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2000年前の詩人が思った事
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人間の尊厳を無視して女子供、老人問わず襲いかかる兵士たち。赤い服を着た女性は髪を切る事を止めるよう懇願している。女性の髪を切ることは服を剥ぎ取るのと同じ侮辱の行為。背景では女性のその後を示唆する場面が描かれる。
また、左手で芸術家と詩人が襲われている事は、文化を蔑ろにする行為で文明の終わりを意味する。
今から2000年以上前、古代ギリシアで活躍した詩人オウィディウスは現在人間が生きる時代を「鉄の時代」と定義し、被支配者層を奴隷として扱うだけでなく、女子供、老人関係なく襲う最悪の状態としました。中でも詩人や画家のような文化を生み出す人々をも踏みにじる行為は、文明の崩壊を示す事を意味します。
この作品に限らず、戦争をテーマにした作品で本を踏みにじる兵士が描かれている場合は、オウィディウスの定義を踏まえています。
先日、DIC川村記念美術館が株主達の声により休館するかもしれないというニュースを見た時、この作品が頭をよぎりました。
経営状況の難しさや所蔵品の所有権の所在、資産価値として見るか否かなど問題があるにせよ、投資家のような資産を持つ人が文化施設を節約のために削れと言うのは、深刻だと思いました。
文化に親しむ習慣は経済の豊かさと思想が自由である指標だと思っています。歴史や素晴らしい芸術品に触れれば知識と感性が育まれ、国の発展にも貢献するからです。
まだ完全に美術館が閉鎖すると決まっているわけではありませんが、古典に学ぶ事は多いと思いました。
12月に美術館の将来が話し合われるそうなので、良い結果を祈ります。
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