満開の桜に思う
わたしの住む地域では、今週末桜が満開を迎えている。
暖かい陽気も相まって、そこかしこで人が繰り出し、街のテンションがぐんと上がっているのを感じる。
ここ数年、わたしは桜は夜桜が1番好きだとおもうようになった。
春の空気は、夜はひんやりとし甘いながらも土埃のような匂いが漂っている。その夜空の暗闇の中に浮かび上がる白い桜の花びら達は、妖艶ですらあり、まるで自分が太古の世界にタイムスリップしたかのような気分になる。
間違っても、その木のたもとで、ブルーシートなどみたくない。せっかくの桜の美しさが台無しで、気の毒になる。焼き肉やビールの匂いや、嬌声などもない方が良い。夜桜のライトアップも、なくて良いぐらいだ。
もっと若い頃は、自分もブルーシートの上の一員だったのに、いつからかこんなに静けさを好むようになった。
そもそも、日本人が、桜の木の下でこんなにどんちゃん騒ぎをするようになったのはいつからだろう?平安時代なら、まりを蹴ったり、和菓子を齧りながら抹茶をすすったのだろうか?平安時代のほうが自分には合っているのだろうか。。
いや、それは源氏物語の世界で、庶民は案外変わらず盃片手にやはりどんちゃん騒ぎを繰り出していたのかもしれない。
そんなわたしでも、桜の季節になるとそわそわする。日々、悩みやつらいことがあったとしても、脳はちゃんと桜に反応し、楽しみにしている。
桜を見逃すまいとどこか気がはやるような、沸き立つような人々の姿をみていると、時代は変われど、ビニールシートにスマホ撮影と変われども、何百年と培われた日本人の遺伝子はちゃんと受け継がれているんだなぁと、感慨深い。
ところで、先日娘がお花屋さんで買い物してくれた際に、小さな桜の枝を二本、おまけしてもらった。「沖縄桜だって」、と言うその桜は、濃いツツジのような色をしていた。
こちらは、夜空よりも、真っ青な空のもとで見るのが合いそうだ。ブルーシートの強い色にも負けなさそうである。同じ桜でも随分と雰囲気が変わるものだなぁと興味深い。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?