陶磁器29:日本の焼き物(岡山県:備前焼)
おはようございます。
今日は昨日夜の小雨から続く曇り空で雨は降っていないものの久々のどんより感。
さて、日本各地の焼き物の名産地をピックアップしたところで、具体的に1つずつ見ていこう。
20回目の今日は、岡山県の備前焼。
備前焼(炻器)
備前焼は、岡山県備前市周辺で作られている炻器。
備前焼は日本六古窯のひとつとされており、信楽、丹波、越前、瀬戸、常滑と並んで、今も残る伝統のある窯として位置づけられている。
備前焼の特徴は、釉薬を使わない独特の製法。一般的に焼きものは釉薬を塗ることで光沢が生まれ耐水性が増すが、備前焼ではそれを使わないため、光沢がなく素朴な印象となる。また、釉薬には模様付けの際にも使用されますが、その作業がないために、ひとつひとつが異なる模様になり、ひとつとして同じ陶器には仕上がらないことも備前焼の魅力。
釉薬を使わない理由は、備前焼に使用されているヒヨセと呼ばれる備前周辺で採れる粘土にある。ヒヨセは他の粘土と比べて釉薬が乗りにくい性質を持つ。備前焼ではこの粘土の性質をいかに克服するかを考え、釉薬を使わずに長時間窯で焼くことによって耐久性のある焼きものへと作り上げて行った。高温で焼き締められているので強度が高く割れづらく、熱しにくく冷めにくい保温力があり、ビールを入れればきめ細かな泡が長持ちし、内部に微細な気孔があるためお酒やワイン、ウイスキーを入れるとまろやかでこくのある味になる、といった利点が豊富に揃った、お酒好きにはぜひ使っていただきたい焼き物でもあります。
歴史
備前焼は古墳時代に朝鮮半島から伝わったとされる、青灰色が特徴的な須恵器の製法をもとに発展していった陶器。備前焼として形成したのは平安時代だという説が有力で、生活のためのお椀や瓦を作ったことが始まりだとされている。
鎌倉時代には備前焼の特徴的な色のひとつとされている赤褐色のものが、室町時代にはヒヨセという備前周辺の粘土が使われるようになった。また、安土桃山時代には当時実質的に国を治めていた豊臣秀吉や茶道の道を極めた千利休にも、備前焼は愛されていたと言われている。
特に茶道においては、備前焼の素朴さが茶道の詫び寂びの精神とうまく合致していたため多くの人に深く愛好され、そして現代でも備前焼の精神は今なお引き継がれている。
1956年(昭和31年)には金重陶陽が備前焼の陶芸家として人間国宝に選ばれ、その後も藤原啓や山本陶秀など数々の人間国宝を輩出している。
地理
岡山県備前市は、兵庫県姫路市と岡山市のちょうど間に位置する、瀬戸内海に面した街。ざっくりいって逆L字型の街の形をしているが、縦のラインはほぼ山となっていて、山陽新幹線が通る横のラインに平地が広がり、瀬戸内海の入江が深く入り込んだ片上湾に望む形になっている。
川に関して見てみると、左隣の瀬戸内市やその境を流れる吉井川にも挟まれる形でヒヨセが作られる土壌を長い時間をかけて育んで来た可能性がある。
作り方
ヒヨセの採取 備前焼は、釉薬を使わない製法により素材そのものの良し悪しがすぐに表面に出てしまうため、土の選定は全製作工程の中でも大切な部分。備前焼に使われる土は、備前市周辺の田園約3~5メートルの地下から掘り起こされる、良質なヒヨセ(粘土質の土)が主になります。実際に試験的に焼いてみて土の良し悪しを判断することもある。また、土を採集したからと言ってすぐに使えるわけではなく、1~2年は風雨にさらして馴染ませる必要がある。
しっかり風雨にさらされた土は、いくつかの方法によって選別される。まず、粒子が大きいので細かくするためにフレットと呼ばれる臼のような機械で粒を小さくする作業から始める。そして、フレットである程度粒子を細かくしたら、水簸によってさらに細かい粒へと選別していく。水簸とは土を水に浸して、下に沈殿するスピードを使ってより細かい粒のみを取り出す作業。菊ねり 選別を行った粘土は、水を加えて適当な硬さになるまで数週間から数ヶ月ほど寝かせられ、土踏みによって黒土と混ぜ合わせる。土踏みとは素足で大雑把に練ることで、土踏みされた土はまた半年から数年にわたり寝かす。いよいよ土を使用する時がきたら、菊もみと呼ばれる土もみを改めて行い、手でしっかりと練って空気を抜いてから使います。
成形 土の準備が整い、はじめて製作の段階になる。紐作りや板作りなど機械を使わない方法やろくろを使用した方法など作り方はさまざまだが、基本的に形成方法については他の焼き物と同様。
へら遣い 成形後はろくろの上に器を置いたまま、へらを用いて文様を施す。
窯詰め 備前焼は形成してもすぐに窯では焼かない。自然に任せて、しっかりと乾燥させることがポイントで、もしも自然乾燥をさせている段階でひびが入ってしまった場合は再度土に戻す。
しっかりと乾燥させたら、窯に詰めていく作業。置く場所によって焼き上がりが異なってくるため、しっかりと計算しつつ釜へ詰めていく必要がある。火入れの儀式 備前焼の火入れは、作品の焼きあがりが良くなるように吉日を選んで行われる。祝詞をあげて神に祈りを捧げ、火入れの儀式を行う。
焼成 単純に窯で焼くといっても、いくつかの工程に分けられる。まず初日と2日目で行うのはくゆし。くゆしは窯の前方の2か所の焚口だけを使って薪をくべる作業のことで、焼き上がり後の強度が増す。3日日目からはあぶりの作業。あぶりとは1時間当たり3~5℃ほど少しずつ温度をあげていく作業のことで、割れにくくするために徐々に釜の温度を高めていく。400℃を超えると中焚き。中焚きでは1時間当たり7~10℃ほど温度を上げていき、温度上昇のペースを速めていく。800℃を超えると一時間当たり10~15℃のペースで温度を上げ、最終的に1150℃~1300℃あたりをキープして窯焚きを続ける。こうした窯焚きにかかる時間はだいたい1~2週間ほど。
窯出し 窯焚き作業が完了したら、すぐに窯を開けずに焚口をすべて塞いだ上で、ゆっくりと時間をかけて窯の中を冷やしていく。これは、急速に冷やしてしまうと焼き物が割れる恐れがあるため。
*上記の情報は以下のリンクからまとめています。
https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/tokonameyaki/
僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。
皆様も、良い一日を。