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フィレンツェの知られざる庭園
フィレンツェ郊外の素晴らしい庭園訪問第二弾。
とても幻想的な場所なのですが、今回は天気に恵まれず残念。
ここも先日ご紹介したメディチ家別荘と同じく、街の北側の丘にあり、眺めが素晴らしい所にあります。
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邸宅は1500年代に建てられたのが始まりですが、現在残る館と庭園は100年ほど前に造られました。
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起案主はトリノ出身の起業家、アンジェロ・ペイロンという人です。
イタリア半島にあった小国が統一され、1861年にイタリア王国が誕生した時、最初の王国の首都は北イタリアにあるトリノでした。その後フィレンツェに遷都した時、ペイロンも活動拠点をフィレンツェに移すため、フィレンツェ中心部から離れた所に館を購入します。繊維業者だった彼にとって、織物で有名だったフィレンツェは魅力だったのでしょう。
その後、1900年代半ばに息子のパオロが庭を整えます。彼は建築や造園の専門家ではありませんでしたが、独学で庭園の歴史、技術を学び、独創に溢れた庭園を作り上げていきました。
中世、ルネッサンス、フランス式、イギリス式の4つの様式に分けられる西洋庭園の要素を随所に取り入れ、他には見られない幻想的な庭園を作り上げました。
西洋庭園の4つの時代をざっくり説明すると、
中世
城壁に囲まれ、外界から遮断された修道院の中庭です。ベアート・アンジェリコの「受胎告知」の背景に見られます。
ルネッサンス
城壁を取り払い、眺望をも庭の一部にしています。左右対称のデザインで幾何学模様に配置された低木も特徴です。所謂、イタリア式庭園です。
バロック様式
17世紀のフランスに起源を持つ、舞台演出のような壮麗さが特徴。ヴェルサイユ宮殿の庭が代表例です。
18世紀のイギリス式
それまでの庭園に踏襲されていた規則正しいモチーフを取り払い、自然で絵画的な風景を再現しようとした時代です。丘、湖、東屋、古い大木、洞窟などを造り、ファンタジーの世界のようなデザインか特徴。
ペイロン邸の庭に当てはめると、
左右に植えられた糸杉は外界から壁で遮断していた中世式、
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庭前方の木を取り払ったフィレンツェを臨める見晴らしはルネッサンス式、
29もの噴水を設けた華やかなデザインはフランス式、
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人工の池や中世趣味の小さな礼拝堂はイギリス式です。
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春には若草と藤の花でも彩られ、さらにロマンチックです。
今回はランドスケープデザイナーの説明付きで素敵な場所を見ることができて幸せでした。
ただ、説明して下さった方が言うには、ペイロン邸は国の文化遺産でありながら、フィレンツェの中心部にない事と維持費が莫大である事から、あまり予算を割いてもらっていません。街の収益だけを見るなら、フィレンツェ歴史地区にあるボーボリ庭園やバルディーニ庭園の様な知名度がありアクセスしやすい所に投資する方が、理には適っています。
価値がありながら、この様に埋もれていく文化遺産はイタリアにもあることが残念です。
近年は観光のトレンドが変わり、郊外の名所を訪れる方も増えているので、訪問者が増えればと思います。
〈ペイロン邸〉(イタリア語)
https://www.bardinipeyron.it/villa-giardino-peyron/
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