マガジンのカバー画像

シノノメナギの恋煩い

48
運営しているクリエイター

2024年4月の記事一覧

第四話 シノノメナギの恋煩い

第四話 シノノメナギの恋煩い

なんだかんだで今日も今日とて仕事だ。この図書館にはもう長く勤めている。

大学卒業してすぐだ。地元の図書館。
大学の時に研修としていた頃からだから……うむ、長い。

好きな本に囲まれとても幸せである。最新刊を利用者の方よりもいち早くスリスリ、いや、拝むことができる……だったら本屋でもよかったのであろうが図書館で、というのがわたしの夢であった。

カウンターでの貸し出し作業、イベントの企画運営、展示

もっとみる
第三話シノノメナギの恋煩い

第三話シノノメナギの恋煩い

視力が低いことが助かってか本来の姿を薄目でみて現実逃避して湯船に浸かる。

わたし自身男の体を持って男という戸籍を持ちながらも心が女の子と自覚したのは結構早い時期だった。

両親がずっと不仲で小学校に上がった頃には離婚、母方の祖母に育てられていた。
その頃に気づき、祖母もわたしの考えを尊重してスカートやワンピースを与えてくれた。髪の毛も伸ばした。中学の頃には周りの友人や大人の理解があり女子の制服を

もっとみる
第二話シノノメナギの恋煩い

第二話シノノメナギの恋煩い

これは数年前に遡る。

わたしは家で「新婚ちゃん、おいでやす」をごろんと見ていた。日曜昼の番組だがルームシェアをしている相方が好きな番組だと言うことで録画しているものが流れている。
わたしは普通にやっている番組もつまらないし、昔からやっている番組ともあって惰性で見ている。

最近司会者がベテラン落語家から若手の落語家に変わったとのことだがわたしはあまり興味はないが素人カップルたちとの年齢差が無くな

もっとみる
第一話:シノノメナギの恋煩い

第一話:シノノメナギの恋煩い

とある収録スタジオ。
初めて訪れるテレビ局にわたしはとても緊張して手汗が止まらない。
そんなわたしのてにポン、と大きな手がのる。

「大丈夫やて、練習通りすりゃええわ」
安定の関西弁の彼のその載せた手も震えてる。

「わかってる……」
その関西弁につられてわたしの東濃弁はもともと関西弁に近いテイストだけどさらに関西弁ぽくなるけど彼が言うにはまだ違うらしい。

「すいません、本番ですー!」
呼ばれる

もっとみる