繊維の種類20:大麻(ヘンプ)の植物としての特徴
おはようございます。
今朝の東京は気温1℃、最高気温も9℃留まりと冷え込みが特に厳しい曇りの朝。
布の素材として靭皮繊維の代表とされる麻の中で衣服の素材となる以下の3つに関してみているところ。
亜麻(あま) Linen リネン 亜麻科
苧麻(ちょま)Ramie ラミー 葦麻科
大麻(たいま)Hemp ヘンプ 桑科
リネン・ラミーに関して、見てきたところで最後の大麻(ヘンプ)に関して見ていこう。
まず『大麻』が、素材として大麻(おおあさ/たいま、ヘンプ)と違法の大麻(たいま)との違いを明確にしたところで、日本では実に縁のある素材であることを振り返っていきたい。
近年、ヘンプはそのナチュラルな素材感から、冬用の布としても2010年代に復元されており、乾きやすさと共に保温性もありアパレル素材に多用されている。農薬や化学肥料を必要としないため、環境に優しくエコ素材としても注目されている。
一方資材用途としてもロープなどの索具類や鞄、袋類の素材として多く使用されています。大麻の縄は伸びにくく弓の弦などに使われるほか、古来より神聖な繊維として神社の鈴縄や注連縄など神事に使われている。大麻(ヘンプ)は神道では重要な繊維であり様々な用途で使われているのは、前後半の歴史で見てきた通り。
今日は栽培される天然素材として、大麻(ヘンプ)がどれだけ優れているかを見ていこう。
エコ素材としての大麻(ヘンプ)
ヘンプは近年、「環境にやさしく、サスティナブルな自然素材」として大きな注目を浴びており、特に2016年以降ヘンプ栽培が増え、農地も生産量も拡大している。生産量にいたっては、1994年以降で過去最高量を記録しました。この事実からも、近年規制緩和と共にヘンプ繊維の需要が増えていることがわかる。
育てやすさ
ヘンプはどのような生育条件でも育ちやすく、日本では古くから痩せた土地の土壌改良のために使われてきた植物。そのため、世界でもほとんどの国・地域で栽培できる。少量の水があれば簡単に育ち、農薬や化学肥料を必要としない。早ければ3か月で収穫できるので、ひとつの農地でトウモロコシや小麦といった作物との輪作(1つの土地で、1年に2つ以上の作物を栽培・収穫する農法)が可能。
またヘンプは地下深くまで根を張り、土壌の環境を整えてくれる。つまりヘンプを植えたあとの土壌は、地下に炭素をため込んで微生物・虫が過ごしやすい環境を作り、後から植える作物が育ちやすい状態にしてくれるので、より輪作に向いていると言えるだろう。
水使用量の少なさ
同様にエコな素材として目にする機会が増えたオーガニックコットンだが、実はコットン栽培は農薬の有無に関係なく大量の水を必要とする。あたたかい場所を好むコットンはアジアやアメリカ大陸で多く栽培されているが、WWFによるとたった1枚のコットンを作るのに、2,700リットルもの水を使用しなければならない。湿潤な気候を持つ日本はともかく、乾燥地帯であるインドのような国ではコットン栽培が引き起こした干ばつ・水不足に苦しんでいる。
一方ヘンプは、水の量が少なくても簡単に育ち、農薬・化学肥料を必要としない。たとえばオーストラリアのある農場では、1億7,800本のヘンプを栽培しています。その際に使用した水の量を同じ農地面積と栽培量で試算した結果、通常のコットン栽培に比べて、1日900万リットルもの水をセーブできることが分かった。
また、コットンは今、農業で使われる水資源のうち4%近くを利用していますが、ヘンプ栽培に置き換えるだけで水に関する問題解決へ一歩進められる可能性を持っている。
CO2吸収率の高さ
ヘンプが持つ栽培時のメリットは、CO2の吸収率の高さも挙げられる。
上でヘンプは土壌環境を整えると書いたが、同時に空気中の二酸化炭素を吸収し、地中に排出する役割を果たしてくれる。もちろん、これだけならほかの植物にもある特徴だが、注目すべき点はその量。ヘンプが吸収できる二酸化炭素の量は小麦の約1.5倍、松の木に至っては10倍以上(松の木が20年かけて吸収できる量をヘンプはたった90日で吸収できるという)。
現在差し迫った課題として二酸化炭素の増加による地球温暖化が問題となっている中、ヘンプ栽培は二酸化炭素の吸収に大きく貢献してくれるはず。
活用用途の多彩さ
ヘンプは、生育条件が少なく育てやすいメリットに加えて、収穫後に茎以外植物全体をさまざまな用途に利用でき、その用途が幅広いことから今や世界中で見直されている。繊維として取り出すのは主に茎の内部だが、それ以外のほとんど全てのパーツも別用途に活用できる。ヘンプの用途例をまとめるとこんな感じ。
種:オイル・ナッツ・パンやビールといった食品の一部・飼料・プロテイン・バイオ燃料など
茎:布・紙・建材・板・動物用ベッドなど
葉と花穂:医薬品・コンポスト・動物用ベッドなど
根:コンポスト・医薬品など
近年は医療・産業の分野で研究が進み、食品と薬・繊維のほかバイオ燃料や植物性プラスチックといった分野にも活用できることが分かっている。
ヘンプは繊維としてすぐれた性能を持ち、植物全体を資源として最大限に使える「エコな素材」としても注目を浴びるようになってきている。ヘンプは戦後情報操作された複雑な歴史があるが、単に『違法な危険な植物』ではなく、あらゆる用途に活躍する優秀な素材といえるだろう。
こんなにいいことしかないなら、ガーデナーの端くれとしては一度は育ててみたいもの。いつか許可制ではなくなったら是非とも育ててみたいもの。
明日は大麻(ヘンプ)の素材としての特徴を見ていこう。
こちらの文章は以下のリンクを参考文献として使用しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%BB_(%E7%B9%8A%E7%B6%AD)
https://spaceshipearth.jp/hemp/
僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。
皆様も、良い一日を。