見出し画像

本当の「好転反応」とは ~瞑眩と好転反応~

「それは好転反応ですね」

そう言われた方は多いかもしれません。


「これは好転反応なのかも」

そう思ったことがある方は少なくないかもしれません。


Q.好転反応とは何ですか?

との問いに答えると
 

A.本来の意味としては、

「治療後、一時的に悪化した後、劇的に良くなるもの」
または
「重病などが急激に良くなる時に稀に起こる現象」

『好転反応』もしくは『瞑眩(めんげん)』と言います。


一時的に悪化した後、以前と変わらない状態で改善していなければ、
それは『好転反応』ではありません。

『好転反応』という表現が、
本来の意味を離れて都合良く使われることもあります。


本来の意味


『瞑眩(めんげん)』や『好転反応』という言葉は、
元々は漢方や鍼灸での用語です。



『漢方用語大辞典』(燎原)によれば

瞑眩(めんげん)とは
「服薬後に一時的にあらわれる種々の予期しない反応
 たとえば悪心・頭眩・胸悶など」

と書いてあります。


広く使われている意味合いでは、

「一時悪化した後 良くなるというもの」

と説明することが多いです。


◎本当の瞑眩とは


私が好きな先生の著作には、ご自身の体験として『瞑眩』が載っています。

その先生が鍼灸師になる前のお話しだそうですが、
大まかな流れは

・心臓発作により救急車で運ばれ一命をとりとめた

・重度の心臓肥大があったが、他には異常がなかった

・大きな病院での検査・治療を継続していたが心臓発作を繰り返していた

・縁あって、初めて灸治療を受け、自宅で3年間毎日ご自身でお灸を据え続けた

・1年目は、あまり変化なし

・2年目は、めまいが起こるようになり、激しい偏頭痛と嘔吐を伴うようになった
 → 次第に苦しむことなく吐くようになっていった

・3年目に、嘔吐の際にドロッと粘った黄色い塊を吐き出したのを最後に、心臓発作は全く起こらなくなった

・病院で検査を受けたところ、心臓肥大は治り、通常の大きさに戻っていた


◎私の治療経験としての瞑眩


ゆかり堂では、
本当の『瞑眩』と思しき症例は、年に数回あるかどうかです。

劇的に良くなることを期待されることもありますが、
その際に「一時的な悪化を伴うことは 果たして良いことなのかどうか」
という思いもあります。


軽い『瞑眩』『好転反応』であれば、

・便通が良くなり出過ぎるくらい出た
・重だるい感じが数時間続いた
・ものすごく眠くなり、帰宅後 何もせずにそのまま寝てしまった

などということは時々あります。

その後は、皆さんスッキリして快調になります。

婦人科系では、
・いつもよりもはるかに多い経血量があり、心配になったが、
 その後は生理痛などがほぼなくなった

ということもあります。


激しい変化は、不安や戸惑いを生むため、
「からだの中の悪いものは、苦しまずに自然に出るようにしたい」
と考えています。


私がこれまで治療をしてきた中で、
本当の『瞑眩』と思しき症例をひとつを挙げます。

・ある女性から問い合わせの電話があり、
 痛みでからだに力が入らずほぼ寝たきりとのこと

・来院時は家族に付き添われて一人では歩けない状態

・経緯と症状を聞くと
 9か月前から首肩の強い張りを感じるようになる
 4か月前から一気に悪化し約2か月間横になっていた
 1か月前に病院で詳しい検査をするも異常なし
 首肩だけでなく手首・膝・足首が痛くなり、力が入らない
 夜は痛みで眠れず、1時間おきに目が覚める
 日常生活も困難となり、ほぼ寝たきりのような生活になっている

・以前、突発性難聴になったときに鍼灸治療で治ったそうで、
 それを思い出して近隣の鍼灸院を探し、ゆかり堂に来院

・施術中に姿勢を変えるのもやっとという状態でしたが、
 施術後は一人で歩いて帰宅されました

・翌日、ご家族からお電話があり、
 「鍼灸には副作用があるのでしょうか?」とのお問い合わせ
 「37度後半の熱を出した」とのこと

・ごく稀にそういうことが起こる可能性はありますが、
 基本的に鍼灸の施術後に熱を出すことはない
 ということをお伝えする

・のちに、ご本人からご予約のお電話があり、初診の5日後に来院
 痛みはだいぶ減り、夜は眠れている
 発熱中は、自分の感覚としては「良くなっている」と感じ
 不安はなかったが、家族が心配して電話をしてしまったとのこと


ゆかり堂では、施術後に発熱した例は他にありません。

発熱し一時的に悪化したように見えますが、
その後は痛みが減り、かなり良くなっていました。

これが『瞑眩』であり『好転反応』というものか、
と当時は感じたものです。


『好転反応』と「そうではないもの」


初めて鍼灸治療を受けるという場合、
施術後に少し重だるさが出ることがたまにあります。

これは、初めて鍼灸を受ける緊張感や初めて受ける刺激に対して、
「ちょっと疲れてしまったような状態」
もしくは
「その人にとって刺激量が少し多かった状態」
だと思います。

翌朝にはスッキリしていますが、
これは『好転反応』とも言えますし、
「緊張や刺激量に対する反応」であるとも言えます。


鍼灸治療をはじめ、マッサージや整体、リラクゼーションやその他の民間療法、エステや美容系の施術などで、
『好転反応』と言われているものの中には、

「単なる言い訳」であるものもあります。


揉みほぐした後に からだが痛くなったりするのは、
「揉み返し」が原因のこともありますが、
「好転反応です」と言われることがあります。

その痛みが消えた後に、元の症状が良くなっていれば、
一時悪化した後 良くなる『好転反応』ですが、

以前と変わっていなければ、
それは『好転反応』ではなく、「揉み返し」だと思います。


よもぎ蒸しや岩盤浴などで、
「のぼせている」状態でも
「好転反応です」と言われることがあります。

これもその後に症状の改善などの良い変化があれば、
『好転反応』と言えるかもしれませんが、

毎回のぼせて、元の症状に変化がないようであれば、
それは『好転反応』ではない可能性が高いです。


『瞑眩』 や 『好転反応』 が、
本来の意味を離れ、都合の良いように使われているケースも多いです。

本来は、
「一時的に悪化した後 劇的に良くなるものである」
または、
「重病などが急激に良くなる時に稀に起こる現象である」

ということを知っておくと、
自分の身を守ることにつながるかもしれません。


私は、からだが良くなっていくときは、
「痛みやつらさを感じずに、自然に良くなっていく」
ようにしたいと思っています。

・痛みやつらさを感じたほうが、効果がありそう

・一時的に体調不良になったとしても、劇的に良くなった方がいい

と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、
心地よく改善していったほうが望ましいと思い、
普段から、そのような治療を心がけています。


ゆかり堂治療院


いただいたサポートは知識や技術の向上に役立てて、クリエイターとして皆さまに還元させていただきます!