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11月25日の国際女性への暴力反対デーに因んだ作品
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アルテミジア・ジェンティレスキ 「ホロフェルネスを倒すユーディト」 1620年頃 ウフィツィ美術館
目を覆いたくなるような惨劇。緊張感とつんざく様な男性の叫び、血飛沫が飛んできそうな場面です。渾身の一撃を憤怒の表情と共にぶつける女性は、旧約聖書に出てくるユーディトという未亡人です。
彼女はべトゥルリアという街に暮らしていました。
ある日、ホロフェルネスという巨人の将軍と大軍が彼女の住む街に攻めてきます。戦力の差から街の人達は絶望しますが、彼女は立ち上がります。
敵将を籠絡するために思いっきりおめかしをして、侍女とホロフェルネスのテントに行きます。とても綺麗だった彼女を一目で気に入ったホロフェルネスは、その晩愉しむために引き入れます。呑んで、食べて、踊って、さあ愉しもうとした時、たんまり呑まされてたために寝落ちしてしまいます。
その隙を狙い、ユーディトは剣で敵将の首を落とし、街の平和を守ったのでした。
アルテミジアはこのテーマを繰り返し描いています。それは、彼女が若い頃に受けた暴力がトラウマになっていたためです。
画家だった父の工房で修行中、父の友人から暴力を受けてしまいます。勇気を出して法廷に訴えても、アルテミジアに非があったと返され、世間でも叩かれるばかり。彼女は深く傷つきます。
この作品のユーディトが凄まじい迫力放つのは、彼女を傷つけ、攻撃した世間一般の男性への憤慨があったからです。
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最終的にアルテミジアを傷つけた男性は断罪され、彼女は父の取り持ちで結婚し、メディチ家お気に入りの画家として活躍しました。
現在は昔より女性の人権も法的に整備されたものの、苦しんでいる人は多いです。今朝のイタリア国営放送のニュースでも、62時間に1人はパートナーに殺害されているとありました。
女性の権利が大分認められる様になった現代でも、自分が被害に遭ったことを公表する事は勇気がいります。女性に人権がなかった時代に、声を上げたアルテミジアの勇気に敬意を表します。
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