金13:金の加工技術(金箔、その2)
おはようございます。
今日は雲もそれなりに厚くて、雨の気配はないけれど理想的な曇り、といった感じ。
金を金属同士で合わせて使う地金ではなく、木工や漆に使われる金素材について、以下の4つを学んでいく。
金箔
切廻し
金粉
金泥
昨日から学び始めた金箔には、伝統的な製法である「縁付金箔」と昭和30年代後半〜50年ごろから登場した「断切金箔」と2つの製法がある。昨日は縁付金箔に関して学んだので、今日は断切金箔が出来上がる工程を見ていきたい。
断切金箔
昨日学んだ縁付金箔は、金箔を挟む紙の寸法が金箔を縁どるようにひと回り大きいことから縁付と呼ばれるのに対して、この断切緊迫は文字通り箔の4辺を断ち切ることで仕上げられる金箔。
また、雁皮と泥を原料にした手漉き和紙に柿しぶ、灰汁汁、卵等を含んだ液をしみ込ませ、叩いて紙をしめる作業を繰り返した箔打紙を使うのも縁取金箔の特徴だ。
縁付金箔の製造は400年以上の歴史があり2014年に国の選定保存技術となり、2020年12月には「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録された。
その一方で、断切金箔は急増した金箔の需要に対応するため、1960年代頃に開発された製法。縁付金箔より工程が簡略化され効率的に量産できるため、価格が安く生産量も多いため、現在の金箔の主流になっている。
箔打紙に機械漉きのグラシン紙(透明度が高く、光沢があり滑らかな、耐油性・耐水性がある、クッキングシート等の原料となる紙)を使用するため、品質が安定している。
合金の厚みが約1000分の1mmの上澄ができるまでの工程は縁付金箔と同じ。上澄から断切金箔が完成するまでの工程を中心にご説明します。
1. 澄切
澄屋で作られた20cm角の上澄を、最終的に仕上げる金箔の重さを均一にするために大小の正方形や長方形に9~12枚ほどに切り分ける。
2. 仕入れ(しきいれ)
箔打紙に切り分けた上澄を挟んでいきます。
断切金箔ではグラシン紙の裏表にカーボンを塗ったものを箔打紙として使用する。約2,000枚積み重ねたものを箔打機で空叩き(金を入れずに紙だけ叩く)し、金箔を打てる状態にしていく。
3. 打ち前
上澄が挟んである箔打紙をまとめて箔打機で打っていく。打ち続けると箔打紙の中の温度が上がりすぎ、金箔が箔打紙にはりついてしまいます。箔打紙を分けて熱を冷まし、冷めたら箔打機で打つという作業を繰り返し、約10000分の1mmの薄さまで打ち延ばしていく。
4. 箔移し
打ちあがった金箔を検品しながら切紙(箔合紙)にうつし重ねていく。金箔同士を重ねるとくっついてしまうため、切紙・金箔・切紙と必ず金箔の間に切紙を挟んでいく。
5. 箔断
約1,000枚の金箔を重ねたものを規定の大きさにするため、薄刃で4辺を切る。この断ち切る工程にも、職人さんが専用の刃物で1,000枚もの金箔を上から力一杯抑え込んで正確に断ち切るとても熟練の技が求められる。
こうして、断切金箔が完成する。
*上記の情報は以下のリンクからまとめています。
今では職人さん達の努力による技術の向上のお陰もあって、縁付金箔も断切金箔も職人が見てもその金箔として素材の差は見分けがつかない程だと言われる。
縁付金箔の生産が落ち込む中で今まで使われてきた和紙を用いた箔打紙の消費量が減って困った際も、今まであまり知られていなかった上質なあぶら取り紙として新たなマーケットを作り出して産業としてなんとか持ち堪えているという話を読んでちょっと安心した。
金箔はあくまで作品ではなく、作品を作るための材料だが、それを作るにも多くの職人や専用の素材が必要で、それが無ければ最終的な結果として工芸品や美術品もあり得ない。
やはり、美しい技術や作品を愛でるためにはそれを産業として成り立たせるためのサポート、つまり購入という形で作るものと使うものとの継続的な関係性が必要不可欠なのだ。
僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。
皆様も、良い一日を。