古代ローマからの人生の教訓
前回、シエナ大聖堂の魔法陣に触れたついでに、もう一つご紹介します。
シエナの大聖堂と言えば 56 の場面から成る床の装飾で有名です。内部だけに注目が行きがちですが、入り口の前にも興味深いパネルがあります。
中央の扉の前にある「MEL (蜂蜜)」と「LAC (ミルク)」と書かれたアンフォラ(大型の壶)です。
本来なら「LAC(ミルク)」でなく「FEL (胆汁)」なのですが、1800年代の修復中に蜂蜜とミルクのおいしい組み合わせにすり替わってしまったそう です。恐らく、文字が薄れてしまっていたために何が書かれていたためか分からず、想像力を働かせたからですね。制作から4世紀も経っていたので無理はありません。たまにこのような修復による間違いがあります。
「MEL (蜂蜜)」と「FEL (胆汁)」は、古代ローマ末期の哲学者ボエティ ウスの『哲学の慰め』 (6世紀初頭)が出典です。その中に、ゼウスの宮殿 の入り口にある2つのアンフォラは片方に悪、もう片方に善が詰まっている という記述があります。転じて「人生は甘い事と苦い事が折り重なるもの」 と言う事を伝えています。
シエナ大聖堂の床の装飾は人間が知恵を身につけ、様々な課題を乗り越えて悟りの境地にたどり着くことも伝えています。その長い旅を始める際の前置きとしてのメッセージです。
シエナ大聖堂にいらっしゃる時の参考になさってみてください。
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