マリア様の誕生日
ドメニコ・ギルランダイオ 「マリアの誕生」 1486-90年 サンタ・マリア・ノヴェッラ教会、主要祭壇
「聖母マリアの物語」という名を冠した教会の主要祭壇を飾るフレスコ画一部。タイトルを聞かなければマリア様の誕生シーンだと分かりにくいと思います。
一日過ぎてしまったのですけど、9月8日の聖母マリアの誕生日に合わせて。
彼女の物語は1854年、教皇ピオ9世に正式に認めるまで教会に正規の話とされていませんでした。ですが古くから聖母信仰が民間で受け入れられていたため、多くの教会に作例を見ることができます。
「マリアの誕生」はルネッサンス時代、上流階級の屋敷を背景に描かれる事がありました。屋内、インテリア、衣装、出産の様子など、当時の人々を聖母の物語に落とし込んで表しています。
生まれながら罪と穢を持っている人間と違い、マリア様は生まれながらにしてそれらから赦されていると信じられていました。上流階級の人達が依頼した背景には、自分達は無垢な彼女に近い特別な存在とアピールする狙いがあったと考えられます。ルネッサンスの時代は聖母の話に限らず、聖書をテーマにした作品にこの傾向があります。
フィレンツェでも例外ではなく、今回取り上げたギルランダイオの作品に顕著です。
このフレスコ画はジョヴァンニ・トルナブオーニというフィレンツェの銀行家が依頼したもので、画中には一族のメンバーも描かれています。絢爛なドレスに丁寧に結い上げられた髪。まるで神聖な場面に立ち会うべく正装したような。
真っ直ぐに出産シーンを見つめる、女性たちの視線にも注目です。
フィレンツェにいらっしゃる時の参考になさってみてください。
いいなと思ったら応援しよう!
記事が少しでも皆様のお役に立てれば嬉しいです。
皆様からのご支援はサービスの向上のため、本、論文、講習会、調査の費用に充てさせていただきます。
よろしくお願いします☺️