアは、デンマークデザインの家具で統一されている。
【ディナー:noma】
住所:Refshalevej 96, 1432 København
noma
世界最高峰のレストランで、究極のニューノルディック料理を堪能。
夜のニューハウンは、また違った表情を見せる。カフェやバーから漏れる明かりと人々の笑い声。運河に映る街灯の灯り。ここで過ごす時間こそが、デンマーク人の言う「ヒュッゲ」なのかもしれない。
夫と共に運河沿いを歩きながら、明日訪れる場所について話し合う。デンマークでの初日は、既に私たちの心を癒していた。
3.Day 2:デザインと歴史の街を巡る
朝靄の中、ホテルのバルコニーで目覚めのコーヒーを楽しむ。デンマークの朝は静かに始まる。通りを行き交う自転車の鈴の音が、心地よいBGMとなっている。
【モーニング:Democratic Coffee Bar】
住所:Krystalgade 15, 1172 København
Democratic Coffee Bar(@democraticcoffeebar) • Instagram写真と動画
コペンハーゲン中央図書館内にある隠れ家的カフェ。
地元の学生や知識人たちが集う空間で、知的な雰囲気に包まれながらの朝食は格別だ。
おすすめメニュー:
・自家製クロワッサン
・シングルオリジンコーヒー
【ランチ:Höst】
住所:Nørre Farimagsgade 41, 1364 København
Høst | Nordic restaurant | Unique food experience | Cofoco | Cofoco
北欧モダンな空間で、新しいノルディック料理を堪能。
おすすめメニュー:
・スモークサーモンのタルタル
・ラム肉のローストとセロリピューレ
午後はストロイエ通りへ。
ヨーロッパ最長の歩行者天国を散策。デンマークデザインの専門店「イリウム」では、デザイナーのヤンさんから、器選びのアドバイスを受ける。
Royal Copenhagenでは、青と白の繊細な模様が美しい「ブルーフルーテッド」シリーズに心を奪われた。店員のマリアさんが語る、250年以上の歴史を持つ磁器の物語に耳を傾ける。
その後トワイライトクルーズへ。
Netto-Bådenのクルーズで、水上から街を眺める。
運河沿いの建築物が夕陽に染まり、まるで絵画のような光景が広がる。船長のラースさんの粋な計らいで、デッキで地元のビール「カールスバーグ」を楽しむ。
【宿泊:ホテル サンダース】
住所:Tordenskjoldsgade 15, 1055 København
Hotel Sanders - Eksklusivitet og autenticitet i hjertet af København
19世紀の建物をリノベーションした最新のブティックホテル。
アートとデザインが融合した空間で、まさにデンマークの「今」を体現している。
【ディナー:Geranium】
住所:Per Henrik Lings Allé 4, 8. DK-2100 Copenhagen
Geranium
ミシュラン三ツ星を獲得した究極の美食レストラン。
おすすめメニュー:
・Universe(17品のコース料理)
・ワインペアリング
夜のコペンハーゲンは、また違った表情を見せる。ホテルに戻る途中、運河沿いのジャズバーから漏れる音楽に誘われ、即興の夜遊びを楽しむ。
地元のミュージシャンたちと交わした会話は、デンマークの文化をより深く理解する機会となった。夫と共に過ごすこの瞬間こそが、まさに「ヒュッゲ」な時間だと実感する。
4.Day 3:アンデルセンの故郷オーデンセへ
朝食を早めに済ませ、コペンハーゲン中央駅へ向かう。アンデルセンの生まれ故郷、オーデンセへの小旅行だ。デンマーク国鉄の特急列車に乗り込むと、車窓から広がる牧歌的な風景に心が和む。
コペンハーゲンからオーデンセまでは約1時間半。
予約したファーストクラスの座席は、北欧デザインの快適な空間。車内で出会った地元の女性から、オーデンセの穴場スポットを教えてもらう。
「物語の街を歩くなら、まずは旧市街から」というアドバイスを胸に、私たちの童話の旅が始まった。
【アンデルセン博物館】
住所:Hans Jensensstræde 45, 5000 Odense
童話作家の生涯を丁寧に辿る展示に、夫婦で見入る。
学芸員のペーターさんから、「人魚姫」や「醜いアヒルの子」誕生の背景について、興味深い解説を受ける。
【ランチ:Café Skt. Gertrud】
住所:Gertrudsgade 24, 5000 Odense
Café Skt. Gertrud – Restaurant
15世紀の建物を改装したカフェレストラン。
おすすめメニュー:
・スモーブロー盛り合わせ
・自家製レモネード
午後はオーデンセの旧市街を散策。
石畳の路地を歩きながら、アンデルセンの足跡を辿る。
Munkemøllestraedeでは、童話をモチーフにした壁画に出会う。路地裏のアンティークショップでは、店主のマーチンさんから、街の歴史話を聞かせてもらう。
【宿泊:Villa Provence】
住所:Skt. Annæ Plads 2, 5000 Odense
Book hotel på Villa Provence i Aarhus C | Fransk boutiquehotel
