女子会 【シロクマ文芸部】
みなさん、こんにちは。
今週もやって参りましたシロクマ文芸部です。
お題は「秋と本」から始まる創作です。
小牧部長、どうぞよろしくお願い致します❗️
『女子会』
秋と本の質量が変化している。
「読書の秋」といわれたのはひと昔もふた昔も前のこととなった。
「私の分野は健在だけどねぇ」
そういって葡萄を房ごと口に放り込んだのは貪欲を司る女神だ。
でっぷりと垂れ下がった腹にはどれほどの欲望が溜め込まれていることか。しかし彼女自身は鷹揚で気のいい女なのだ。
「あたしも仕事減っちゃってさぁ」
そうしてゴロリと寝転んだ女神はお産を司る。
少子高齢化は我々にも深刻な問題といってよい。
私は知にまつわることを任されているが、最近の人々は知識が氾濫しているものの、それを判断する知が損なわれている気がする。
「それがイコール読書しない、って極端ではないかしら?」
妖艶な一瞥を向ける彼女は愛を司る女神らしく美しい。
「まあ、極論だけど、秋の夜長って物狂おしく眠れないものでしょう。昔の人間はそんな本能を抑えるために読書したものだわ」
「私だったらその物狂しさに油を注ぐのに・・・。でも、確かに久しくそんな想いには触れていないわねぇ」
ほうっ、とつく彼女のため息からは薔薇の香りが漂う。
「アレよ、マッチングアプリとか?あれも弊害よね。草食の極み???子供が生まれないじゃないよ」
お産の女神はせっかちだ。
「そもそももう11月だっていうのに暑くない!?ダルいわぁ」
気怠そうな貪欲の女神は睡眠欲に支配されつつある。
「じゃあ、温暖化のせいで、ってことで。解散!!」
そうしてみなそれぞれの神殿に帰って行った。
〈了〉
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