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フィレンツェ公主夫人の肖像画

ブロンズィーノ 「エレオノーラ・ディ・トレードと次男ジョヴァンニの肖像」 1545年頃 ウフィツィ美術館


何度見ても豪奢な衣装と宝石に目を奪われる作品。トスカーナ公主コジモ・デ・メディチ1世の妻、跡取り息子の母としての威厳を公に示す作品です。



先日軽い気持ちでThreadsに載せたら、たくさんのいいねをいただけたので、やはりすばらしい芸術品は世界共通だと思いました。


思わず触りたくなるくらいリアル。衣装だけでなく、ジュエリーの詳細も明確に描き込まれている。


柔らかい光沢をたたえる純白のシルク生地、生地を飾る黒と金の糸。この布はフィレンツェの特産物だったリッチョ・ブロケードと呼ばれるものです。(ブロケードは飾り糸を用いて模様が織り込まれた生地)高級品であったため、教会の式典の衣装によく使われました。



生地にあしらわれたザクロと松かさのモチーフは、キリスト教では復活と再生の象徴であり、彼女が子宝に恵まれた事を示します。旦那さんとの間に11人もお子さんができたので。



絵の背景に使われた青は、天上の色とされたラピスラズリです。教会の天井や聖母のマントに用いられた事から、エレオノーラに神聖な印象を持たせ、イエスを生んだ聖母と重ね合わせる狙いがあったと思われます。彼女も公国を善政へと導く、メディチの後継者の母だからです。


天上の色、ラピスラズリ。吸い込まれるようなブルー。


ジョヴァンニは次男だったために継承権を持たなかったので、聖職者になるべく育てられた。先祖にあたる教皇レオ10世の俗世名と同じ「ジョヴァンニ」と名付けられたのもそのため。

そしてこの絵のもう一つの役割は、彼女がコジモの優れた右腕であったことを伝えることです。



ブロンズィーノがこの肖像画を描いていた1545年の夏、エレオノーラはすでにコジモの不在中に三度も国家元首の代役を果たしていました。賢さ、決断力も兼ね備えた独立した女性だったのです。



500年前にキャリアも家庭も両立していただなんて、羨ましいです。しかもオシャレも。



この作品はウフィツィ美術館展示室後半、メディチ家肖像画の間にあります。

美術館にいらっしゃる時の参考になさってみてください。

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