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ボッティチェッリの「春」に込められた意味

いつもイタリア通の方向けの内容を取り上げているので、今日はフィレンツェの有名作品を取り上げます。



フィレンツェ、イタリアと言えば頭に浮かぶ絵画。



ボッティチェッリの「春」です。


ボッティチェッリ 「春」 1480年頃 ウフィツィ美術館


私が日本の大学で学んだ時は女神ヴィーナスの話が描かれていると習いましたが、最近は神の飛脚メルクリウスと人間の女性の恋物語を描いたものとされています。



お年頃を迎えたメルクリウスはお嫁さんが欲しくなり、色々な神様にいい女性がいないかお伺いを立てます。多くの女神に会ったものの納得がいかなかったので、人間界にお嫁さん探しの旅に出ます。そこで知り合ったのが、フィロロジーという賢く美しい女性でした。


フィロロジー


ただ人間と神が結婚することはできなかったので、メルクリウスは父ゼウスに、彼女を神族にしてほしいと頼みます。ゼウスは即答でノー。それでも諦めきれなかったメルクリウスは母ヘラにお願いします。



彼女は息子のためならと即承諾。フィロロジーを神族にすべく、手を打ちます。典型的なイタリアンママです。


左端にメルクリウス。右に花嫁の準備のために呼ばれた三美神。


そのためにフィロロジーは厳しい7つの課題を乗り越えなければいけなかったのですが、晴れて神の仲間入りをし、メルクリウスと結婚できたそうです。



この話は、古代ローマ末期のマルツィアーノ・カペッラという学者の小説が出典です。



人間が神の領域にたどり着くためには、7つの教養を身につける必要があると考えられていました。その内容を息子に分かりやすく伝えるために書き下ろした物語です。


花柄のドレスを着た女性と青い肌の人物は、フィロロジーが身に着けなければいけなかった教養の擬人像。


なのでこの説に従って題するなら「メルクリウスとフィロロジーの結婚」です。ハッピーエンドなので「春」もありえますけど。



もちろん従来の説のようにヴィーナスの物語が描かれていると考えることもできます。ボッティチェッリが何をテーマに描いたかは、記録に残っていないからです。



いずれにせよ、作品の前で登場人物やお話に想像を膨らませるのもいいですよ。
ウフィツィ美術館にいらっしゃる時の、参考になさってみてください。


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フィレンツェ歩き ここだけの話
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