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来年は聖年なので

来月7日までフィレンツェで開かれている「聖地イスラエルの至宝展」に行ってきました。



翌年2025年の聖年をきっかけに、フィレンツェと聖地の結びつきを伝え「フィレンツェにいながら、聖地巡礼」を体験できるイベントです。



展示されているのは主に工芸品。教会や宗教イベントに使われる祭壇や道具です。いずれもカトリックの国の君主から聖地へ敬意を表して送られました。
メディチ家、フランス、ポルトガル、スペインの権力者が金、銀、サファイア、ルビー、エメラルド、ラピスラズリなどの高価な素材と職人の技を尽くして作らせた品です。
それと普段は見られない手書きの資料も展示されています。


19世紀末の黄金のランプ。フィレンツェのフィリグラーナという技術で作られている。遠くからも抜群の存在感が感じられる。パレスチナの教会に奉納された。


「キリストの復活」 祭壇の飾り。銀製。



「聖霊降臨」 祭壇前方の飾。銀製。
錫杖。金をベースにルビー、エメラルドなどがはめられている。

会場となっているマリーノ・マリーニ美術館は「テンピエット(小さな神殿)」と呼ばれる、イスラエルにあるキリストの墓(サント・セポルクロ)を模したモニュメントと隣接しています(1467年完成)。


テンピエット正面。側面には幾何学模様に加え、ルッチェライ家や婚姻を結んだメディチ家のシンボルも表される。


制作当時、ヨーロッパではキリストのお墓をまねて作る事が流行っていました。フィレンツェもその例外ではなく、文化事業に造詣が深かったジョバンニ•ルッチェッライという人物が、自分のお墓もそのように作る事を思いつきます。



そこで仲の良かった建築家、レオン・バッティスタ・アルベルティに依頼します。
アルベルティに聖地へ行ってもらい墓所を測量し、実物の半分の規模で作ってもらいます。ただ再現するだけでなく、アルベルティのスタイルを取り入れながら。白と緑の大理石による装飾は、建築家の創作です。


アルベルティがイスラエルで測量に使った石。礼拝堂の角にある。


現在でも教皇のお墨付きのもと、礼拝所として機能しています。



その他にもフィレンツェと聖地を繋ぐものがあります。
かつて十字軍で功績を上げた人物に贈られた聖地の火打石が現在もイースターの時の使われていたり、メディチ家の尽力により1439年に宗教公会議の会場となったこともあります。展覧会では、その時の事を伝える資料も展示されています。


1439年のフィレンツェ公会議の公式記録。分裂していた東西教会の仲直りのために開かれたので、東方教会長老と西方教会の教皇の署名がある。ラウレンツィアーナ図書館蔵。
聖地の火打石で付けられた炎を灯すイースターの山車。今でもイースターの時、フィレンツェで披露される。


経済的だけでなく、宗教的にもフィレンツェは重視された場所でした。



そんな、聖地との結びつきの歴史を素晴らしい工芸品などを通して見られる展覧会です。今回、学芸員さんのガイドツアーに参加して熱のこもったお話とともに鑑賞できたので、とてもいい思い出になりました。こぼれ話も聞けて楽しかったです。観光ガイドとしていい刺激にもなりました。

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フィレンツェ歩き ここだけの話
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