『お願い』 【シロクマ文芸部】
みなさん、こんにちは。
今週のシロクマ文芸部のお題は「恋猫と」から始まる創作です。
待ってました〜。
我が家の愛猫オシリスさんの出番です‼️
オシリス:何・・・?
小牧部長、今週もよろしくお願い致します。
『お願い』
恋猫と陽だまりで微睡み春を待つ
すぅすぅ、と隣で平和そのものに寝息をたてているオシリスさんは、私の枕に頭を乗せて(半分占領されてます)、(行儀がいいのか!?)ともあれ品よくまどろんでいる。
これこそ至福。
オシリスさんの後頭部は、焼きたてのパンケーキの匂いがする。
「ちょっと、パンケーキって何よ?」
目を開けると、緑の瞳が覗き込んでいる。
茶色い短い髪は柔らかそうで、どこか中性的だ。
「だってホントだもん」
頭をなでるとうれしそうな顔をする。
「猫って人間に好かれるために甘い匂いをだすんだって。お友達のお家のジュニア君はミルクの匂いがするらしいよ」
「へぇ〜、アタシ達ってつくづく健気な生き物よねぇ」
見た目美少年の私のオシリスさんは、ゴロリと寝転んだ。
御年19歳、人間年齢ならば84歳。
いつからか長い尻尾は二つに分かれ、人の姿をするようになった。
「でもさぁ、なんでおネエ言葉なの?立派な本タマ持ちなのに」
「それってセクハラでしょ」
「はは、ごめん」
「猫もジェンダーレスでしょ、そもそも去勢されちゃってるし。アタシの本タマは個性なのよ」
オシリスさんはまったく盛りのない猫だった。
外で猫たちか泣いていても、我知らん。
孤高で私だけにゴロゴロする愛しい子。
「そうだよね。個性だよね」
うとうとと夢か現か心地よい。
「ねぇ、じゃあさ。猫又だから長く生きることができるんだよね」
「うーん、よくわかんない」
猫耳が見えなくてもイカ耳になっているのが見えるようだ。
「あのね、オシリスさん。私が死ぬまで側にいてね」
「アンタは怖がりだからね。そんなのあったりまえじゃん」
これは秘密の会話。
振り返ると見慣れた茶色い猫が笑いながら眠っていた。
〈了〉