昔を懐かしんで、それぞれの人生に愛を。映画「SUNNY」で味わうつかの間のタイプスリップ
学生時代って、気楽だったよなぁ。
と気づくのは、大人になって、だいぶ経ってからの話だ。
いま中2の息子に、いくら「今が一番気楽で楽しい時期なんだよ」といってもピンとこない。それはそうだ。大人になって、あれこれ責任やらしんどい課題が出てきてから分かることだもの。
大人になって、やらなくてはならないことに囲まれて、ちょっと疲れてしまったとき、「昔はよかったなぁ」みたいな気分に浸れるのが、今日紹介する映画「SUNNY」だ。
韓国で大ヒットした映画のリメイクらしいが、残念ながら韓国のヒットを知らないので、おそらくこれは日本版を観たほうが何かと分かりやすいだろうと思い、日本版を劇場で鑑賞した。
なんとっても、90年代の安室ちゃんブーム、そして90年代のヒットソングがじゃんじゃんかかるので、それだけでも当時を思い出して楽しい。
わたしは90年代にはすでに大学生だったので、時代は違うのだが、それでも安室ちゃんや、当時のヒットソングを聞くと、当時の自分を思い出して懐かしい気持ちになる。
90年代といえば、小室哲哉とエイベックスが一世を風靡した時代で、安室ちゃんの服装を真似た「アムラー」が続出し、茶髪に細眉、ルーズソックスの女子高生が渋谷に溢れかえる現象が起こっていた時代だ。
小室哲哉プロデュースのアーティストが一世を風靡した90年代を代表しているかのように、本作の主演が篠原涼子だというのも目を引く。
篠原涼子は小室哲哉プロデュースで楽曲をリリースしてから、歌はもちろんのこと、ダウンタウンのバラエティでも活躍し、さらにドラマなどでも活躍して女優になった人。
しかも個人的に、彼女はわたしと同じ出身地で、同い年。妙にシンパシーを感じてしまう。
ちなみに本作、話はいたってシンプルだ。
1990年代のコギャルブームの時代に高校生だった仲良しグループの女の子たち。それきり会っていなかった彼女たちだったが、そのうちの1人が、死期が迫った末期がんと判明し、最後にあの仲良しグループに会いたいと願う。
そして彼女たちにコンタクトを取ろうとするも、コギャル時代に楽しくやっていた頃とは想像もつかない人生を歩んでいることがだんだん明らかになってくる。
ギャル時代に語った将来の夢が、そのままかなっている人もいれば、夢破れて「こんなはずじゃなかったのに」という人生を歩んでしまっている人もいる。
そうやって人生は、進めば進むほどいろんな苦難に出会うし、責任が増えていく。だからこそ、若いころの思い出がキラキラ輝いて見えるのだ。
何がどうって話ではないのだけど、シビアな人生の中でも、あのときって楽しかったよね、と回顧録として自分の楽しかった時期を味わえる時間になる。
そして本作は、個人的にはキャストが大ヒットだ。
主演は篠原涼子で、これはもう小室哲哉がらみの90年代を象徴する人ということでアリなんだけど、それよりなにより、昔から好きな女優さん、小池栄子がとんでもなくいい。
はっちゃけてて、でも姑息で、おどけていて、可愛いキャラクターを演じさせたら右に出る者はいない。
今回も、過去のコギャル黒歴史を捨てて金持ちをゲットしたマダムを演じているが、ところどころで漏れ出るガラの悪さがたまらなく面白い。
そしてもうひとり、やさぐれ感を出させたらピカイチの、ともさかりえ。美人なのに、アル中を演じさせたら右に出るものはいない、すばらしく板についた演技。もはや演技じゃないかもと思うくらいのやさぐれっぷり。
主役よりも、このふたりの演技が光りまくっていて、物語にアクセントを加えてくれている。
高校時代のキャストも、山本舞香は可愛くてナイスキャストだったし、小池栄子やともさかりえの高校時代役の役者さんも、遡るとこんな感じだよね、という上手な配役で好感度が高かった。
おデブキャラ役のキャスティングも、高校生では富田望生、大人は渡辺直美と、どちらも見ごたえあるスパイシーなキャラで観ていて楽しい。
ちなみに主役の広瀬すずは、ごめん、ノーコメント。好みの問題かな。わたしは本作では受け付けなかった。
そんなこんなで、疲れたときに、昔はよかったよなぁと懐かしみたいときにアマゾンプライムで観る「SUNNY」。ボーっと見てても大丈夫なので、実は通算4回くらい観ている。
サスペンスとか、重たいテーマのものは集中しないといけないけど、コギャルがワイワイして楽しかったよねーみたいな話題なので、流し見できるのが心地いい。しかも当時のヒットソングが詰まっているので、ミュージックビデオみたいにも見られる。
そして、自分が若かった90年代を思い出し、「あの頃は何も考えてなかったなぁ」と懐かしむ。それだけでも自分のタイムトリップを楽しめる。
この映画自体がタイムマシーンみたいなものだ。
そんなに気軽に見られる内容でありながら、最終的にはそのグループのリーダーだった女性が亡くなる。しかも末期がん。
とりあえず映画やドラマは、末期がん設定が多い。乳がんを経験しているわたしからすると、他人事ではないので、つい末期がん設定の物語に入れ込むフシがある。
「最高の人生の見つけ方」もそうだったが
末期がん設定は、意外と凝った葬式やエンディングを用意するフシがある。ほぼパーティなんじゃないかという葬儀を見ると、わたしもそうしようかな、と思ったりする。
実際にがんを患った身からすると、なんでもかんでも、とりあえず末期がん設定を安易に用いるのはやめていただきたいのだが、ガンってすぐに死なないからドラマのネタに使いやすいのかな。
ということは、わたしもガンで死ぬとしたらあれこれ準備出来そう。
まだ死にたくないし、やりたいことはたくさんあるから、もうちょっと元気に生きるつもりではいるが、いつ訪れるかわからない死を頭の片隅に置いて、今日もできるだけ楽しんで、味わって生きていこうと思う今日この頃だ。
今日もお読みくださりありがとうございました!
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