いつかたこぶねになる日(読書感想文)
南フランス在住、新進気鋭の俳人、小津夜景さんのエッセイ、「いつかたこぶねになる日」
青一色で描かれた表紙の可愛く、洒落ていて素敵なこと。おしゃれな雑貨屋さんの窓辺とかにありそうな文庫本です。
暮らしの中のさまざまな出来事から、読書の記憶へ、そしてまた現実へ。自由自在に行ったり来たりしつつ、思いつくままに詩の紹介をして下さるという、なんとも楽しくありがたいエッセイ集です。
私と夜景さん(と、いつも家で呼んでしまってるのでこう書かせて頂く)の出会いはつい最近図書館で、第一句集 フラワーズ・カンフーを借りて読んだこがきっかけでした。私、正直に言いますと、夜景さんの句は分からないのも多いのです。でもなんか好き。なんか惹かれる。初心者で沢山の人の句に触れたわけではないのですが、私の読んだ中では、寺山修司のような、(句の感じが似ているという訳ではなく、私にとって理解しにくい、でも素敵で好きなことはわかる。すごく惹かれる。という感じ)印象を受けました。
夜景さんも句集の後書きに「前衛」を意識したと書いていらしたので、雰囲気は受け取れているのかもと前向きに考えています。何度も読み返すうちにわかるようになったらそれはそれで嬉しいし楽しめるのでって、しまったフラワーズ・カンフーの感想になってる。
夜景さんは漢詩がお好きで、
(漢詩の紹介のエッセイ本も出版されています。「カモメの日の読書 漢詩と暮らす」東京四季出版)
漢詩の紹介も沢山ありました。訳詩がとても美しく、紹介文もとても愛にあふれていてわかりやすいので、漢詩を楽しむ入り口としてもとても良いなあと思います。
1つ1つのお話は短く、かつ平明なことばで綴られていて、とても読みやすいのですが、とにかく夜景さんの知識量がものすごい。本当に半端ないので、私など知識の深さにすぐに置いていかれちゃう。知らない事が多すぎる私は、読むときにスマートホン片手に読み進めていたのですが、(まず題名のたこぶねから調べた(笑))途中からは調べるのをやめました。だって、知らなくても面白く読めることに気づいたから。そして、この本を私はこれから何回も読み返すだろう事にも気づいた。詳しく調べるのは、また次にこの本を開く機会にしよう。今は、この宇宙のような、海中のような、夜景さんの世界に浸かって、潜ってしまいたい。美しくて、思いやりにあふれていて、そしてどこか寂しげな世界に。
とまあ、ちょっと詩人っぽくなっちゃうくらい、素敵で深い本でした。深いのに軽く楽しむ事もできるという不思議。
確定申告終わるまでは夫から読書禁止令を出されてるので(笑)早く終わらせて読み返したい。
余談になりますが、古典を紹介したエッセイつながりで、田辺聖子さんの「文車日記」を思い出しました。
こちらも様々な古典文学を愛ある筆致で紹介されていて、とてもおすすめです。いつかご紹介したいな。
ではまた。最後まで読んでくださりありがとうございました。
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