プロヴァンス風の雰囲気漂う、町家を改装したブティックホテル。
中庭のガーデンは、まるで童話の世界のよう。
【ディナー:Sortebro Kro】
住所:Sejerskovvej 20, 5260 Odense
Sortebro Kro – Smagens Køkken
1800年代から続く由緒ある料理店。
おすすめメニュー:
・フュン島産鴨のロースト
・地元野菜のテリーヌ
夜のオーデンセは、より一層童話的な雰囲気を醸し出す。ガス灯が灯る通りを歩きながら、アンデルセンが見た風景に思いを馳せる。
街角のパブで出会った地元の大学教授から、現代のデンマーク文学について話を聞く機会があった。文学を通じて見える国民性や価値観の違いについて、夫婦で深い議論を交わした夜となった。
5.Day 4:最後の朝とさよなら
早朝のオーデンセで目覚め、コペンハーゲンへの列車に乗る。最終日は、デンマークの魔法の遊園地、チボリ公園での締めくくりだ。
【モーニング:Granola】
住所:Værnedamsvej 5, 1819 Frederiksberg
Granola
フレデリクスベア地区の人気カフェで最後の朝食。
レトロな雰囲気の店内で、デンマークの朝食を堪能。
おすすめメニュー:
・グラノーラとスカイアヨーグルト
・オーガニックコーヒー
朝食後チボリ公園へ。1843年開園という歴史ある遊園地。アンデルセンやウォルト・ディズニーも魅了された空間だ。
園内ガイドのヘレンさんから、公園の歴史や裏話を聞けたのが貴重な体験。
・ヴィンテージ・ローラーコースター乗車
・パントマイム劇場での公演鑑賞
・園内ガーデンツアー
【ランチ:Gemyse】
住所:Tivoli, Vesterbrogade 3, 1630 København
Gemyse, Vesterbro, Copenhagen, Denmark - Restaurant Review | Condé Nast Traveler
チボリ公園内の温室レストラン。
有機野菜を中心としたモダンデニッシュを楽しめる。
おすすめメニュー:
・季節野菜のグリル盛り合わせ
・ハーブティー各種
Gemyse, Vesterbro, Copenhagen, Denmark - Restaurant Review | Condé Nast Traveler
マグストレーデ通りで北欧デザインの雑貨や、お土産を物色する最後の時間。
立ち寄った古書店で、デンマークの絵本作家、イブ・スパング・オルセンの作品と出会う。店主のクラウスさんが丁寧に作品の解説をしてくれた。
6.旅を終えて
デンマーク滞在で、私たちは「ヒュッゲ」の本質を垣間見ることができた。それは単なる居心地の良さではなく、人々との繋がりや、日常の小さな幸せを大切にする生き方そのものだった。
街で出会った人々との何気ない会話、カフェでゆっくり過ごした時間、夫婦で共有した感動。すべての瞬間が、かけがえのない思い出となった。
「また来ようね」夫が呟いた言葉に、私も頷く。デンマークでの4日間は、私たち夫婦にとって特別な時間となった。
≪旅行基本情報≫
■渡航・入国情報
【ビザ】
・90日以内の観光目的の場合、日本国籍者はビザ不要
・パスポートの残存有効期間は帰国予定日から3ヶ月以上必要
【時差】
・日本からマイナス8時間(サマータイム期間はマイナス7時間)
■現地での移動手段
【公共交通機関】
・コペンハーゲンカード:公共交通機関乗り放題+観光施設入場無料
【メトロ】
・空港~市内:約15分
・24時間運行
・券売機で簡単に切符購入可能
【バス・電車】
・DOT(公共交通システム)が統一されており使いやすい
・アプリ「DOT Tickets」での切符購入が便利
【自転車】
・Bycyklen(市営レンタサイクル)が便利
・1時間約30デンマーククローネ
・専用アプリで予約・決済可能
■気候と服装
【季節ごとの気温】
・春(3-5月):5-15℃
・夏(6-8月):15-25℃
・秋(9-11月):5-15℃
・冬(12-2月):0-5℃
【服装のアドバイス】
・季節を問わず薄手の上着があると便利
・夏でも夜は冷える
・雨具は必携
・レストランでのドレスコードは比較的カジュアル
■通貨・両替
【通貨】
・デンマーククローネ(DKK)
■食事・チップ
【食事の目安予算】
・カフェでの朝食:80-150クローネ
・ランチ:150-300クローネ
・ディナー:300-800クローネ(高級店除く)
【チップ】
・基本的に不要
・高級レストランでは請求額の10%程度
・タクシーは端数切り上げ程度
■その他の注意点
【営業時間】
・小売店:10:00-18:00が一般的
・スーパー:8:00-20:00頃
・レストラン:11:30-14:00、17:30-22:00頃
・日曜・祝日は多くの店舗が休業
【予約について】
・人気レストランは2-3ヶ月前からの予約必須
・高級ホテルも早めの予約推奨
・美術館など主要観光施設はオンラインチケット購入可能
【現地での交流】
・英語が広く通じる
・デンマーク人は親切だが、プライバシーを重視
・公共の場でのマナーを重視する文化
■おすすめの観光シーズン
・5月~9月:気候が穏やかで観光に最適
・12月:クリスマスマーケットで街全体が活気づく
・7月:祝祭やイベントが多い
※この記事は筆者の主観に基づいて作成されています。旅行前に最新の情報を確認することをおすすめします。