ウフィツィ美術館でお勧めの作品
思わず顔を覆いたくなるような生々しいシーン。旧約聖書に出てくる、ホロフェルネスという将軍の殺害現場です。もう一枚セットとなっている作品に描かれるのは、彼の首を取ったユーディトという女性です。
ある日べトゥルリアという街に大軍を率いたホロフェルネスという将軍がやってきます。軍の規模、将軍の強さから勝ち目がないとべトゥルリアの人たちは絶望しますが、一人ユーディトが立ち上がります。綺麗に着飾り、侍女を連れて敵将の元へ行くユーディト。美しい彼女を一目で気にいったホロフェルネスは彼女をテントへ迎い入れ、夜を楽しもうとしました。
しかし、たんまり呑まされてたホロフェルネスは眠りに落ちてしまいます。その時、ユーディトは敵将の刀を使って彼の首を落とし、街の平和を守ったのでした。
この作品、誰が書いたと思いますか?
ボッティチェッリです。ボッティチェッリと言えば「ヴィーナスの誕生」や「春」の様な爽やかな雰囲気の作品で知られますが、凄惨な場面も上手く描きます。
ルネッサンスは古代ギリシャ、ローマの文化に思いを馳せた「理想主義」です。そのため、多くの作家は美しい理想の姿で聖母子や神話の場面を表しました。ボッティチェッリの師だったフィリッポ・リッピも腕の良い画家でありながら、美しく理想化された人物のみを描きました。
しかし、ボッティチェッリは美も醜も手掛け、理想美のために実際にはないプロポーションで描いたり、今回の様に解剖学や色彩の効果を上手く組み合わせた技法を巧みに使い分けたりしました。
左の殺害現場は黄色をベースにして生々しく、右のユーディトが敵将の首を片手に帰還している場面は、勝利と平和の訪れを表すため、白をベースにしています。
小ぶりのためか(一枚31×25cm)あまりこの作品の前で止まる人は見かけないのですけど、ボッティチェッリという画家の実力を知る上で重要な作品だと思います。
ウフィツィ美術館にいらっしゃる時の参考になさってみてください。
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