ルネッサンス期に黒人女性が持つ意味
帽子にあしらわれた、美しい宝石が目を引く肖像画。
今年、ウフィツィ美術館の館長が代わってから展示替が行われ、展示室の様子が大きく変化しました。これまで表に出てこなかった作品、目立たないところにあった作品などが見られ、特にこれまでお蔵入りしていた北ヨーロッパのルネッサンス絵画が展示されています。
今回の一枚はドイツの画家、ハンス・ホルバイン(子)の手による肖像画です。
とても写実で今にも動き出しそうな男性。整えられた髭、顔の造形、肌の質感、睫毛、透かし彫りのブローチなど、念入りに描かれています。男性の気難しそうな性格も伝わってくるようです。
人物描写もさることながら、個人的に興味がある宝石に目が行きました。シンプルだけど大ぶりな金の首飾り、エメラルド指輪、そして帽子につけられたブローチです。
縁は「コンメッソ」という繊細な金細工で作られており、滑らかな金と彫刻された宝石が組み合わされています。中心を飾るのは黒人女性の頭部です。上流階級の間では宝石を身につけることでできる自らの社会的地位や教養を示していました。これだけ凝ったデザインのブローチを付けられる男性の地位の高さが伺えます。
それと、派手過ぎず地味でもない。着こなしのセンスも素晴らしいですね。
彼はイギリス、チューダー朝のヘンリー8世の顧問だった、リチャード・サウスウェル卿です。
なぜイギリスの要人の肖像画がフィレンツェにあるかと言うと、メディチ家のコジモ2世がノーフォーク公トマス・ハワードにリクエストして、送ってもらったからです。著名な人物の肖像画を多く所有することはステータスの一つだったからです。
この作品は展示前半、トリブーナの後の北方絵画のエリアにあります。
ウフィツィ美術館にいらっしゃる時の参考になさってみてください。
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