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ボッティチェッリの作品とお墓

先日用事を済ませた後、側にあったオンニサンティ教会に寄りました。フィレンツェ歴史地区の西側にある小さな教会で、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の側にあります。ここは無料なのですけど、ボッティチェッリの作品とお墓があります。


「聖アゴスティーノ」 1480年頃



美術館に厳重なケースに入れて展示されていそうな作品です。でもフレスコ画なので、そのまま教会に残されています。



聖アゴスティーノは4世紀に活躍した神学、哲学者です。今でこそ聖人として知られていますが、若い頃は放蕩生活を繰り返し、異教にものめり込んでいました。ですが、ミラノの聖アンブロージョとの出会いをきっかけに改宗し、生き方を改めます。



故郷のアルジェリアの街で司教となり、後世のために著作も残しました。



ボッティチェッリと言えば「ヴィーナスの誕生」や「春」などに見られるように、神秘的な雰囲気のある女性の作品が思い浮かびます。だけどこの「聖アゴスティーノ」の天へ向けた真摯な眼差しがとても魅力的です。それと、胸に当てた力強い手も。
彼を照らす光や書斎に置かれているオブジェクト、衣装などの細かい表現も素晴らしいです。天球儀、ユークリッド幾何学の本は当時流行していた、ルネッサンス文化を支えた人文学者の持ち物で、制作当時の知識人の姿も反映しています。


ユークリッド幾何学の本と時計


この絵は、聖アゴスティーノが聖ヒエロニムスからのメッセージを受け止めている様子を表しています。右上の時計は日没前にヒエロニムスの幻影が現れた時間を指しており、聖アゴスティーノに最後のメッセージを伝えた事を示唆しています。



実際、このフレスコ画と一緒に「書斎にいる聖ヒエロニムス」もドメニコ・ギルランダイオ(ミケランジェロの師)によって手がけられており、今もお向かいに展示されています。


ギルランダイオ 「聖ヒエロニムス」 1480年頃


フィレンツェにいらした時の参考になさってみてください。

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